バッドエンド

黒蝶

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「神子様、ご苦労様でした。見事な舞でした」
そんなことを言われても全然嬉しくない。
その場は笑顔でやり過ごしたけど、穂高の話が気になって仕方なかった。
(ハンカチを返さないといけないし……)
布や刺繍が傷んだらいけないから手洗いしたけど、余計なお世話だろうか。
「花房さん、おはよう」
「おはようございます」
教室の方から悲鳴が聞こえて走って向かうと、動物の死骸が転がっていた。
矢か何かで射抜かれた痕があるものの、それ以上は分からない。
「神子様がいらっしゃるのに、どうしてこんなことになっているの?」
「本当は素質がないんじゃ……」
やっぱりこうなった。
何かあれば全部私のせいになる。
こんなことを考えたらいけないんだろうけど、けど……
「やめろよそういうの」
顔をあげると、怖い顔をした穂高が相手の生徒を睨みつけている。
「ああん?誰だてめえ」
「誰でもいいだろ。とにかく、神子様を小馬鹿にするような発言は謹んだ方がいい」
穂高がそう話した瞬間、ばっと陰が集まりはじめた。
いつもと違う穂高に吃驚していると、生徒たちが真っ青になった。
「ひっ、黒狐憑きの化け物……!」
「呪われるぞ!災のみこの力が……ひい!」
(災の、みこ?)
慌てて逃げ出す生徒たちの背中を目で追っていると、隣に立っていた巫女の家のクラスメイトが私の手を引っ張る。
「黒狐憑きとはあまり関わらない方がいいと思う」
「どういうことですか?」
「あんまり話したらいけないことになっているんだけど……」
そう前置きして教えてくれたのは、この村に伝わる話だった。
何世代かに一度、黒狐に魅入られた存在が生まれる。
その力と存在は不幸を呼ぶ……なんて云われているらしい。
(だから穂高は近づくなって言ったんだ……)
だけど、それを言うなら神子だって原理は同じはずだ。
下手をすると呪いだってかけられるはずなのに、どうしてそんなことを言うんだろう。
「申し訳ありませんが、午前の授業は休むと伝えていただけますか?」
「もしかして、具合が悪いとか……」
「少し休めば平気です。お願いします」
そのまま後ろをふりかえることなく走って、空き教室へ入る。
「やっぱりこの村、おかしいよ」
「今更気づいたのか」
「え?」
顔をあげると、穂高が黒い狐の形をした陰を撫でながらくつろいでいた。
「その子の名前は?」
「御影」
「可愛いね」
「嘘をつかなくていい」
「本当にそう思ってるよ」
一瞬沈黙が流れた後、思い切って切りこんだ。
「朝の話の続きがしたい。それと、災のみこって何?」
「……後悔するぞ」
「それでも知りたい。私だけ知らないことがあるのは嫌なの」
穂高は大きく息を吐いて、静かに告げた。
「おまえはみこと呼ばれる存在がひとりしかいないと本気で思っているのか?」
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