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隠暮篇(かくれぐらしへん)
事件発生
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「シェリ...!」
そんな叫びが聞こえてきて、玄関まで全速力で走る。
そこで見た光景はとんでもないものだった。
人間ではまず助からない出血量、引きずってきたであろう体...そして、そんな血だらけの体を抱きしめてパニックになっている恋人。
「七海、何があったの?」
「分からない。扉を開けたらシェリが助けてって、それで倒れちゃって...。
木葉、私はどうすればいい?」
「とにかく止血しないと。申し訳ないけど、」
「部屋は後でも片づけられる。外の掃除だってできる...。でも、シェリのことは早く何とかしないと助けられないかもしれない」
遣い魔は基本的に主人から力を分け与えてもらえば死ぬことはない。
だが、きっと母は人間たちの世界には来ていないだろう。
「...七海」
「私に何かできる?」
「ここにラッシュさんを呼んでもいい?」
「それでシェリが助かるなら」
「ありがとう」
出血箇所を押さえながら、血に濡れた片手でラッシュさんに連絡する。
充満した血液の香りで限界が近いのを感じながら、早く来てくれることを祈ることしかできなかった。
「木葉、私がやる、さっきから顔色が悪いのは抑えてるからでしょ?」
「僕は大丈夫」
「嘘はやめて。...本当は今すぐ血をあげたいけど、まずはシェリを助けたい。
掃除は終わったし、何もできないのが1番辛い」
決意がこもった瞳を見つめながら、僕は電話が終わりあいていた手を七海の方に伸ばす。
彼女はその手を握りかえしてシェリの傷口を抑えた。
「ごめん。ありがとう」
「謝らないで。悪いのはシェリを傷つけた人だから。
...誰かに襲われないとこんな傷にはならないはず。それに、どうしてシェリはこんな時間帯に1人で出歩いてたんだろう」
慌てていると思っていたのに、七海はもう冷静さを取り戻している。
「おい、木葉。シェリは...」
「ラッシュさん、僕、何をすれば、」
「お嬢さん、木葉を連れてこいつの家に行っててくれないか?」
「...分かりました」
「ありがとな」
その言葉にふたりして頷き、手をついた血液を洗い落としてそのまま僕の家へと向かう。
「大丈夫...じゃないよね」
「木葉」
部屋に入るなり抱きついてきた七海の体は氷のように冷たく、かたかたと震えていた。
「お願い、手を離さないで」
「...このままだと七海のことをめちゃくちゃに襲っちゃうかもしれないよ?」
「寧ろ噛んで。...その方が木葉が側にいるんだって安心できるから」
生死の場面に直面して恐怖している人間を...ましてや恋人を噛もうとしている僕は最低だろうか。
何も分からない状態では、僕が彼女を護るしかない。
だが、半分化け物の僕にそれができるだろうか。
「変って言われると思うけど、私は木葉が噛んでくれるのがすごく嬉しい。頼ってもらえるのはすごく安心する...」
「七海...」
いつもより優しく抱きしめて目の前の女性を噛む。
神々しい月の光が僕の罪深さを物語っているような気がした。
そんな叫びが聞こえてきて、玄関まで全速力で走る。
そこで見た光景はとんでもないものだった。
人間ではまず助からない出血量、引きずってきたであろう体...そして、そんな血だらけの体を抱きしめてパニックになっている恋人。
「七海、何があったの?」
「分からない。扉を開けたらシェリが助けてって、それで倒れちゃって...。
木葉、私はどうすればいい?」
「とにかく止血しないと。申し訳ないけど、」
「部屋は後でも片づけられる。外の掃除だってできる...。でも、シェリのことは早く何とかしないと助けられないかもしれない」
遣い魔は基本的に主人から力を分け与えてもらえば死ぬことはない。
だが、きっと母は人間たちの世界には来ていないだろう。
「...七海」
「私に何かできる?」
「ここにラッシュさんを呼んでもいい?」
「それでシェリが助かるなら」
「ありがとう」
出血箇所を押さえながら、血に濡れた片手でラッシュさんに連絡する。
充満した血液の香りで限界が近いのを感じながら、早く来てくれることを祈ることしかできなかった。
「木葉、私がやる、さっきから顔色が悪いのは抑えてるからでしょ?」
「僕は大丈夫」
「嘘はやめて。...本当は今すぐ血をあげたいけど、まずはシェリを助けたい。
掃除は終わったし、何もできないのが1番辛い」
決意がこもった瞳を見つめながら、僕は電話が終わりあいていた手を七海の方に伸ばす。
彼女はその手を握りかえしてシェリの傷口を抑えた。
「ごめん。ありがとう」
「謝らないで。悪いのはシェリを傷つけた人だから。
...誰かに襲われないとこんな傷にはならないはず。それに、どうしてシェリはこんな時間帯に1人で出歩いてたんだろう」
慌てていると思っていたのに、七海はもう冷静さを取り戻している。
「おい、木葉。シェリは...」
「ラッシュさん、僕、何をすれば、」
「お嬢さん、木葉を連れてこいつの家に行っててくれないか?」
「...分かりました」
「ありがとな」
その言葉にふたりして頷き、手をついた血液を洗い落としてそのまま僕の家へと向かう。
「大丈夫...じゃないよね」
「木葉」
部屋に入るなり抱きついてきた七海の体は氷のように冷たく、かたかたと震えていた。
「お願い、手を離さないで」
「...このままだと七海のことをめちゃくちゃに襲っちゃうかもしれないよ?」
「寧ろ噛んで。...その方が木葉が側にいるんだって安心できるから」
生死の場面に直面して恐怖している人間を...ましてや恋人を噛もうとしている僕は最低だろうか。
何も分からない状態では、僕が彼女を護るしかない。
だが、半分化け物の僕にそれができるだろうか。
「変って言われると思うけど、私は木葉が噛んでくれるのがすごく嬉しい。頼ってもらえるのはすごく安心する...」
「七海...」
いつもより優しく抱きしめて目の前の女性を噛む。
神々しい月の光が僕の罪深さを物語っているような気がした。
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