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日常篇
愛される者
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「はい、どうぞ」
「ありがとう」
近頃の夜はやはり冷える。
僕はいつものように七海が好きな抹茶ラテを淹れ、買いたてほやほやのアップルパイを運んだ。
「これ、噂以上の美味しさかもしれない」
「確かに。どうやったらこんなふうに美味しく焼けるんだろう...」
ふたりでそんな話をしながら、切り出すタイミングを探る。
内容が内容だ、あまり長々と話すこともできないだろう。
「さっきの話の続き、してもいい?」
「うん。木葉が知っていることを教えてほしい」
「分かった、それじゃあ話すね。...シェリは貧しい家の末っ子だったみたい」
あくまで母から聞いた話ではあるが、そんなに長い年月が経っているわけでもないはずだ。
彼女は末っ子だから甘やかされて育つ...はずだった。
母親が亡くなり、父親からは暴力を受け...兄たちからも奴隷のような扱いを受けていたのだという。
「女の子だからって何でもできる訳じゃないのにね」
「酷い...」
「そんなとき、母がその家の前を通りかかったらしい」
その少女は無垢だったが名前すらなく、母親が熟考してつけたのがシェリだったのだとか。
奴隷みたいな扱いを受け続けていたうえ、出生届もきちんと出されていなかった為そのまま育てたらしい。
「シェリが沢山謝るのは、そうしないと父親からの暴力が止まらなかったから。...相当小さい頃からそうだったみたい」
「元は人間だったんだね。あんなに可愛いのに...」
この世界はいつの時代も理不尽で溢れている。
みんな違ってみんないいはずなのに、何故こんな扱いを受ける子どもが出てきてしまうのだろう。
「因みにシェリっていう名前には『愛される者』っていう意味があるらしいよ。
色んな人に愛されてほしいっていう意味でつけたんだって、母が話してた」
最後の一言で、それまで哀しそうだった七海の表情が明るくなった。
「木葉のお母さん...ケイトさんはすごく優しい人なんだね。木葉みたい」
「あの人は僕よりすごいよ。僕ができないことも沢山できる人だからね」
「木葉だってすごいと思うけど...」
あんまり褒められなれていないからか、どうしても照れてしまう。
七海は空を見つめながらぽつりと呟く。
「...哀しい世界だね」
僕はただ、そうだねと答えることしかできなかった。
彼女の過去を知っているからこそ、安易な言葉をかけられない。
空には暗雲がたちこめてきて、ついカーテンを閉めてしまう。
「木葉は雷が苦手なんだっけ」
「ごめん。あれだけはどうしても無理なんだ」
「そういうところ、すごく意外だった」
「もう...」
なんだか暗い表情のままの七海を抱きしめ、そっと耳許で囁いた。
「僕は七海のこと愛してるよ」
「...!」
「顔、赤くなった」
「いきなりは恥ずかしい」
ようやくいつものような笑顔が見られて少しだけ安心する。
こんな平穏な日々が続けばいいと心から思った。
「ありがとう」
近頃の夜はやはり冷える。
僕はいつものように七海が好きな抹茶ラテを淹れ、買いたてほやほやのアップルパイを運んだ。
「これ、噂以上の美味しさかもしれない」
「確かに。どうやったらこんなふうに美味しく焼けるんだろう...」
ふたりでそんな話をしながら、切り出すタイミングを探る。
内容が内容だ、あまり長々と話すこともできないだろう。
「さっきの話の続き、してもいい?」
「うん。木葉が知っていることを教えてほしい」
「分かった、それじゃあ話すね。...シェリは貧しい家の末っ子だったみたい」
あくまで母から聞いた話ではあるが、そんなに長い年月が経っているわけでもないはずだ。
彼女は末っ子だから甘やかされて育つ...はずだった。
母親が亡くなり、父親からは暴力を受け...兄たちからも奴隷のような扱いを受けていたのだという。
「女の子だからって何でもできる訳じゃないのにね」
「酷い...」
「そんなとき、母がその家の前を通りかかったらしい」
その少女は無垢だったが名前すらなく、母親が熟考してつけたのがシェリだったのだとか。
奴隷みたいな扱いを受け続けていたうえ、出生届もきちんと出されていなかった為そのまま育てたらしい。
「シェリが沢山謝るのは、そうしないと父親からの暴力が止まらなかったから。...相当小さい頃からそうだったみたい」
「元は人間だったんだね。あんなに可愛いのに...」
この世界はいつの時代も理不尽で溢れている。
みんな違ってみんないいはずなのに、何故こんな扱いを受ける子どもが出てきてしまうのだろう。
「因みにシェリっていう名前には『愛される者』っていう意味があるらしいよ。
色んな人に愛されてほしいっていう意味でつけたんだって、母が話してた」
最後の一言で、それまで哀しそうだった七海の表情が明るくなった。
「木葉のお母さん...ケイトさんはすごく優しい人なんだね。木葉みたい」
「あの人は僕よりすごいよ。僕ができないことも沢山できる人だからね」
「木葉だってすごいと思うけど...」
あんまり褒められなれていないからか、どうしても照れてしまう。
七海は空を見つめながらぽつりと呟く。
「...哀しい世界だね」
僕はただ、そうだねと答えることしかできなかった。
彼女の過去を知っているからこそ、安易な言葉をかけられない。
空には暗雲がたちこめてきて、ついカーテンを閉めてしまう。
「木葉は雷が苦手なんだっけ」
「ごめん。あれだけはどうしても無理なんだ」
「そういうところ、すごく意外だった」
「もう...」
なんだか暗い表情のままの七海を抱きしめ、そっと耳許で囁いた。
「僕は七海のこと愛してるよ」
「...!」
「顔、赤くなった」
「いきなりは恥ずかしい」
ようやくいつものような笑顔が見られて少しだけ安心する。
こんな平穏な日々が続けばいいと心から思った。
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