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日常篇
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「お母さん、僕...」
その日、七海が仕事に行くのを見送った足で母のところに向かった。
「どうしたの?こんな時間に魔界まで来るのは珍しいわね。
...もしかして、上手くいかなかった?」
母に事情を説明すると、かなり複雑そうな表情をさせてしまった。
「そうだったの...。辛い思いをさせたわね」
「僕は大丈夫。ただ、七海を...大切な人を傷つけたんじゃないかって不安になったんだ」
「きっと木葉の恋人ちゃんは、あの人に似ているのね」
母は少しだけ寂しそうに目を伏せる。
...僕の父親は小さい頃に殺された。
いつ、どこで、誰に...魔界にいるみんなに訊いても教えてもらえなくて、未だに謎のままだ。
「お父さんも我慢強い人だったの?」
「そうねえ...無茶ばかりする人だったわ。
だけど、いつだって誰かのことを考えているような優しい人だったの」
「...お母さん、寂しい?」
「少しね」
母は苦笑しながら、どこか懐かしむような目で持っていた1冊の本を読みはじめる。
そっと覗きこんでみると、それはアルバムだった。
「これ、お父さんが若かった頃の写真?」
「そうよ。出会ったばかりの頃だったから...お父さんは学生だったの」
「え、そんなに若かったの!?」
「...まるで私がおばあさんみたいな言い方ね」
まずい、もっと言葉を選ぶべきだった...。
でこぴんが飛んでくるのを覚悟していると、扉が2回叩かれる。
「こんにち...おう、木葉!久しぶりだな!」
「こんにちは、ラッシュさん」
ラッシュさんは母の友人で...母と同じ、生粋のヴァンパイアだ。
「恋人ができたんだって?羨ましいね...」
「ラッシュさん、冷やかしにきたの?」
「...ラッシュ」
「悪い悪い。マリアに話があってきたんだ」
腕時計に目をやると、そろそろ準備をしないとバイトに間に合わない時間になっていた。
「お母さん、僕そろそろ行くね」
「気をつけて。それから...木葉、いつかその恋人さんを紹介してね」
「うん!」
七海のことをちゃんと紹介したい。
今すぐは無理でも、みんなに認めてほしい...心からそう思うのは、これから先ずっと七海だけだから。
──そんなハーフの少年の後ろ姿を見送り、母親はほっと息を吐く。
「木葉は本当に相手のことを大切に想っているのね」
「相手の子もそうみたいだぞ。...この前確認してきた。
それはそうと...ケイト、いつまで隠しておくつもりだ?」
「あの子には笑っていてほしいもの。...艾の死について話すつもりはないわ。
半分ヴァンパイアとはいえ、必死に人間に寄り添って生きている。
...そんな子に言えるわけないでしょう」
「...それもそうだな」
複雑そうな男は霧のように姿を消す。
1人になった部屋で、美しい女性は静かに涙した。
その日、七海が仕事に行くのを見送った足で母のところに向かった。
「どうしたの?こんな時間に魔界まで来るのは珍しいわね。
...もしかして、上手くいかなかった?」
母に事情を説明すると、かなり複雑そうな表情をさせてしまった。
「そうだったの...。辛い思いをさせたわね」
「僕は大丈夫。ただ、七海を...大切な人を傷つけたんじゃないかって不安になったんだ」
「きっと木葉の恋人ちゃんは、あの人に似ているのね」
母は少しだけ寂しそうに目を伏せる。
...僕の父親は小さい頃に殺された。
いつ、どこで、誰に...魔界にいるみんなに訊いても教えてもらえなくて、未だに謎のままだ。
「お父さんも我慢強い人だったの?」
「そうねえ...無茶ばかりする人だったわ。
だけど、いつだって誰かのことを考えているような優しい人だったの」
「...お母さん、寂しい?」
「少しね」
母は苦笑しながら、どこか懐かしむような目で持っていた1冊の本を読みはじめる。
そっと覗きこんでみると、それはアルバムだった。
「これ、お父さんが若かった頃の写真?」
「そうよ。出会ったばかりの頃だったから...お父さんは学生だったの」
「え、そんなに若かったの!?」
「...まるで私がおばあさんみたいな言い方ね」
まずい、もっと言葉を選ぶべきだった...。
でこぴんが飛んでくるのを覚悟していると、扉が2回叩かれる。
「こんにち...おう、木葉!久しぶりだな!」
「こんにちは、ラッシュさん」
ラッシュさんは母の友人で...母と同じ、生粋のヴァンパイアだ。
「恋人ができたんだって?羨ましいね...」
「ラッシュさん、冷やかしにきたの?」
「...ラッシュ」
「悪い悪い。マリアに話があってきたんだ」
腕時計に目をやると、そろそろ準備をしないとバイトに間に合わない時間になっていた。
「お母さん、僕そろそろ行くね」
「気をつけて。それから...木葉、いつかその恋人さんを紹介してね」
「うん!」
七海のことをちゃんと紹介したい。
今すぐは無理でも、みんなに認めてほしい...心からそう思うのは、これから先ずっと七海だけだから。
──そんなハーフの少年の後ろ姿を見送り、母親はほっと息を吐く。
「木葉は本当に相手のことを大切に想っているのね」
「相手の子もそうみたいだぞ。...この前確認してきた。
それはそうと...ケイト、いつまで隠しておくつもりだ?」
「あの子には笑っていてほしいもの。...艾の死について話すつもりはないわ。
半分ヴァンパイアとはいえ、必死に人間に寄り添って生きている。
...そんな子に言えるわけないでしょう」
「...それもそうだな」
複雑そうな男は霧のように姿を消す。
1人になった部屋で、美しい女性は静かに涙した。
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