夜紅譚

黒蝶

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閑話『それぞれの平穏』

用意してやれるもの

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「何か欲しいものはないのか?」
「……ない」
拗ねているのか、本音を隠しているのか。
今の俺では判断できない。
神社に予想以上の数の人間がいたうえ、少しずつ満月が近いからか神社そのものに拒まれてしまったのだ。
「そんなに入りたかったのか?」
「先生がもう怪我しなくていいように、神様にお願いしてみたかったんだもん…」
自分だって無茶な戦い方ばかりしているのに、何故そんなに俺のことを考えているのか。
「もっと自分中心の願いでも聞いてくれるはずだ。…頑張っただろ、去年も」
「本当?迷惑にならなかった?」
言葉にしないと不安がる。
それは生い立ちゆえなのだろうが、こういったことを口にするのはどうにも照れくさい。
「なるわけないだろ。俺が一緒にいたいんだから」
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