満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目前期

パソコンに願いを。弥生side

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「葉月、お疲れ様」
「弥生...」
なんだか葉月の様子がおかしいような気がする。
気がするだけなのかもしれないけれど、いつもより疲れているように感じる。
(話を聞くべき?それとも...)
迷っている間に昼休みの終わりを告げる鐘が鳴る。
「大丈夫?疲れてない?」
「...少しだけ。久しぶりだからかな?」
葉月は苦笑しながらよろよろと立ちあがる。
「よし、それじゃあ行こうか」
「うん」
「私、パソコン室の場所知らない...」
「こっちだよ」
葉月は軽い足どりで階段をのぼっていく。
(三階...)
「ありがとう。葉月は前にもとってたことがあるんだっけ?」
「後期でとってたんだ。ただ、あの先生じゃなくなっちゃったからちょっと不安だな...」
葉月は少し辛そうにしていて、どう声をかければいいのか分からなかった。
「席、隣同士みたいだよ」
「本当だ、やった!」
「...やっと笑ってくれた」
「弥生?」
ほっとして知らないうちに口から零れ出てしまっていたらしい。
「ううん、なんでもない」
ただそう返して、席に着く。
「弥生はパソコン得意?」
「少しだけ前のところでやってたから、それなりにはできると思うけど...どうだろう?タイピングは苦手だし、けどエクセルは大好き」
「弥生らしいね」
葉月は目元を細めて唇を綻ばせる。
その姿は何度見ても神々しく、美しく感じてしまうのは何故だろう。
「はい、それでは授業をはじめます」
...ざっと二十人前後といったところだろうか。
全員が『新入生』というわけでもなさそうだけれど、大半がそうであることは見ていれば分かる。
「今日はまず、ワードをやっていきましょう」
...嫌いなワード。
早く打てなくて、中学の頃から苦戦している。
そこからはちょっとした文章を打ったり、書体やフォントを変えたり...割りと楽しめた。
「それじゃあレポートを配ります。持ってない人は手をあげてください」
私や葉月はもう配られていたということは、あげた人は『新入生』ということになる。
...予想どおりの結果だった。
「やっぱり早く打てなかった...」
「はじめはそれでもいいんじゃないかな?私はもっとゆっくりだったし、葉月は充分早いと思うんだけど...」
「そんなことないよ」
そんな話をしながら、次は体育だと話をする。
今日は恐らく実技ではなく、授業の説明とレポートを解く時間になる...。
(...少し体を動かしたかったな)
苦手でも苦にならない体育なんて、初めてだったから。
それに、また葉月と一緒にいられるから。
今期も頑張れそうだと、このときは思っていた。
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