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日常篇
空腹
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「...どうしてそう思うの?」
木葉は嘘がとても下手だ。
人を傷つけたくない、だから自分が我慢すればいい...彼はいつもそう言うけれど、辛そうにしているところは見ていられない。
「誤魔化さないで。...見てたらすぐに分かるよ。肩、掴まって」
「僕、重いから...」
「流石におぶったりはできないけど、支えるくらいならできるよ」
ここから少し歩いた場所に私の家がある。
この時間帯はタクシーなんてものは走っていないので、残念ながら歩くしかない。
「木葉...もう少しだけ歩ける?」
「うん、大丈夫」
そう話した顔はやっぱり真っ青で、できるだけ早く血をあげたいと思う。
「...よし、着い...わっ!?」
ふたりしてバランスを崩し、そのまま転んでしまう。
木葉は大丈夫だろうか...そう思って起きあがると、彼はその場に踞って、苦しそうな声をあげていた。
「木葉!」
「だ、大丈夫...逃げ、て」
何かに飢えたような瞳、ゆらゆらと揺れる髪、悲痛の叫び...飢餓状態なのだとすぐに理解した。
そんな木葉にできることはひとつしかない。
シャツのボタンを上からふたつ外し、少しの恐怖を捩じ伏せるように笑顔で彼に近づいた。
「...いいよ、噛んで」
「そんなこと、したくな...っ」
「もう3日以上我慢してるでしょ?私は大丈夫だから...ね?」
「...ごめん」
本当に限界がきたようで、牙が肌を引き裂く音がした。
「...っ」
痛い。本当は激痛がはしっている。
けれど、そんなことを言えば木葉が傷つくことなんて想像できた。
(あ...まずいかもしれない)
今日は嫌なことがあって、昼食をとらなかった。
元々体が強くないというのもあってか、貧血になることも多い私は、いつも血をあげると疲れて動けなくなってしまう。
それに...吸血されると、いつも体が熱くなる。
ご飯を食べていない分、血液が足りなくなっているかもしれなくて...今夜は疲れるのが早いかもしれない。
「ごめん、痛かったよね...」
「大丈夫。木葉はもう平気?」
「うん...」
木葉は血を呑んだ後、決まって泣きそうな表情をする。
彼が悪い訳じゃない。
生きる為に必要なことなのだから、それを責める権利なんてきっと誰にもないのに...。
それでも私の恋人は、いつもの数倍甘やかしてくれる。
「ベッドまで運ぶよ」
「...ありがとう」
「他に何かできることはある?」
「今日、側にいて。...帰らないで」
「そんなことでいいなら、僕は今夜側にいる。
だから...ゆっくり休んでね」
あなたのせいじゃないと伝えたかったのに、疲労感で瞼が重い。
結局伝えられずに目を閉じてしまう。
──そのとき、顔に雫が降ってきたような気がした。
木葉は嘘がとても下手だ。
人を傷つけたくない、だから自分が我慢すればいい...彼はいつもそう言うけれど、辛そうにしているところは見ていられない。
「誤魔化さないで。...見てたらすぐに分かるよ。肩、掴まって」
「僕、重いから...」
「流石におぶったりはできないけど、支えるくらいならできるよ」
ここから少し歩いた場所に私の家がある。
この時間帯はタクシーなんてものは走っていないので、残念ながら歩くしかない。
「木葉...もう少しだけ歩ける?」
「うん、大丈夫」
そう話した顔はやっぱり真っ青で、できるだけ早く血をあげたいと思う。
「...よし、着い...わっ!?」
ふたりしてバランスを崩し、そのまま転んでしまう。
木葉は大丈夫だろうか...そう思って起きあがると、彼はその場に踞って、苦しそうな声をあげていた。
「木葉!」
「だ、大丈夫...逃げ、て」
何かに飢えたような瞳、ゆらゆらと揺れる髪、悲痛の叫び...飢餓状態なのだとすぐに理解した。
そんな木葉にできることはひとつしかない。
シャツのボタンを上からふたつ外し、少しの恐怖を捩じ伏せるように笑顔で彼に近づいた。
「...いいよ、噛んで」
「そんなこと、したくな...っ」
「もう3日以上我慢してるでしょ?私は大丈夫だから...ね?」
「...ごめん」
本当に限界がきたようで、牙が肌を引き裂く音がした。
「...っ」
痛い。本当は激痛がはしっている。
けれど、そんなことを言えば木葉が傷つくことなんて想像できた。
(あ...まずいかもしれない)
今日は嫌なことがあって、昼食をとらなかった。
元々体が強くないというのもあってか、貧血になることも多い私は、いつも血をあげると疲れて動けなくなってしまう。
それに...吸血されると、いつも体が熱くなる。
ご飯を食べていない分、血液が足りなくなっているかもしれなくて...今夜は疲れるのが早いかもしれない。
「ごめん、痛かったよね...」
「大丈夫。木葉はもう平気?」
「うん...」
木葉は血を呑んだ後、決まって泣きそうな表情をする。
彼が悪い訳じゃない。
生きる為に必要なことなのだから、それを責める権利なんてきっと誰にもないのに...。
それでも私の恋人は、いつもの数倍甘やかしてくれる。
「ベッドまで運ぶよ」
「...ありがとう」
「他に何かできることはある?」
「今日、側にいて。...帰らないで」
「そんなことでいいなら、僕は今夜側にいる。
だから...ゆっくり休んでね」
あなたのせいじゃないと伝えたかったのに、疲労感で瞼が重い。
結局伝えられずに目を閉じてしまう。
──そのとき、顔に雫が降ってきたような気がした。
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