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本篇・2年目後期
久しぶりの連絡、心が躍ったけれど...。
なんとか大木の下まで辿り着いたとき、連絡がきていることに気づく。
ディスプレイを確認すると、そこには一番会いたい人の名前が表示されていた。
「...葉月」
ただ一言、口から漏れ出たのはそんな言葉だった。
《弥生
ごめんなさい。今日は休んでしまいました。
今月末か、遅くても来月には行きたいなって思ってるよ。
どうしても体調が悪くて起きられなくて...ごめんなさい。
早く会いたいな》
きっと最後の一文まで、嘘は一つもない。
きたくてもこられないのだ、それは分かる。
足が震えて、息が苦しくなって...。
『あいつまだいるの?ていうか存在自体要らなくない?』
『だよねだよね!なんでいるのかな?』
...そう、そんなことを言われ続ければそうなった。
だから私は、絶対に責めたりしない。
学校に行きなさいとか、そんなものはサボりだとか、気合いでなんとかしろとか...できないからこうなっているというのに。
大人にはそれが分からないのだ。
そして、くさいものには蓋をする。
...はじめからなかったことにされてしまう。
(あそこ...誰かいる)
丘より街が近いのに、誰も手をかそうともしていない。
荷物を置いて駆け寄ると、顔色が悪いことが分かる。
「大丈夫ですか?」
しゃがみこんでいる人に話しかけると、うんうんと頷かれる。
けれど、それ以上の反応はない。
...脱水症状、だろうか。
「飲めそうですか?」
「あ、あ、」
「大丈夫。ゆっくりでいいですからね」
重症なようなので救急車を呼ぼうかとも思ったけれど、薬が入ったものがあることに気づく。
「質問ばかりですみません。これ飲んだら、楽になれますか?」
その首は縦にふられた。
「...ありがとう」
「たまたま通り掛かっただけですから。タクシー呼んでおいたので、よければ使ってください」
「本当にありがとう...」
この世界は多数決だ。
絶対的に多い方が正しいと判断されて、そうじゃない方は消されてしまう。
私は、そうじゃない方だ。
見て見ぬふりをするのが正しいとは思わない。
そもそも、こんなことを考えてる時点でアウトなのだ。
(せめて、あの人が大丈夫だといいな...)
記録
『今日も結局寝こんでしまった。
弥生には連絡してみたけれど、返事はきていない。
嫌がられていないだろうか。
...お願い、どうか嫌いにならないで』
ディスプレイを確認すると、そこには一番会いたい人の名前が表示されていた。
「...葉月」
ただ一言、口から漏れ出たのはそんな言葉だった。
《弥生
ごめんなさい。今日は休んでしまいました。
今月末か、遅くても来月には行きたいなって思ってるよ。
どうしても体調が悪くて起きられなくて...ごめんなさい。
早く会いたいな》
きっと最後の一文まで、嘘は一つもない。
きたくてもこられないのだ、それは分かる。
足が震えて、息が苦しくなって...。
『あいつまだいるの?ていうか存在自体要らなくない?』
『だよねだよね!なんでいるのかな?』
...そう、そんなことを言われ続ければそうなった。
だから私は、絶対に責めたりしない。
学校に行きなさいとか、そんなものはサボりだとか、気合いでなんとかしろとか...できないからこうなっているというのに。
大人にはそれが分からないのだ。
そして、くさいものには蓋をする。
...はじめからなかったことにされてしまう。
(あそこ...誰かいる)
丘より街が近いのに、誰も手をかそうともしていない。
荷物を置いて駆け寄ると、顔色が悪いことが分かる。
「大丈夫ですか?」
しゃがみこんでいる人に話しかけると、うんうんと頷かれる。
けれど、それ以上の反応はない。
...脱水症状、だろうか。
「飲めそうですか?」
「あ、あ、」
「大丈夫。ゆっくりでいいですからね」
重症なようなので救急車を呼ぼうかとも思ったけれど、薬が入ったものがあることに気づく。
「質問ばかりですみません。これ飲んだら、楽になれますか?」
その首は縦にふられた。
「...ありがとう」
「たまたま通り掛かっただけですから。タクシー呼んでおいたので、よければ使ってください」
「本当にありがとう...」
この世界は多数決だ。
絶対的に多い方が正しいと判断されて、そうじゃない方は消されてしまう。
私は、そうじゃない方だ。
見て見ぬふりをするのが正しいとは思わない。
そもそも、こんなことを考えてる時点でアウトなのだ。
(せめて、あの人が大丈夫だといいな...)
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『今日も結局寝こんでしまった。
弥生には連絡してみたけれど、返事はきていない。
嫌がられていないだろうか。
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