満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

実習に願いを。弥生side

とある日曜日、エプロンに身を包んだ私は小さく息をついた。
(本当に知らない人ばかり...だけど人数が少ないような気もする)
「はい、それでは調理実習をやっていきたいと思います...今日少ないね」
そこには、私を含めた五人の生徒しかいない。
実習にこなくても出席日数が足りてるからいいや、ということなのだろうか。
通信制だって、普通科の他の学校と同じだ。
三分の一欠席すれば、テストが受けられなくなる。
つまり、逆に言えば三分の二出席していれば休んでも問題ないのだ。
「よろしく」
「よろしくお願いします」
結局三人と二人に分かれて、私は二人の方でやることになった。
(初めて話す人と、料理...)
それはとても不思議な感覚で、どう表現するのが正解か分からなかった。
「あ、じゃあこっちの工程は私が」
「それなら...こっちを」
会話もほとんどないまま進んでいくけれど、決して仲が悪いとか反りが合わないとか、そういうわけではない。
(手際がいい...もしかして、お母さんやってたりするのかな)
聞いていいのかは分からないので、取り敢えず作業に没頭する。
「...」
「お、上手いね。さて、先生も作ろうかな」
決してわいわい作っているわけではない。
けれど、他とは違う雰囲気を味わうことができた。
「はい、それじゃあ実習の片づけが終わったら各自解散で大丈夫です」
チャイムの音が鳴り響いて、いつの間にそんな時間になっていたのかと少し驚いた。
目の前には、完成したきな粉のお餅のようなもの。
「あ、これはこの容器に入れて持って帰っていいからね」
...葉月にあげたら食べてくれるだろうか。
「お疲れ様でした」
「お、お疲れ様でした...」
ようやく片づけが終わり、教室へと急ぐ。
...きっと一人でご飯を食べているはずだから。
「弥生!お疲れ様」
「お疲れ。これ、さっきの実習で作ったけど食べる?」
「いいの?」
「勿論」
葉月はそっと手で掴んで一口ほおばる。
「美味しい...」
「本当?私もまだ食べてないから、いただきます」
一口食べてみると、口のなかに甘みがふわっと広がった。
たしかに、これはいける。
「同じ班になった人が上手かったんだ」
「そうなの?」
「うん。会話を聞いた限りではお母さんをやりながら通学しているみたいだったし、もしかしたら家でも作っているのかも」
「すごい人なんだね!」
葉月があまりにも目を輝かせるものだから、私は少し笑ってしまった。
あんなに参加することが不安だった調理実習が、今は一度しかないのを少し寂しく感じていた。
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