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第17章『名を奪う者』
第143話
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「それは、その…」
「遠慮せず話してくれ」
橋本さんは迷う仕草を見せた後、少しずつ話しはじめた。
「実は、梨子ちゃん…宇佐見梨子さんと連絡がとれないんです。バイト初日から一緒で、定時制でも同じだったんです。
それなのに、住所の場所へ行ったら物置だってマンションの管理人さんに言われてしまって…学校にも来ていないんです」
見覚えがある名前だと思ったら、やはりそうだったのか。
楽器屋さんのバイト仲間である須田さんから話は聞いていたが、やはり悪い人ではなさそうだ。
「教えてくれてありがとう。この喫茶店には慣れたか?」
「それは…はい。折原さんが丁寧に仕事を教えてくれたおかげです。ありがとうございます」
「それはよかった。困りごとがあったらすぐ連絡してくれ」
「はい」
橋本さんは一礼して持ち場に戻っていった。
それを見送った後、聞いた話をまとめて陽向にメッセージを送る。
旧校舎に行く前にどうしてもやっておきたいことがあった。
「お疲れ様です」
「お疲れ。メッセージ、読んでくれたか?」
「はい。よく気づきましたね」
「バイト先に新人がふたり入るから教育係を頼むって言われていたんだ。
あんまり気にしてなかったけど、前々回くらいからひとり見なくなったから…」
当たってほしくない予想が当たってしまった。
無断欠勤をするような人には見えなかったため、なんとなく嫌な予感がしていたのだ。
「穂乃ちゃんには話したんですか?」
「一応噂の内容は伝えた」
放送部の部長と監査部メンバーの仕事を両立させるのは難しいらしい。
かなり疲れている様子だったので、今夜は家でゆっくり休むように伝えた。
「穂乃ちゃんが元気でいるのが1番ですよね」
「ああ。そういえば、陽向たちは慣れたか?」
「俺は慣れましたけど、桜良は色々不安があるみたいで…」
近況報告をしているうちに、いつの間にか夜になっていた。
「そろそろ行きましょう」
「そうだな。夜仕事の時間だ」
相変わらず旧校舎はどこか不思議な雰囲気をまとっていて静かだ。
自分ひとりしかいないはずなのに、背後からひたひたと音がする。
相手がどんな姿なのか、そもそも物なのか人型なのかさえ分かっていない。
そんななかでもできるのは地道な見回りだけだ。
「先生も噂のことを調べてるの?」
「それはそうだろう。…まずはあいつらと合流するのが先だな」
先生たちかと安堵していたそのとき、トレンチコートを羽織った男が銃のようなものをふたりがいるであろう方へ向けるのが見えた。
「危ない!」
乾いた音と一瞬はしった激痛。
何か話しているのは聞こえるが起きあがれない。
ふたりは無事だろうか。
聞き慣れない男の嗤い声が耳許で聞こえた。
「遠慮せず話してくれ」
橋本さんは迷う仕草を見せた後、少しずつ話しはじめた。
「実は、梨子ちゃん…宇佐見梨子さんと連絡がとれないんです。バイト初日から一緒で、定時制でも同じだったんです。
それなのに、住所の場所へ行ったら物置だってマンションの管理人さんに言われてしまって…学校にも来ていないんです」
見覚えがある名前だと思ったら、やはりそうだったのか。
楽器屋さんのバイト仲間である須田さんから話は聞いていたが、やはり悪い人ではなさそうだ。
「教えてくれてありがとう。この喫茶店には慣れたか?」
「それは…はい。折原さんが丁寧に仕事を教えてくれたおかげです。ありがとうございます」
「それはよかった。困りごとがあったらすぐ連絡してくれ」
「はい」
橋本さんは一礼して持ち場に戻っていった。
それを見送った後、聞いた話をまとめて陽向にメッセージを送る。
旧校舎に行く前にどうしてもやっておきたいことがあった。
「お疲れ様です」
「お疲れ。メッセージ、読んでくれたか?」
「はい。よく気づきましたね」
「バイト先に新人がふたり入るから教育係を頼むって言われていたんだ。
あんまり気にしてなかったけど、前々回くらいからひとり見なくなったから…」
当たってほしくない予想が当たってしまった。
無断欠勤をするような人には見えなかったため、なんとなく嫌な予感がしていたのだ。
「穂乃ちゃんには話したんですか?」
「一応噂の内容は伝えた」
放送部の部長と監査部メンバーの仕事を両立させるのは難しいらしい。
かなり疲れている様子だったので、今夜は家でゆっくり休むように伝えた。
「穂乃ちゃんが元気でいるのが1番ですよね」
「ああ。そういえば、陽向たちは慣れたか?」
「俺は慣れましたけど、桜良は色々不安があるみたいで…」
近況報告をしているうちに、いつの間にか夜になっていた。
「そろそろ行きましょう」
「そうだな。夜仕事の時間だ」
相変わらず旧校舎はどこか不思議な雰囲気をまとっていて静かだ。
自分ひとりしかいないはずなのに、背後からひたひたと音がする。
相手がどんな姿なのか、そもそも物なのか人型なのかさえ分かっていない。
そんななかでもできるのは地道な見回りだけだ。
「先生も噂のことを調べてるの?」
「それはそうだろう。…まずはあいつらと合流するのが先だな」
先生たちかと安堵していたそのとき、トレンチコートを羽織った男が銃のようなものをふたりがいるであろう方へ向けるのが見えた。
「危ない!」
乾いた音と一瞬はしった激痛。
何か話しているのは聞こえるが起きあがれない。
ふたりは無事だろうか。
聞き慣れない男の嗤い声が耳許で聞こえた。
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