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追暮篇(おいぐらしへん)
閑話『独りだった神様の話』・漆
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また来ると約束して山を降りたふたりは、無事に家まで辿り着けただろうか。
おかしくなっていた間にできなかったことを少しずつこなしていく。
掃除に洗濯、料理...そして、道具のお手入れ。
自分が無意識のうちにばらばらにしたものではあるけれど、やっぱりこれがないと上手く力を発揮できない可能性が高い。
念入りにやっていくしかないけれど、時間がかかりすぎても困る。
ひとだんらくして休憩していると、近くでばさっと羽音がした。
「...お手紙ありがとう」
かあ、と元気よく鳴くその烏の言葉を、私は理解することができる。
「あなたから見たふたりの話を聞かせて」
その烏は教えてくれた。
七海は家で仕事をしながらあまり人に会わないようにしていることや、木葉が夜に本屋さんの仕事に行っていること。
七海が料理を頑張っていること、木葉は咬まないように気をつけていること...お互い愛し合っていることも、全部。
「ありがとう。話し疲れたでしょう?ここで休んでいて」
烏でも大丈夫そうな飲み物を用意しながら、手紙の内容が気になって仕方ない。
はじめはあれこれ迷っていたけれど、お湯が沸くまでに読んでみることにした。
《美桜さんへ
この前は沢山話せて嬉しかった。
本当はもっといっぱい話をしたかったけど、また次に会ったときにもっとちゃんと話せるといいな》
私が知らない間に、七海はすっかり大人になっていた。
その成長に少し感動しながら、今はもういない彼女のことを考える。
これを見たら、どんな言葉を発しただろう。
気持ちを伝えにすぐに走り出す姿はなんとなく想像できる。
「...木葉からも?」
そこには、失礼なことを言っていたら申し訳ないということと、普段どんな生活をしているかが記されていた。
《僕は神様の服装についてよく知らないんだけど、もしよければ今度洋服を贈らせてほしい。
七海と一緒に選んでみるよ》
そして最後に、七海は自分が護ると書かれていた。
はじめ私は木葉が七海といるのは能力狙いではないかと疑っていたのに、こんなにも温かい言葉をかけてくれる。
「あ...」
やかんが音をたてはじめているのに気づいて、すぐに火を止める。
「...ノワール」
声をかけると、とても嬉しそうにばさばさと羽を動かす。
「熱湯消毒したり色々したから、多分大丈夫だとは思うんだけど...よければどうぞ。
薬草になるようなものしか入っていないから、体に害を及ぼすことはないと思う」
ノワールは少しずつ飲んでくれた。
この子と話していると寂しさを忘れられる。
掃除も料理も、ちゃんと毎日こなせそうだ。
けれど、この子には大切なお友だちがいて...帰る場所がある。
...いつか私も、この子みたいに自由に飛び回れる日がくるのかな。
「お手紙、届けてくれる?」
元気よく飛び立っていく背中をただ見つめる。
虚無に押し潰されそうになりながら、また会える日を楽しみに待つことにした。
──空は青く澄んでいて、きっと繋がっているのだから。
おかしくなっていた間にできなかったことを少しずつこなしていく。
掃除に洗濯、料理...そして、道具のお手入れ。
自分が無意識のうちにばらばらにしたものではあるけれど、やっぱりこれがないと上手く力を発揮できない可能性が高い。
念入りにやっていくしかないけれど、時間がかかりすぎても困る。
ひとだんらくして休憩していると、近くでばさっと羽音がした。
「...お手紙ありがとう」
かあ、と元気よく鳴くその烏の言葉を、私は理解することができる。
「あなたから見たふたりの話を聞かせて」
その烏は教えてくれた。
七海は家で仕事をしながらあまり人に会わないようにしていることや、木葉が夜に本屋さんの仕事に行っていること。
七海が料理を頑張っていること、木葉は咬まないように気をつけていること...お互い愛し合っていることも、全部。
「ありがとう。話し疲れたでしょう?ここで休んでいて」
烏でも大丈夫そうな飲み物を用意しながら、手紙の内容が気になって仕方ない。
はじめはあれこれ迷っていたけれど、お湯が沸くまでに読んでみることにした。
《美桜さんへ
この前は沢山話せて嬉しかった。
本当はもっといっぱい話をしたかったけど、また次に会ったときにもっとちゃんと話せるといいな》
私が知らない間に、七海はすっかり大人になっていた。
その成長に少し感動しながら、今はもういない彼女のことを考える。
これを見たら、どんな言葉を発しただろう。
気持ちを伝えにすぐに走り出す姿はなんとなく想像できる。
「...木葉からも?」
そこには、失礼なことを言っていたら申し訳ないということと、普段どんな生活をしているかが記されていた。
《僕は神様の服装についてよく知らないんだけど、もしよければ今度洋服を贈らせてほしい。
七海と一緒に選んでみるよ》
そして最後に、七海は自分が護ると書かれていた。
はじめ私は木葉が七海といるのは能力狙いではないかと疑っていたのに、こんなにも温かい言葉をかけてくれる。
「あ...」
やかんが音をたてはじめているのに気づいて、すぐに火を止める。
「...ノワール」
声をかけると、とても嬉しそうにばさばさと羽を動かす。
「熱湯消毒したり色々したから、多分大丈夫だとは思うんだけど...よければどうぞ。
薬草になるようなものしか入っていないから、体に害を及ぼすことはないと思う」
ノワールは少しずつ飲んでくれた。
この子と話していると寂しさを忘れられる。
掃除も料理も、ちゃんと毎日こなせそうだ。
けれど、この子には大切なお友だちがいて...帰る場所がある。
...いつか私も、この子みたいに自由に飛び回れる日がくるのかな。
「お手紙、届けてくれる?」
元気よく飛び立っていく背中をただ見つめる。
虚無に押し潰されそうになりながら、また会える日を楽しみに待つことにした。
──空は青く澄んでいて、きっと繋がっているのだから。
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