12 / 258
日常篇
抑える方法
しおりを挟む
本当のことを言うと、段々限界が近づいてきているのは分かっていた。
「くっ...」
これで何度目だろう。
...トイレに行くと嘘をついて、自分の腕を傷つけたのは。
七海だってきっと気づいていない訳じゃない。
結局気を遣わせてしまっているも同然じゃないかと思うと、胸が苦しくなってくる。
「木葉?」
「ごめん、ちょっとぼうっとしてた。...ここだよ、降りよう?」
「...うん」
どうしても来たかった場所があった。
だからこそ、不安そうにしている七海の手を半ば強引に引いてここまで来たのだ。
「すごい、星が沢山...!」
「前に写真を見せたとき、実際に見てみたいって言ってたでしょ?
だから、今夜なら綺麗に見えるんじゃないかって思ったんだ」
七海は夜空いっぱいに浮かぶ星を、ただただ綺麗な瞳にうつしている。
そんな姿を見ていると、突然眩暈に襲われた。
「木葉...!」
「ごめん。ちょっとだけ...そこに座って休みたい」
本来なら活発に動けるはずの夜。
それが今、体に力が入らない状態になっている。
母の言うとおりになったようだ。
「本当は無理してたんじゃない?」
「そんなことないよ...」
「私には何もできないのかもしれない。
だけどお願い、本当のことを教えて」
「...」
「木葉」
無言で貫き通せるような状況ではない。
働かなくなってきた頭で、言葉を慎重に選びながらゆっくり話す。
「...これ、自傷なんだ」
「自傷...?」
包帯をとると、七海は息を呑んだ。
こんなもの、本当は見せるべきものではない。
だが、彼女に嘘は吐きたくなかった。
どんな小さなことでも、ちゃんと話しておきたい。
「母親に、教えてもらったんだ。...『ハーフのあなたは少し違うのかもしれないけど』って」
ゆっくり母との会話を思い出す。
『私は最初、あなたのお父さんにヴァンパイアだということを隠していたの。嫌われたくなくて...。
だからこそ、こういう方法でお昼にデートすることもあった』
『自傷で食い止められるの?』
『...後で異常な渇きが襲ってくる。それに耐えられなくなりそうなら...その子からすぐ離れて家に閉じ籠ること。
人を傷つけるのが嫌なんでしょう?...分かるのよ、私もそうだったから』
全て話し終えると、だんだん視界が歪んでくる。
もう駄目だと思ったとき、七海が服の袖を捲った。
「七海、どうしたの?」
「...これで木葉が少しでも楽になれるなら、私を噛んで」
「駄目だよ、やめて」
彼女は女神のような笑みを浮かべ、自ら腕を軽く傷つけた。
「私は大丈夫だから」
「待って...」
「くっ...」
これで何度目だろう。
...トイレに行くと嘘をついて、自分の腕を傷つけたのは。
七海だってきっと気づいていない訳じゃない。
結局気を遣わせてしまっているも同然じゃないかと思うと、胸が苦しくなってくる。
「木葉?」
「ごめん、ちょっとぼうっとしてた。...ここだよ、降りよう?」
「...うん」
どうしても来たかった場所があった。
だからこそ、不安そうにしている七海の手を半ば強引に引いてここまで来たのだ。
「すごい、星が沢山...!」
「前に写真を見せたとき、実際に見てみたいって言ってたでしょ?
だから、今夜なら綺麗に見えるんじゃないかって思ったんだ」
七海は夜空いっぱいに浮かぶ星を、ただただ綺麗な瞳にうつしている。
そんな姿を見ていると、突然眩暈に襲われた。
「木葉...!」
「ごめん。ちょっとだけ...そこに座って休みたい」
本来なら活発に動けるはずの夜。
それが今、体に力が入らない状態になっている。
母の言うとおりになったようだ。
「本当は無理してたんじゃない?」
「そんなことないよ...」
「私には何もできないのかもしれない。
だけどお願い、本当のことを教えて」
「...」
「木葉」
無言で貫き通せるような状況ではない。
働かなくなってきた頭で、言葉を慎重に選びながらゆっくり話す。
「...これ、自傷なんだ」
「自傷...?」
包帯をとると、七海は息を呑んだ。
こんなもの、本当は見せるべきものではない。
だが、彼女に嘘は吐きたくなかった。
どんな小さなことでも、ちゃんと話しておきたい。
「母親に、教えてもらったんだ。...『ハーフのあなたは少し違うのかもしれないけど』って」
ゆっくり母との会話を思い出す。
『私は最初、あなたのお父さんにヴァンパイアだということを隠していたの。嫌われたくなくて...。
だからこそ、こういう方法でお昼にデートすることもあった』
『自傷で食い止められるの?』
『...後で異常な渇きが襲ってくる。それに耐えられなくなりそうなら...その子からすぐ離れて家に閉じ籠ること。
人を傷つけるのが嫌なんでしょう?...分かるのよ、私もそうだったから』
全て話し終えると、だんだん視界が歪んでくる。
もう駄目だと思ったとき、七海が服の袖を捲った。
「七海、どうしたの?」
「...これで木葉が少しでも楽になれるなら、私を噛んで」
「駄目だよ、やめて」
彼女は女神のような笑みを浮かべ、自ら腕を軽く傷つけた。
「私は大丈夫だから」
「待って...」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる