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前日譚
...に願いを。葉月side
私はただ、理解者がほしかった。
なんでもなんて我儘は言わない。
ただ、理解してほしかった。
ーーこの状況から、解放されたかった。
「あ!はづきちゃん、またサボってる!」
「違うよ...?」
「嘘だ...」
「嘘じゃない」
「嘘つきは泥棒のはじまりなんだぞ」
...そこで目が覚めた。
「...!」
昔のことは嫌い。
今でも思い出すだけで吐き気がする。
(何か作ろう)
「葉月、大丈夫か?」
「...うん。ごめんね、おじいちゃん」
私の味方はおじいちゃんだけ。
おじいちゃんがいてくれればそれでいい。
「それじゃあ、何を作ろうか...」
おじいちゃんは料理上手で、私によく料理を教えてくれる。
「それじゃあ、今日は葉月が好きな唐揚げにしようか」
「やった...!お願いします」
「まずはじめに、したごしらえから。肉をこうして...」
おじいちゃんの料理教室は楽しくて、毎回メモをとりながら覚えていた。
「葉月!また学校に行ってないの!?本当にあんたは、」
「今は行かない選択をする権利があるんだろ?あんたが言ってることは、葉月の人権を侵害してる」
「でも、」
「くどい!わしだって、この子が勉強せずに不良の道にいってるんだったら認めてない。けど、この子はわしに料理を習ってない間ずっと勉強しとる。...どこに文句をつけられるんだ」
母親が怒鳴り散らした日も、いつも助けてくれる。
そんなおじいちゃんが、大好きだった。
「...ごめんなさい、おじいちゃん」
「あんなの気にしなくていい。...ただ、折角学べるんだからそれだけは手放さないでいなさい」
「うん」
だから、勉強だけは最低限のものをこなした。
頭痛で動けない日は、おじいちゃんが看病してくれた。
けれどある日、おじいちゃんはこなくなってしまった。
私は分かっていなかった。
おじいちゃんが死の淵にいたことに。
もう長くないなか、私の為に時間を費やしてくれていたことに。
...目の前にいる、酸素チューブをしたのがおじいちゃんであることに。
「残念ですが...」
両親は病院にもこなかった。
『仕事が忙しいから』と、こなかった。
「...命より忙しい仕事って何?」
ただ悔しさで涙が零れ落ちる。
私の頭痛を理解して、生活できるようにと知恵をくれたたった一人の味方は...いなくなってしまった。
どうして私も連れていってくれなかったんだろう...お葬式の後はそればかりだった。
おじいちゃんの家で遺品整理をしていると、見たことがない手帳を見つけた。
『葉月が学校へ行けなくなってしまった。繊細な心を持っているのだろう』
『今日も料理を教えて、勉強する姿を見た。どうして真面目な人間が責められなければならないのか』
そこにはびっしりと見たことがある文字が並んでいた。
「私のことばっかり...」
涙が零れ落ちる。
これから私は独りなのだ。
もう二度と、前に進める気がしない。
なんでもなんて我儘は言わない。
ただ、理解してほしかった。
ーーこの状況から、解放されたかった。
「あ!はづきちゃん、またサボってる!」
「違うよ...?」
「嘘だ...」
「嘘じゃない」
「嘘つきは泥棒のはじまりなんだぞ」
...そこで目が覚めた。
「...!」
昔のことは嫌い。
今でも思い出すだけで吐き気がする。
(何か作ろう)
「葉月、大丈夫か?」
「...うん。ごめんね、おじいちゃん」
私の味方はおじいちゃんだけ。
おじいちゃんがいてくれればそれでいい。
「それじゃあ、何を作ろうか...」
おじいちゃんは料理上手で、私によく料理を教えてくれる。
「それじゃあ、今日は葉月が好きな唐揚げにしようか」
「やった...!お願いします」
「まずはじめに、したごしらえから。肉をこうして...」
おじいちゃんの料理教室は楽しくて、毎回メモをとりながら覚えていた。
「葉月!また学校に行ってないの!?本当にあんたは、」
「今は行かない選択をする権利があるんだろ?あんたが言ってることは、葉月の人権を侵害してる」
「でも、」
「くどい!わしだって、この子が勉強せずに不良の道にいってるんだったら認めてない。けど、この子はわしに料理を習ってない間ずっと勉強しとる。...どこに文句をつけられるんだ」
母親が怒鳴り散らした日も、いつも助けてくれる。
そんなおじいちゃんが、大好きだった。
「...ごめんなさい、おじいちゃん」
「あんなの気にしなくていい。...ただ、折角学べるんだからそれだけは手放さないでいなさい」
「うん」
だから、勉強だけは最低限のものをこなした。
頭痛で動けない日は、おじいちゃんが看病してくれた。
けれどある日、おじいちゃんはこなくなってしまった。
私は分かっていなかった。
おじいちゃんが死の淵にいたことに。
もう長くないなか、私の為に時間を費やしてくれていたことに。
...目の前にいる、酸素チューブをしたのがおじいちゃんであることに。
「残念ですが...」
両親は病院にもこなかった。
『仕事が忙しいから』と、こなかった。
「...命より忙しい仕事って何?」
ただ悔しさで涙が零れ落ちる。
私の頭痛を理解して、生活できるようにと知恵をくれたたった一人の味方は...いなくなってしまった。
どうして私も連れていってくれなかったんだろう...お葬式の後はそればかりだった。
おじいちゃんの家で遺品整理をしていると、見たことがない手帳を見つけた。
『葉月が学校へ行けなくなってしまった。繊細な心を持っているのだろう』
『今日も料理を教えて、勉強する姿を見た。どうして真面目な人間が責められなければならないのか』
そこにはびっしりと見たことがある文字が並んでいた。
「私のことばっかり...」
涙が零れ落ちる。
これから私は独りなのだ。
もう二度と、前に進める気がしない。
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