バッドエンド

黒蝶

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「あ、宵!おはよう」
「おはようございます。ここに来てよかったんですか?」
「うん!ばあちゃんから許可もらったし、名目上のお役目?みたいなものを作ってもらったから……」
おばあさんは人の温かさを教えてくれた。
決して醜いものばかりではないと言って、時々守人の役割を与えられたあの子も来てくれて…それが僕の世界だ。
「ばあちゃん、荷物はこれで全部か?」
「そうだよ。ありがとう」
おばあさんは哀しそうにしながらこっそり教えてくれた。
「あの子の本当の家族は殺されてしまったんだ。事件の犯人は捕まったけど、冷たい顔をするだけだった。
……それが宵と話すようになって、笑顔が増えたんだ。あたしにとってはふたりとも孫みたいなものだよ」


「……」
最近、昔の夢をよく見る。
「走馬灯、ですかね?」
ルナの頭を撫でながら、昨夜渡されたものをもう一度確認する。
悩んだ末、埋められるだけ埋めることにした。
名前の部分は偽名にして、趣味、誕生日…他は何もない。
「疲れちゃいました」
好きな食べ物とか音楽とか、考えたことがなかった。
おばあさんがよく歌っていたものとか、あの子が置いていってくれるCDの曲とか…そういうものしか知らないから。
(細かく書くと素性がバレるかな?…でも、外に何をかけばいいかなんて分からないし、これでいいですよね)
もう少し休んで先に進もうと思っていたら、狼の群れがこっちに近づいてきた。
《おまえ、あれを倒したのか?》
「あれってなんのことですか?」
答えてもらえないと思ったけど、狼のリーダーが教えてくれた。
《ここにいた邪悪な存在のせいで、俺たち以外の生き物は別の場所へうつってしまった。
あれだけの邪気祓いをしたのはおまえなのか?その軟弱そうな体のどこにそんな力が……》
「僕が来たときには何もいませんでしたよ?」
苦しい言い訳なのは分かっているけど、こうやって誤魔化すしかない。
《本当か?》
「はい。あ、差し支えなければ泡沫の呪いについて教えてもらえませんか?」
《……》
事情を察してくれたのか、狼は知っていることを全部教えてくれた。
何故か今力が弱まっていること。
それによって、動物たちの住処が少しずつ広くなっていること。
前に男の人が来たらしいけど、どうやら負けてしまったらしいこと。
《俺が知っているのはそれくらいだ》
「ありがとうございます。参考になりました」
《……太陽に向かって進むといい。迷わず辿り着けるはずだ》
「何から何まですみません。それじゃあ、お元気で!」
僕の正体が分からなくても、狼さんは察して黙っていてくれた。
知っていることも全部教えてくれたし、本当にいい人だ。


──これが僕が呪いを解く意味になるのかもしれない。
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