狼男と吸血鬼の恋は成立するのか?

仮面ライターこみつ

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 雨が降りしきる裏路地に、獣の息遣いが響いていた。
満月の光がビルの隙間から差し込み、青年の背中を銀色に染める。
その瞳は赤く光り、牙が覗く――狼男、カイはもう限界だった。
そして、月はまた、雲に覆い隠された。
 「……くそ、抑えられねぇ……!」
爪がアスファルトを削り、血の匂いが鼻を突く。
目の前には、恐怖に震える人間の少女。
本能が叫ぶ――喰え、と。
その瞬間、冷たい声が闇を裂いた。
 「その子に触れるな。……獣風情が。」
 振り返ると、4階建てのビルの上から見下ろす影があった。
空を覆っていた厚い雲が風に流されると、そこに立っていたのは漆黒のコートに身をくるみ、銀髪に赤く燃える瞳を冷ややかにこちらへ向けて、こちらを見下ろしている可愛らしい少女の姿があった。
声からして、女だろうとは想像がついた。
まさか本当に少女だったとは。
 
 白い肌、紅い瞳、そして雨に濡れてもなお艶めく銀髪。
 吸血鬼――リアン。
 「……吸血鬼、か。」
 カイは低く唸り、牙を剥く。
 「何のつもりだ。俺の獲物だぞ。」
 リアンは微笑んだ。
 「獲物? お前の理性はどこへ行った?」
 その声は冷たいのに、不思議と心を揺さぶる響きがあった。

 カイは気が立っていた。
理性を失って、人間の少女を襲わなければならないくらい、敵対している魔術結社バランの宣教師たちから攻撃を受けていた。
普段の彼なら、人間を襲うようなことはしない。
普通に食事を摂っていれば、体力も怪我も回復できる。
ただしそれは普通の怪我であればということだった。
バランの宣教師たちの放つ、バランの宣教師たちが魔法と呼ぶ不思議な光の攻撃だけは、彼の回復力を持ってしても、瞬時に回復できるようなものではなかった。
こうして、吸血鬼と対峙している間にも、バランの宣教師たちは彼を追い続けている。
いずれ、追いつかれる。
その前に、何としてでも体勢を整えなければならなかった。
カイは焦っていた。
その焦りを、吸血鬼は見て取って、月光の下、美しい銀髪を風に揺らしながら、赤い瞳を細めて、口元に微笑みを浮かべた。

 カイは一歩踏み出す。
 「邪魔するなら……お前から喰ってやる。」
 「面白い。だが――」
 リアンは一瞬で少女を抱き寄せ、闇の中へ消した。
 残されたのは、雨音とカイの荒い息だけ。 
 「……なぜ、俺を殺さなかった?」
 カイの問いは夜に溶けた。
 リアンの声だけが、遠くで響く。
 「お前の血の匂い……悪くない。」

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