バッドエンド

黒蝶

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そんな話になっているなんて知らなかった。
(嬉しいな……)
僕は別に、人間のために泡沫の呪いを解こうとしているわけじゃない。
ただ、ここで暮らす生き物が笑顔で暮らせるならそのために頑張ろうと思った。
《泡沫の呪いを追っているんだって?……あれからは逃げてもいいんだよ》
「どういうことですか?」
《あの呪いは最凶なんだ。私たちも手を出せないし、誰かに怪我を負ってまで祓ってほしいとは思っていない。
……私たちはただ、誰とも争わず、平和に笑って過ごせればいいだけなんだ》
狐さんの切実な願いに心が痛くなる。
このあたりは呪いの影響をかなり受けているはずなので、暮らしていくだけでも大変なはずだ。
心から願っているのは、平穏な暮らし。
(人間って心が醜いんですね)
おばあさんとあの子は違ったけど、僕のことを蔑んだり石を投げたりする人間の心が綺麗なはずがない。
《私たちを助けてくれただけで充分なんだ》
「ありがとうございます。……僕、あんまり人に感謝されたことがないんです。
だから、今の言葉で充分救われました。泡沫の呪いについて、もっと詳しく教えてください」
《諦めないのかい。どうしてそこまで……》
「優しさには優しさで返したいんです。この山のみなさんはとっても親切にしてくれて、僕の心配もしてくれて……とにかく温かいんです」
《私が知っているのは、1番奥にいる泡沫本体についての伝承だよ。……どうも元は人間に裏切られた妖だったようなんだ。
呪いの力で配下を造りだし、その者たち以外を信用していない。だから私たちのことも消し去ろうとしているのかもしれないね》
その話を聞いて気づいてしまった。
もしかして、泡沫の呪いというのは──
「誰か来ます。隠れてください」
《あ、ちょっとおまえさん……》
狐さんには引き止められたけど、この気配は多分彼女だ。
「あ、いた!」
「何故またいらしたのですか?それも、こんな奥地まで……」
とびきりの殺意を向けたけど、神子の力なのか感じとっていない様子で近づいてくる。
(狐さんのところへは行かせない)
「ずっと山暮らしなら、ご飯を食べていないでしょ?軽食を持ってきたんだ」
……軽食?
何が入っているか分からないのに、食べるわけにはいかない。
「ありがとうございます。お気持ちだけいただきます」
「ちゃんと手指消毒したし、ラップで握ったから大丈夫だよ」
「そう言われましても……」
「いいから食べてみて。ね?」
こんなに目をきらきらさせて言われたら仕方ない。
おかしなものが入っていたそのとき考えよう。
恐る恐るおにぎりを口に入れた。
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