ハーフ&ハーフ

黒蝶

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断暮篇(たちぐらしへん)

懐かしいこと

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「途中までついていってもいい?」
「うん。お願いします」
今日は久しぶりのカフェでの打ち合わせだ。
最近は怪我が原因でネット経由だったことが多かったものの、原稿は直接受け取りたいと申し出があった。
(小さい記事なのにずっと書かせてもらえるのもありがたいな...)
「渡瀬さんだっけ?...お仕事の話し中に邪魔しちゃったからちょっと気まずいな」
「あのあと、渡瀬さんの家で子供たちがわいわいしているところが映った日があったよ」
「え、そうなの?」
木葉が側にいてくれると安心できるのはどうしてだろう。
嬉しいとか楽しいとか、それとは別の何かを感じる。
この気持ちを表現する言葉は、一体どこを探せば出てくるのだろうか。
「帰りは連絡して。...できれば終わる5分前に教えてもらえるとありがたいな」
「分かった。でも、大丈夫?」
「僕は平気だから」
それは決して束縛などではなく、ひとりで襲われたら大変だからと気をつけてくれているからこその言葉だというのは分かっている。
ただ、こんなお昼から来てもらって木葉に負担がかかっていないか不安だ。
「木葉、ごめ、」
「それはなし。...それじゃあまた終わってからね」
口の中に放りこまれたキャンディは、その場で溶けてしまいそうなほど甘かった。
食べきってから店内に入ったものの、渡瀬さんの姿がない。
急いで携帯電話を確認すると、そこにはメッセージが届いていた。
(どうしよう、全然気づいてなかった...)
飲み物を注文して待っていると、汗だくの男性がこちらに小走りでやってきた。
「渡瀬さん、こんにちは」
「すみません、お待たせしてしまって...」
奥さんの具合が悪そうで子どもを知り合いに預けるので遅れます...そんな内容のメールが来たのは30分ほど前のこと。
「すみません。もっと早く気づいていれば別日に変更で大丈夫だと言えたのに...」
「いえ、こちらも連絡がすっかり遅くなってしまいましたから」
渡瀬さんは本当に丁寧な人で、いつもこうして連絡を忘れない。
だからこそ、彼とは仕事上の信頼関係を築くことができたのだろう。
「野崎さん、ここまでくればきっと大丈夫です。...少なくても、僕はそう思っています」
「ありがとうございます」
雑誌で賞をとってから、ネットで優秀作品に選ばれてから...それからすり寄ろうとしてきた人たちは多い。
学生の今だけだと差別的な発言を繰り返す大人が多いなか、渡瀬さんだけははじめから私に目をつけてくれた。
はじめから上手くいく人の方が少ないからと、いつだって一緒に戦ってくれたのだ。
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