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ずっと似たような道を歩き続けて、だんだん嫌になってくる。
それは、おばあさんがいなくなってからの暮らしそのものだった。
『おばあ、さん……?』
『ばあちゃんは死んだ』
『ぼ、僕のせい、ですか?』
『違う。……病気だったんだ』
あの子にまとわりついている黒い影が、一瞬ノイズみたいな動き方をした。
『この化け物め!』
『おまえらさえいなければ……』
知らない人たちに投げられたのは空瓶だった。
『僕は何をされてもいいです。でも、この人を傷つけるなら……』
とびきり強い呪いを集めていると、あの子が僕の手を握ってふっと笑った。
『いいか、宵。多分俺はここに来るのが難しくなる。だけど覚えておいてくれ。……おまえは俺の友人だ』
『──!』
それからなかなか会えなくなって、孤独感だけが溜まっていった。
だけど、時々食べ物を届けてくれていたのはきっとあの子だ。
(……どうして忘れていたんでしょう)
思い出したことがひとつあって、持っていた鞄のポケットを探る。
ずっと昔もらった手紙と、おばあさんの手帖。
『俺には意味が分からなかったし、形見分けってことで。…多分、ばあちゃんもそれを望んでる』
手紙はあの子が書いてくれたもので、返事を書いて待っていた。
だけど、なかなか顔を見せてくれなくなって……。
「……元気にしているでしょうか?」
それだけは確認したい。
だけど今は、呪いを解くのが先だ。
早く祭壇を壊さないと。
××××××××××××××
「神子様、お迎えにあがりました」
「ありがとうございます」
(今日は穂高じゃないんだ……)
こんなことを言ったら怒られるから絶対言わないけど、この人たちは私を縛ることしか考えていない。
「護衛の方はどうされたのですか?」
「あの者でしたら所用があって出掛けたようですよ」
「そうでしたか……。怪我をしているようだったので心配です」
巫女は一瞬眉をひそめたけど、いつもの表情に戻って話題を変えた。
「神子様はお優しいのですね。……そういえば、今日はより強い効果のあるお神楽の先生がいらっしゃるそうですよ」
「そう、なんですか……」
「お疲れだと思いますが、村を護るお役目のためによろしくお願いいたします」
この人たちはいつも笑顔でそんなことを言うけど、間違いなく悪魔だ。
悪鬼についてだとか邪気の話だとか色々習ってきたけど、見たことがないものより身近なものの方がずっと鬼みたいに感じる。
この人たちは私が神子じゃなかったら話しかけすらしなかっただろう。
ずっと思ってた、誰にも言えない気持ち。
それが今日も渦巻いている。
(……私は誰なの?)
それは、おばあさんがいなくなってからの暮らしそのものだった。
『おばあ、さん……?』
『ばあちゃんは死んだ』
『ぼ、僕のせい、ですか?』
『違う。……病気だったんだ』
あの子にまとわりついている黒い影が、一瞬ノイズみたいな動き方をした。
『この化け物め!』
『おまえらさえいなければ……』
知らない人たちに投げられたのは空瓶だった。
『僕は何をされてもいいです。でも、この人を傷つけるなら……』
とびきり強い呪いを集めていると、あの子が僕の手を握ってふっと笑った。
『いいか、宵。多分俺はここに来るのが難しくなる。だけど覚えておいてくれ。……おまえは俺の友人だ』
『──!』
それからなかなか会えなくなって、孤独感だけが溜まっていった。
だけど、時々食べ物を届けてくれていたのはきっとあの子だ。
(……どうして忘れていたんでしょう)
思い出したことがひとつあって、持っていた鞄のポケットを探る。
ずっと昔もらった手紙と、おばあさんの手帖。
『俺には意味が分からなかったし、形見分けってことで。…多分、ばあちゃんもそれを望んでる』
手紙はあの子が書いてくれたもので、返事を書いて待っていた。
だけど、なかなか顔を見せてくれなくなって……。
「……元気にしているでしょうか?」
それだけは確認したい。
だけど今は、呪いを解くのが先だ。
早く祭壇を壊さないと。
××××××××××××××
「神子様、お迎えにあがりました」
「ありがとうございます」
(今日は穂高じゃないんだ……)
こんなことを言ったら怒られるから絶対言わないけど、この人たちは私を縛ることしか考えていない。
「護衛の方はどうされたのですか?」
「あの者でしたら所用があって出掛けたようですよ」
「そうでしたか……。怪我をしているようだったので心配です」
巫女は一瞬眉をひそめたけど、いつもの表情に戻って話題を変えた。
「神子様はお優しいのですね。……そういえば、今日はより強い効果のあるお神楽の先生がいらっしゃるそうですよ」
「そう、なんですか……」
「お疲れだと思いますが、村を護るお役目のためによろしくお願いいたします」
この人たちはいつも笑顔でそんなことを言うけど、間違いなく悪魔だ。
悪鬼についてだとか邪気の話だとか色々習ってきたけど、見たことがないものより身近なものの方がずっと鬼みたいに感じる。
この人たちは私が神子じゃなかったら話しかけすらしなかっただろう。
ずっと思ってた、誰にも言えない気持ち。
それが今日も渦巻いている。
(……私は誰なの?)
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