ハーフ&ハーフ

黒蝶

文字の大きさ
28 / 258
日常篇

暴走寸前

しおりを挟む
「木葉、私は大丈夫だから...」
「大、丈夫...我慢、するから」
部屋に戻った後、木葉はとうとう限界を迎えて倒れてしまった。
それでも欲求を抑えこもうとしている彼に噛むように頼んでいるのだけれど、頑なに拒絶されてしまう。
「お願い、言うことを聞いて」
「嫌だ、僕が我慢すれば」
「...いつも言ってるでしょ、私はあなたのことを嫌いにならないって」
「七海、何を、」
私はキッチンにあった包丁を取り出し、思いきり腕を切る。
顔には満面の笑みを浮かべて...少しだけ迸った痛みを堪えて。
血は腕から滴り落ちて、どんどん床を紅く染めあげていく。
「どうして、僕の為に...駄、目...も、無理、やめて」
「自力じゃ止められないから呑んでくれないかな...?」
「ごめん、も、限界...」
瞬間、体が押し倒されて出血箇所に向かって牙が突き刺さる。
いつもよりも深く刺さったように感じるけれど、ただ全てを受け入れたくて抱きしめた。
「う、」
「...」
いつもならここで一言挟むはずなのに、今日はそれすらもない。
それだけ限界が近かったということだろうか。
「...木葉?」
「僕、は」
「大丈夫?」
働かない頭を動かしながら...火照った体に困惑しながら、木葉に向かって手を伸ばす。
(あ、無理みたい)
そう思ったときには、もう体が崩れ落ちてしまっていた。
「七海、僕また...ごめん」
また泣きそうになっているのはどうしてだろう。
「こんなことをしたら嫌われるって、怖がらせてしまうって分かっているのに...どうしても止められないんだ。
あのときみたいに、──なるのは嫌だ。でも、──にいると傷つけて、そうなったら──われちゃう...」
体から沢山の血が抜けたのだと、今更ながらに感じる。
意識が霞んで何を言っているのかよく聞き取れない。
ただひとつ、どうしても伝えておきたいことがある。
「...私は」
「七海?」
「私が、木葉の...居場所でいるよ」
最後までちゃんと話せていたのかは分からない。
けれど、どうか。
この言葉が、木葉まで届いていますように。
そう願いながら、重くなった瞼をおろす。
──次に目を開けたとき、私は木葉に膝枕をしてもらうような状態だった。
眩しい朝陽、ピカピカになった床...欲求があらわれてもおかしくないのに、それでも彼は掃除までしてくれたらしい。
(何かご飯を作ろうかな)
立ちあがると、テーブルから何かがひらりと宙を舞う。
それは、ごめんという木葉の文字だった。
自分の腕をよく見てみると、丁寧に処置が施されていることに気づく。
《木葉は何も悪くない。お掃除も手当てもしてくれてありがとう》
メモ用紙にそう綴って、できるだけ音をたてずに朝食を作る。
木葉が起きるのを待ちながら、彼のおかげでもう1度やってみようと思えた物語を夢中で綴った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...