満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・夏休み

久しぶりの思い出、ほろ苦い。

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こんなはずじゃ、なかった。
この出来事から学んだことは、『大人を信用できない』こと。
そして、『人をよく見ないと、すぐに窮地に追いやられてしまう』こと。
後悔しても、あの日はもう戻ってこない。
どんなに頑張っても、戻ってこないんだ。
そこは、真っ暗などこかのベランダ。
(...やめて)
「ごめんね、弥生」
カーテンとロープが見える。
「待って、お願い」
「私、無理だった」
目の前の人がカーテンで首を吊ろうとする。
「駄目...!」
そこまでで体をがばっと起こす。
(...夢?)
...そう、いつもこうだ。
誰も助けられなかったのだと、それを願うことさえ赦されないのだと...そういう夢だ。
それは、中学の頃の話。
私にはたった一人だけではあったけれど、友人がいた。
他の人間たちは傍観するか手をくだす側の人間になったから。
きっかけは、目の前で行われている行為を止めようとしたことだった。
「...先生、あげる」
「?」
『転校生がいじめのような行為を受けています』、そう書いたメモ用紙をこっそり渡して、なんとかなるんじゃないかと思っていた。
...思っていたけれど、まさか裏で繋がっていたとは。
次の日から、標的は私に切り替わっていた。
それでも友人でいてくれたのが、一人。
「弥生!」
「...おはよう」
「ほら、一緒に行こう?」
「うん」
そうして二人で過ごしてきた。
それが続くと思っていた。
...けれど、そうはいかなかった。
「私、部活辞めたんだ」
「バレー部、だったよね?...どうして?」
「いじめ、かな。...あの人たちに妬まれちゃったみたいで、色々あったんだ」
それは、私にいやがらせをしてくる主犯格の人物。
(あいつら、私以外にもやってたのか...)
「何もできなくて、ごめん」
「ううん、気にしないで...」
それから後、沢山のことがあった。
向こうの肩ばかり持つ教師。
向こうの偉すぎる親の立場。
...愚行だと思いつつ、子どもではそれをどうすることもできなかった。
だから揉み消された。
私のことも、彼女のことも。
(もう少しで死なせてしまうところだった)
今でも時々こうして夢に視ては、そんなことを思い出す。
きっと、二度と会いに行くことはないだろう。
そんな権利、私にはない。
あのとき護れなかった私には、何も...。
だから今日も、葉月にメッセージを送る。
気づけなかったことに対する贖罪と、一つの秘密を抱えたまま。
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