バッドエンド

黒蝶

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「美味しい……」
何か入れられていると疑ってしまった自分が恥ずかしくなるくらい普通のおにぎりだった。
「よかった!他の人に食べてもらったの、初めてなんだ」
「それは、神子様がお作りになられたのがあまりにもありがたいものだからではありませんか?」
祝福の子なら村人たちからも愛されているのだろう。
僕が知っている感覚ではないけど、きっとそうなんだ。
「……でも、私は普通に食べてほしかったよ。みんなで美味しく食べたいだけなのに、神子だからって避けられるのはしんどい」
神子も神子で大変なのかもしれない。
僕が神子に関して知っているのは、祝福の子でみんなから愛されることや能力のことだけ。
「神子様なのに避けられるのですか?」
「神子だからだよ。滅多なことでは私に近づいてこないんだ。みんながほしいのは神子としての私だけ。
……あ、でもお母さんは優しいんだよ。時々ご飯を一緒に食べられるし」
慌てた様子で話していたけど、言いたいことはなんとなく理解した。
(彼女なりに苦労しているんでしょうか)
「もうお帰りください。あなたを心配している方がいらっしゃるでしょう?ここには近寄らない方がいいです」
「どうして夜は村に来ないの?」
「……僕の役目がありますから。それではこれで失礼します」
「あ、ちょっと待……」
話を最後まで聞かずにそのまま狐さんのところへ戻る。
痺れる手を開いて閉じて、少しずつ感覚を取り戻していった。
《よかったのかい?》
「はい。ただの顔見知りですから」
できればもう会いたくない。
早く終わらせて、僕は──
(先のことを考えるのはやめよう。意味なんてありませんから)


××××××××××××××××××


どうして夜はあんなに怯えた様子で私を避けるんだろう。
それに、まだフードの下を見たことがない。
(何か理由があるのかな……)
だけど、悪い人じゃないことは分かる。
まさかこんなふうにプロフィールを丁寧に返してくれるなんて思わなかった。
誰もいない自室でこっそり中身を読む。
「特技、裁縫?」
「入っていいか?」
外から聞こえてきたのは穂高の焦ったような声。
夜に来るということは緊急事態なんだろう。
「どうぞ」
穂高は周囲の様子を確認して、部屋に入るなり訊いてきた。
「最近ひとりでこそこそ何をしている?」
「な、なんのこと?」
「今回は誤魔化せたが、次も上手くいくとは限らない。
……ここ数日の事件で見張りが強化されているんだ。気をつけろ」
穂高ならあの人のことを知っているだろうか。
「ねえ、穂高。あの禁忌の山にひとりでいる人はだれなの?」
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