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「おまたせ」
「……ああ」
その日の夜、穂高の様子がおかしかった。
(何に怒ってるんだろう?それに、なんだか荷物が多い?)
「ここだ」
宵と呼ばれたその人は、いつもどおりフードをかぶって大きな岩にもたれかかっていた。
だけど、その岩は紺碧色をしていて他の場所と違う。
「起きられるか?」
「はい。僕はもう大丈夫です」
「嘘を吐くな。その腕、見せてみろ。その怪我で大丈夫なわけないだろ」
「穂高は大げさですね……」
宵がまくったパーカーの下から、焼けただれた痕がはっきり見える。
それが軽いものではないことくらい、素人の私でも分かった。
「……痛かったらすぐ言えよ」
「分かりました」
大人しく薬を塗られている宵は相変わらず顔を見せてくれないから、一体どんな気持ちでいるのか分からない。
それでも、そんな酷い怪我を負うほどのことをしているのは理解した。
「傷薬と痛み止め、あと……これ」
何か力がこめられているらしい組紐に、小さな鈴がひとつ通されている。
「綺麗な鈴ですね」
「これがあれば、視力と聴力をある程度カバーできる」
「……どういうこと?」
ふたりの話の間に入っちゃいけないと思ったけど、聞こえてきた衝撃的な言葉に突っこまずにはいられない。
「話してもいいか?」
「……仕方ありません」
「宵は今、右目が見えていない。ついでに、右耳の聴力がおちている」
全然知らなかった。
いつ話しかけても反応がかえってきていたし、歩き方も変わっているようには見えなかったから。
(ひとりで何をしているんだろう?そもそも、こんなところでずっと暮らしていけるはずないのに)
「私の力なら治せるかもしれない」
「お断りします」
「どうして?」
「……僕にその力は効きません」
「俺たちみたいに陰の気が強いと、おまえの加護の力は受けられない」
「そんな、どうして……」
宵は相変わらずフードを取ることはなかったけど、少しだけ話をしてくれた。
「ありがとうございます。その気持ちだけで充分です」
「宵……」
「何かお礼ができればよかったのですが、僕にできることは何も──」
「裁縫道具一式は持ってきたんだ。だから、もし迷惑じゃなかったら刺繍を入れてほしいな」
「こちらのハンカチにですか?」
「うん。……お願い」
効果があるかなんて分からないけど、ハンカチには少しだけ加護をかけておいた。
受け取ってもらえればそれだけで充分なんだけど、どうだろう。
「分かりました。次回までに完成させておきます」
「ありがとう!あ、あとこれ。日持ちするものは作れないから、結局おにぎりになっちゃったんだけど……」
「ありがとうございます」
嫌がられていないことに安心しつつ、大荷物を全部渡す穂高に苦笑する。
「流石にその量は持てないんじゃ……」
「いや、宵だから運べる」
「どういうこと?」
首を傾げていると、宵が小さく息を吐く。
「見せた方が早そうですね」
宵のまわりを影みたいなものが覆って、それがうねうねと動き出す。
気づいたときにはそのなかに荷物が吸いこまれていた。
「……ああ」
その日の夜、穂高の様子がおかしかった。
(何に怒ってるんだろう?それに、なんだか荷物が多い?)
「ここだ」
宵と呼ばれたその人は、いつもどおりフードをかぶって大きな岩にもたれかかっていた。
だけど、その岩は紺碧色をしていて他の場所と違う。
「起きられるか?」
「はい。僕はもう大丈夫です」
「嘘を吐くな。その腕、見せてみろ。その怪我で大丈夫なわけないだろ」
「穂高は大げさですね……」
宵がまくったパーカーの下から、焼けただれた痕がはっきり見える。
それが軽いものではないことくらい、素人の私でも分かった。
「……痛かったらすぐ言えよ」
「分かりました」
大人しく薬を塗られている宵は相変わらず顔を見せてくれないから、一体どんな気持ちでいるのか分からない。
それでも、そんな酷い怪我を負うほどのことをしているのは理解した。
「傷薬と痛み止め、あと……これ」
何か力がこめられているらしい組紐に、小さな鈴がひとつ通されている。
「綺麗な鈴ですね」
「これがあれば、視力と聴力をある程度カバーできる」
「……どういうこと?」
ふたりの話の間に入っちゃいけないと思ったけど、聞こえてきた衝撃的な言葉に突っこまずにはいられない。
「話してもいいか?」
「……仕方ありません」
「宵は今、右目が見えていない。ついでに、右耳の聴力がおちている」
全然知らなかった。
いつ話しかけても反応がかえってきていたし、歩き方も変わっているようには見えなかったから。
(ひとりで何をしているんだろう?そもそも、こんなところでずっと暮らしていけるはずないのに)
「私の力なら治せるかもしれない」
「お断りします」
「どうして?」
「……僕にその力は効きません」
「俺たちみたいに陰の気が強いと、おまえの加護の力は受けられない」
「そんな、どうして……」
宵は相変わらずフードを取ることはなかったけど、少しだけ話をしてくれた。
「ありがとうございます。その気持ちだけで充分です」
「宵……」
「何かお礼ができればよかったのですが、僕にできることは何も──」
「裁縫道具一式は持ってきたんだ。だから、もし迷惑じゃなかったら刺繍を入れてほしいな」
「こちらのハンカチにですか?」
「うん。……お願い」
効果があるかなんて分からないけど、ハンカチには少しだけ加護をかけておいた。
受け取ってもらえればそれだけで充分なんだけど、どうだろう。
「分かりました。次回までに完成させておきます」
「ありがとう!あ、あとこれ。日持ちするものは作れないから、結局おにぎりになっちゃったんだけど……」
「ありがとうございます」
嫌がられていないことに安心しつつ、大荷物を全部渡す穂高に苦笑する。
「流石にその量は持てないんじゃ……」
「いや、宵だから運べる」
「どういうこと?」
首を傾げていると、宵が小さく息を吐く。
「見せた方が早そうですね」
宵のまわりを影みたいなものが覆って、それがうねうねと動き出す。
気づいたときにはそのなかに荷物が吸いこまれていた。
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