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プロローグ
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「次の御子はその子どもだと村長からのお告げだ」
「ああ、そんな……」
星降る夜に生まれた子どもには、祝福の子と災の子が混ざっていると言われている。
祝福の子は村に繁栄をもたらすが、災いの子は文字通り村を滅ぼす存在になると伝承が残っている。
「おまえにはここで罰を受けてもらう」
「私はどうなってもいいから、せめてその子だけは…お願いします」
「我々は村の掟に従う」
「あなたたちの方がよっぽど化け物じゃない!」
祝福の子を生んだ家庭には金銭などの補助があるが、災いの子を生んだ人間は殺され一族郎党迫害される。
──そんな古の掟に、ひとりの母親が殺された。
「この子どもを山奥へ。あの場所から決して出さないように」
男たちは泣き叫ぶ赤子を強引に山奥まで連れていく。
赤子の父親は夜に紛れて姿を消した。
──赤子が16歳になったその日、村長が頭を下げる。
「君の力を使って、この村を救ってほしいんだ。できるな?」
「……はい」
少女には1万円が渡され、街での買い物を許された。
「神子様、どうかこの子をお助けください」
「おまかせください。私がなんとかしてみせましょう」
みすぼらしい格好の自分とは比べ物にならないほど美しい娘。
災いの子は祝福の子だとひと目見てすぐに理解した。
最低限の教養は教わったものの、学校にさえ行くことを許されていない少女の知識は少ない。
身支度を整え、いつも住んでいる場所よりさらに山奥をめざす。
その直前、村長と巫女から小瓶を手渡された。
「これを飲んでくれ」
「はい」
口に含んだ瞬間違和感を感じたが、少女はそのまま飲みこむ。
「では、無事に旅を終えられるよう祈る」
ぞろぞろと人間たちがいなくなるなか、飲んだものがなんだったのかを悟った少女はそれらとは反対へ進む。
「……もうここには戻れないですね。行きましょう」
彼女を唯一人間扱いしてくれた老婆から渡されたぬいぐるみやその他諸々と、初めて見た街で揃えた食料、新しい衣類…そして、いつも使っている刀を持って山へ入る。
「笑っちゃいますよね。山の主を退治できたら御子の役目から解放してやるって」
──同時刻。
「暁美様、どちらへ向かわれるのですか?」
「少しひとりになりたいの。放っておいてもらえませんか?」
「かしこまりました」
一礼して去っていく人間を見て小さく呟く。
「……やっと自由時間」
無垢な神子は自分と正反対の扱いを受けている少女がいることを知らない。
「あの山、どんなところなんだろう」
村人から絶対に入るなと言われている場所がある。
そこに近づいただけで止められてしまうため、彼女はずっと気になっているのだ。
「決めた!」
「暁美、入ってもいい?」
「あ、お母さん」
「お腹が空いただろうと思って持ってきたの」
「ありがとう」
少女は笑顔を作っていたが、内心山のことでいっぱいだった。
そのまま夜が深くなるのを待ち、ひと目をかいくぐり入山する。
「ちょっとだけならいいよね?」
その日、村は大騒ぎになった。
「作物が突然だめになってしまった」、と。
「ああ、そんな……」
星降る夜に生まれた子どもには、祝福の子と災の子が混ざっていると言われている。
祝福の子は村に繁栄をもたらすが、災いの子は文字通り村を滅ぼす存在になると伝承が残っている。
「おまえにはここで罰を受けてもらう」
「私はどうなってもいいから、せめてその子だけは…お願いします」
「我々は村の掟に従う」
「あなたたちの方がよっぽど化け物じゃない!」
祝福の子を生んだ家庭には金銭などの補助があるが、災いの子を生んだ人間は殺され一族郎党迫害される。
──そんな古の掟に、ひとりの母親が殺された。
「この子どもを山奥へ。あの場所から決して出さないように」
男たちは泣き叫ぶ赤子を強引に山奥まで連れていく。
赤子の父親は夜に紛れて姿を消した。
──赤子が16歳になったその日、村長が頭を下げる。
「君の力を使って、この村を救ってほしいんだ。できるな?」
「……はい」
少女には1万円が渡され、街での買い物を許された。
「神子様、どうかこの子をお助けください」
「おまかせください。私がなんとかしてみせましょう」
みすぼらしい格好の自分とは比べ物にならないほど美しい娘。
災いの子は祝福の子だとひと目見てすぐに理解した。
最低限の教養は教わったものの、学校にさえ行くことを許されていない少女の知識は少ない。
身支度を整え、いつも住んでいる場所よりさらに山奥をめざす。
その直前、村長と巫女から小瓶を手渡された。
「これを飲んでくれ」
「はい」
口に含んだ瞬間違和感を感じたが、少女はそのまま飲みこむ。
「では、無事に旅を終えられるよう祈る」
ぞろぞろと人間たちがいなくなるなか、飲んだものがなんだったのかを悟った少女はそれらとは反対へ進む。
「……もうここには戻れないですね。行きましょう」
彼女を唯一人間扱いしてくれた老婆から渡されたぬいぐるみやその他諸々と、初めて見た街で揃えた食料、新しい衣類…そして、いつも使っている刀を持って山へ入る。
「笑っちゃいますよね。山の主を退治できたら御子の役目から解放してやるって」
──同時刻。
「暁美様、どちらへ向かわれるのですか?」
「少しひとりになりたいの。放っておいてもらえませんか?」
「かしこまりました」
一礼して去っていく人間を見て小さく呟く。
「……やっと自由時間」
無垢な神子は自分と正反対の扱いを受けている少女がいることを知らない。
「あの山、どんなところなんだろう」
村人から絶対に入るなと言われている場所がある。
そこに近づいただけで止められてしまうため、彼女はずっと気になっているのだ。
「決めた!」
「暁美、入ってもいい?」
「あ、お母さん」
「お腹が空いただろうと思って持ってきたの」
「ありがとう」
少女は笑顔を作っていたが、内心山のことでいっぱいだった。
そのまま夜が深くなるのを待ち、ひと目をかいくぐり入山する。
「ちょっとだけならいいよね?」
その日、村は大騒ぎになった。
「作物が突然だめになってしまった」、と。
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