満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

お弁当に願いを。弥生side

「わっ...熱っ!」
家に帰ってからというもの、ずっとこの調子だ。
卵焼きを焼いて、温野菜も入れて...けれどメインが完成しない。
(肉じゃなくて魚にしようかな...)
フライパンでできるバター焼きくらいならなんとかなりそうだ。
どうして肉料理に挑戦しようと思ったのか、自分でも疑問だ。
(葉月から連絡...!)
スマートフォンの着信音が聞こえてきて、私は迷わず画面を開く。
内容は予定より早く終わったということと、八時半に駅に着きそうだということだ。
(これから冷まして詰めればなんとかなりそう...)
そうして、お弁当は無事完成した。
お世辞にも上手いとは言えないそれを、葉月は食べてくれるだろうか。
「...本、何持っていこうかな」
ーーつい時計が気になってしまう。
こんなにわくわくするのはいつ以来だろうか。
「弥生」
「葉月...!」
「ごめん、待ったでしょ?」
私は首を横にふる。
「私もついさっききたばかりだから。それから、これ...一応作ってみたんだけど、やっぱり駄目かな?」
お弁当を広げると、葉月は嬉しそうに目を細めた。
「全然駄目じゃない。すごく美味しそう...早速食べてみてもいい?」
「うん、勿論」
葉月はそっとペットボトルを差し出し、飲み物を作る時間がなかったのだと申し訳なさそうにしていた。
(気にしなくていいのに...)
病院でどたばたしていたのに、持ってきてくれただけでありがたい。
「お弁当、どうかな?」
「...うん、すごく美味しい!」
「それならよかった」
どうやら上手くいったらしいことが分かると、なんだか安心した。
(よかった、人にちゃんとした料理を作るのなんて久しぶりだったから...)
『何これ?ばっかみたい!』
...後ろから無言でやられたこともあった。
どんどん嫌なことを思い出してしまいそうになるけれど、葉月のお陰で大丈夫だと思える。
「美味しい...」
「ありがとう」
「私、お礼を言われるようなこと何もしてないよ?」
今この瞬間に一緒にいられることの奇跡を忘れないようにしよう、そう思いながら私も食べ進めていく。
「...うん、ちゃんとできてて本当によかった」
「こうやって誰かとご飯食べるのって、こんなに楽しかったんだね」
葉月が沁々と呟く。
思ったのは私だけではなかったのかと、内心ほっとしながら微笑んでみせた。
「次は私が何か作るよ」
「葉月の本格的なものを見たら落ちこみそう...」
「弥生のだって美味しかったよ?」
そんな話をしながら、二人で楽しく過ごしたのだった。
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