満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・春休み

蒸しタオルに願いを。弥生side

しばらく部屋から出てこない葉月が心配になりつつ、今は行かない方がいいのかもしれないと感じる。
飲み物を用意しながら、ふう、と溜め息が出てしまっていた。
「...どうして親ってみんなこうなんだろうね」
ついそんな言葉が口から零れる。
(葉月に聞かれてなくてよかった...)
身勝手に理想を押しつけ、『あなたの為に』と言いながら納得できないことを伝えると暴言暴力で押さえつけて...そんなことをして、一体何が楽しいのだろう。
「弥生、おまたせ!」
「荷ほどきお疲れ様」
葉月の目元は赤く染まっていた。
...聞かなくても分かる。
「これで目、温めて。疲れたでしょ...?」
「え、あ、ありがとう」
だから私は、何も気づかないふりをしてタオルを差し出す。
たしか温かいものの方がいいはずだ。
なんとなくの知識だけれど、何もせずにはいられなかった。
ただ見ていることなんて、できなかった。
「目がぽかぽかする...」
「それはよかった」
それからしばらくして、声がしなくなる。
眠ったらしいと悟った私は、目にのっていたタオルをどけてそっとブランケットをかける。
(今のうちに何かご飯を作ろうかな)
結局何が食べたいのかは聞き出せなかったので、炒飯を作ることにした。
冷蔵庫を見てみるとコンソメが目にはいったので、ついでにワンタンスープも食べてもらおうと思った。
...料理ができあがる頃、空は茜色に染まっていた。
「ん...」
「起きた?」
「うん...って、ごめん!私、ここに入れてもらった身で寝ちゃって...」
「気にしないで。それだけ疲れてたってことでしょ?謝る必要なんてない。ただ、ご飯は勝手に作らせてもらった。ごめん」
「作ってくれたの?ありがとう...!」
葉月が喜んでくれるなら、私はそれでいい。
テーブルに食器や料理を並べていると、いつの間にか葉月が近くにきてくれていた。
「お客さんに手伝わせるわけには...」
「泊めてもらうお礼。...何もせずにはいられないから、せめてこれくらいはやらせて?」
そんなふうに言われたのは初めてだった。
「ありがとう。それじゃあお願いします」
「任されました」
二人で過ごしていると、やっぱりどんなことでも楽しくなる。
(今日、葉月が頼ってくれたのが私でよかった)
湯気がたちこめるなか、二人で向かいあって両手を合わせる。
二人で黙々と食事を済ませる。
葉月は本当に疲れているようで、早く休ませてあげたいと思った。
(...一応望遠鏡の準備はしておこう)
気分転換になればいい、そう思いながら頭をフル回転させていた。
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