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「ありがとうございました」
「それでは神子様、失礼いたします」
みんなが大事なのは神子の私であって、私自身じゃない。
分かってはいたけど、考えただけで苦しくなる。
食べるものには困らないし、すぐに新しいものが手に入ることもあるけど……私がほしいものはそういうことじゃない。
(新しいお店、行ってみたいな)
神子だからといって、怪我を治す以外特別なことができるわけじゃない。
お神楽だって本当に効果があるかなんて誰にも分からないのに、どうして神子なんてものがあるんだろう。
(こんなことを考えるなんて神子失格だって、大人に知られたら言われちゃうんだろうな……)
「神子様、失礼いたします。夕食をお持ちしました」
「ありがとうございます。着替えの途中なので、お膳を置いておいていただけますか?」
「承知いたしました。では」
最近は家族でご飯を食べることも減ってきた。
正確に言うと、お母さんとの時間がなくなってきたのだ。
父親なんてはじめからいないも同然、お金にしか興味がないあの男の血が流れているなんておぞましい。
(そういえば、夜ってご飯どうしてるんだろう)
山奥に食糧があるとは思えない。
今夜も散歩ついでに行ってみよう。
「……厨房をお借りします」
たまたま誰もいなかったその場所に、一応声をかけてこっそり入る。
今夜はどんな話をしようか楽しみになった。
××××××××××××××××
ここまで山奥になると、流石に自生している植物や果物も少なくなってくる。
(そもそも、邪気が強すぎて食べられそうにありませんし……)
ただ、もしも食べるものがなくなったそのときは口に入れるしかない。
「あの、ここで一晩休ませてもらえませんか?」
《それはかまわないけど……その体、大丈夫かい?》
「はい。これくらいの怪我なら慣れてますから」
今日は邪気にあてられて正気を失いかけていた猫を相手に戦って、どうにか元に戻すことができた。
だけど、腕には僕の呪いが食べきれなかったらしい瘴気の痕が残っている。
(迂闊でした)
狐さんは心配そうに僕を見ていたけど、文句ひとつ言わずに泊めてもらえるだけありがたい。
そういえば、人間以外の生き物たちは僕を差別しないどころかとても親切にしてくれる。
「あの、ひとつ訊いてもいいですか?」
《なんだい?》
「どうして僕に優しくしてくれるんですか?」
《私たちの言葉を理解して、私たちのことをいじめない。追い返したり、いたずらに攻撃したりしないだろう?
……強いて言うなら、敵じゃないからってことになるかな。あと、噂を聞いているからさ》
「噂、ですか?」
狐さんは申し訳なさそうな顔で言った。
《私たちを助けてくれる人の子がいて、邪気やら瘴気を取り除いてくれてるって》
「それでは神子様、失礼いたします」
みんなが大事なのは神子の私であって、私自身じゃない。
分かってはいたけど、考えただけで苦しくなる。
食べるものには困らないし、すぐに新しいものが手に入ることもあるけど……私がほしいものはそういうことじゃない。
(新しいお店、行ってみたいな)
神子だからといって、怪我を治す以外特別なことができるわけじゃない。
お神楽だって本当に効果があるかなんて誰にも分からないのに、どうして神子なんてものがあるんだろう。
(こんなことを考えるなんて神子失格だって、大人に知られたら言われちゃうんだろうな……)
「神子様、失礼いたします。夕食をお持ちしました」
「ありがとうございます。着替えの途中なので、お膳を置いておいていただけますか?」
「承知いたしました。では」
最近は家族でご飯を食べることも減ってきた。
正確に言うと、お母さんとの時間がなくなってきたのだ。
父親なんてはじめからいないも同然、お金にしか興味がないあの男の血が流れているなんておぞましい。
(そういえば、夜ってご飯どうしてるんだろう)
山奥に食糧があるとは思えない。
今夜も散歩ついでに行ってみよう。
「……厨房をお借りします」
たまたま誰もいなかったその場所に、一応声をかけてこっそり入る。
今夜はどんな話をしようか楽しみになった。
××××××××××××××××
ここまで山奥になると、流石に自生している植物や果物も少なくなってくる。
(そもそも、邪気が強すぎて食べられそうにありませんし……)
ただ、もしも食べるものがなくなったそのときは口に入れるしかない。
「あの、ここで一晩休ませてもらえませんか?」
《それはかまわないけど……その体、大丈夫かい?》
「はい。これくらいの怪我なら慣れてますから」
今日は邪気にあてられて正気を失いかけていた猫を相手に戦って、どうにか元に戻すことができた。
だけど、腕には僕の呪いが食べきれなかったらしい瘴気の痕が残っている。
(迂闊でした)
狐さんは心配そうに僕を見ていたけど、文句ひとつ言わずに泊めてもらえるだけありがたい。
そういえば、人間以外の生き物たちは僕を差別しないどころかとても親切にしてくれる。
「あの、ひとつ訊いてもいいですか?」
《なんだい?》
「どうして僕に優しくしてくれるんですか?」
《私たちの言葉を理解して、私たちのことをいじめない。追い返したり、いたずらに攻撃したりしないだろう?
……強いて言うなら、敵じゃないからってことになるかな。あと、噂を聞いているからさ》
「噂、ですか?」
狐さんは申し訳なさそうな顔で言った。
《私たちを助けてくれる人の子がいて、邪気やら瘴気を取り除いてくれてるって》
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