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本篇・1年目後期
新月に願いを。弥生side
「葉月...」
すやすやと眠りはじめた葉月の頭をそっと膝にのせ直し、そのまま寝かせてやることにする。
...やはり今日、葉月の家に行けばよかったのかもしれない。
葉月は無自覚だったのだろうけど、泣きそうな表情や涙の痕から嫌なことがあったのは間違いないだろうと予測できた。
(どうして何もできなかったんだろう)
今日の空のようにからっぽな心では、何も考えられない。
『からっぽな頭』ではない。
『からっぽな心』だ。
どうして何もしなかったのかという後悔と、どうしてここまで悪くなるまで気づけなかったのかという嫌悪感でいっぱいになる。
新月は苦手だ。周りが真っ暗になってしまうから。
私の心のように何もない空は、嘲け笑うようにどこまでも広がっている。
「弥生...?」
「ごめん、起こした?」
葉月は首を横にふると、私の頬にそっと触れる。
「...?」
「どうして泣いてるの?」
言われるまで気づかなかった。
いつの間にか、頬を滴が伝っていることに気づく。
「目に塵が入っちゃったみたい。なんでもないから気にしないで」
葉月は少し納得がいかなそうな表情で頷く。
(なんとか誤魔化せた、かな)
「それにしても、最近暗くなるの早くなったよね...」
「そうだね。そういえば、頭痛はもう大丈夫?」
「うん。弥生が寝かせてくれたおかげだよ」
「それならよかった」
葉月には、笑顔でいてほしいから。
だから私も、せいいっぱい笑ってみせる。
「送るよ」
「いいの?弥生の家までかなり遠回りになるんじゃ...」
「全然。なんだか運動したい気分だし、散歩ついでだから」
「それじゃあ、お願いします」
二人並んで歩く町並みはいつもより明るく見えて、なんだか今の私にとっては眩しすぎるくらいの輝きを放っていた。
「そういえば、もうすぐクリスマスだね」
「そうだね。よかったら、またお泊まり会しよう」
「うん...!いつも独りだったから楽しみだな...」
やっぱり直接話すのが一番楽しいなと思いつつ、葉月の家まであっという間についてしまった。
「弥生」
「どうしたの?」
「また明日」
「うん。また明日」
私は独りで再びいつもの場所に戻ってきていた。
「...ぎりぎり本を読めそう」
この闇に全て溶けてしまえばいい。
葉月の頭痛も...私の本心も。
消えてしまえばいいのに...なんて考えてしまうのは、いけないことだろうか。
(葉月、少しでもよくなるといいな)
すやすやと眠りはじめた葉月の頭をそっと膝にのせ直し、そのまま寝かせてやることにする。
...やはり今日、葉月の家に行けばよかったのかもしれない。
葉月は無自覚だったのだろうけど、泣きそうな表情や涙の痕から嫌なことがあったのは間違いないだろうと予測できた。
(どうして何もできなかったんだろう)
今日の空のようにからっぽな心では、何も考えられない。
『からっぽな頭』ではない。
『からっぽな心』だ。
どうして何もしなかったのかという後悔と、どうしてここまで悪くなるまで気づけなかったのかという嫌悪感でいっぱいになる。
新月は苦手だ。周りが真っ暗になってしまうから。
私の心のように何もない空は、嘲け笑うようにどこまでも広がっている。
「弥生...?」
「ごめん、起こした?」
葉月は首を横にふると、私の頬にそっと触れる。
「...?」
「どうして泣いてるの?」
言われるまで気づかなかった。
いつの間にか、頬を滴が伝っていることに気づく。
「目に塵が入っちゃったみたい。なんでもないから気にしないで」
葉月は少し納得がいかなそうな表情で頷く。
(なんとか誤魔化せた、かな)
「それにしても、最近暗くなるの早くなったよね...」
「そうだね。そういえば、頭痛はもう大丈夫?」
「うん。弥生が寝かせてくれたおかげだよ」
「それならよかった」
葉月には、笑顔でいてほしいから。
だから私も、せいいっぱい笑ってみせる。
「送るよ」
「いいの?弥生の家までかなり遠回りになるんじゃ...」
「全然。なんだか運動したい気分だし、散歩ついでだから」
「それじゃあ、お願いします」
二人並んで歩く町並みはいつもより明るく見えて、なんだか今の私にとっては眩しすぎるくらいの輝きを放っていた。
「そういえば、もうすぐクリスマスだね」
「そうだね。よかったら、またお泊まり会しよう」
「うん...!いつも独りだったから楽しみだな...」
やっぱり直接話すのが一番楽しいなと思いつつ、葉月の家まであっという間についてしまった。
「弥生」
「どうしたの?」
「また明日」
「うん。また明日」
私は独りで再びいつもの場所に戻ってきていた。
「...ぎりぎり本を読めそう」
この闇に全て溶けてしまえばいい。
葉月の頭痛も...私の本心も。
消えてしまえばいいのに...なんて考えてしまうのは、いけないことだろうか。
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