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第19章『空の涙』
第172話
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「いやあ、壮大な愛でしたね」
「…そうだな。かなり仲がいいみたいだった」
「それもそうなんですけど、その…」
困惑した様子の陽向と保健室へ向かうと、中から話し声が聞こえる。
「詩乃ちゃんたち、大丈夫かな…」
「今は自分の心配をしてろ。あいつらがそう簡単にやられるはずがない」
「それもそっか。強いもんね」
入ろうか迷っていると、陽向が扉を開けた。
「失礼します!」
「あ、ひな君だ」
「解決したから報告させてもらおうと思ってきたんだ。それと、何か食べたいものがあるなら持ってこようと思って…。何がいい?」
何も食べていないであろうふたりに尋ねると、先生が苦笑する。
「これ以上生徒に世話をしてもらうわけにはいかない。食事ならこれから用意するから──」
「先生は卵かけご飯が好きなんだよ。あと、ちょっと甘めのだし巻き卵とか、ひじきとか…」
「分かった。7時くらいに持ってくるよ。陽向は桜良と食べるんだろ?」
「そうなりますね。怒られるんだろうな…」
陽向の呟きとともに退室し、そのまま一旦家に帰る。
穂乃が寝ている間に朝食と弁当の用意をすませ、すぐに学園へ向かおうとした。
《もう行くのか?》
「1時間は休めたし、早く届けた方がいいだろうから。穂乃が起きたら、朝ご飯を受け取りに来るよう伝えてくれ。いつもどおり、旧校舎にいるから」
《了解した》
最近あまり顔を合わせていなかったし、たまには一緒にご飯を食べたい。
急いで保健室へ弁当を届け、穂乃が来るのを待つ。
手首がじんわり痛くてつい強く握ってしまう。
「…思ったより治らないな」
《いたぞ》
はっと顔をあげると、わくわくした様子の穂乃が駆け寄ってきた。
「お姉ちゃん、おはよう!」
「おはよう。弁当は持ってきたか?」
「うん。朝ご飯、ここで食べるの?」
「ああ。白露はこっち、これは穂乃の分だ」
「ありがとう。いただきます」
早速食べはじめた穂乃とは対照的に、白露は不思議そうに首を傾げている。
「何か気になることでもあるのか?」
《何故俺の分があるのか気になった》
「おまえも食べておかないと力が出ないだろ?」
《…そう、かもしれないな》
なんだか様子がおかしい。
だが、にこにこしながら食べている穂乃に勘ぐらせてはいけない気がして自分の分を食べすすめる。
「いなくなった生徒、戻ってくるはずだから大丈夫だ」
「本当?よかった…。そういえば、監査部で日誌を書いてるんだけど、お姉ちゃんはやったことある?」
「あまりないな。中等部は当番制だって聞いたことはあるけど、現物は見たことがない」
ふたりで話しつつ、ふと白露を見る。
その瞳は静かに揺れていて、どこか哀しげな様子だった。
「…そうだな。かなり仲がいいみたいだった」
「それもそうなんですけど、その…」
困惑した様子の陽向と保健室へ向かうと、中から話し声が聞こえる。
「詩乃ちゃんたち、大丈夫かな…」
「今は自分の心配をしてろ。あいつらがそう簡単にやられるはずがない」
「それもそっか。強いもんね」
入ろうか迷っていると、陽向が扉を開けた。
「失礼します!」
「あ、ひな君だ」
「解決したから報告させてもらおうと思ってきたんだ。それと、何か食べたいものがあるなら持ってこようと思って…。何がいい?」
何も食べていないであろうふたりに尋ねると、先生が苦笑する。
「これ以上生徒に世話をしてもらうわけにはいかない。食事ならこれから用意するから──」
「先生は卵かけご飯が好きなんだよ。あと、ちょっと甘めのだし巻き卵とか、ひじきとか…」
「分かった。7時くらいに持ってくるよ。陽向は桜良と食べるんだろ?」
「そうなりますね。怒られるんだろうな…」
陽向の呟きとともに退室し、そのまま一旦家に帰る。
穂乃が寝ている間に朝食と弁当の用意をすませ、すぐに学園へ向かおうとした。
《もう行くのか?》
「1時間は休めたし、早く届けた方がいいだろうから。穂乃が起きたら、朝ご飯を受け取りに来るよう伝えてくれ。いつもどおり、旧校舎にいるから」
《了解した》
最近あまり顔を合わせていなかったし、たまには一緒にご飯を食べたい。
急いで保健室へ弁当を届け、穂乃が来るのを待つ。
手首がじんわり痛くてつい強く握ってしまう。
「…思ったより治らないな」
《いたぞ》
はっと顔をあげると、わくわくした様子の穂乃が駆け寄ってきた。
「お姉ちゃん、おはよう!」
「おはよう。弁当は持ってきたか?」
「うん。朝ご飯、ここで食べるの?」
「ああ。白露はこっち、これは穂乃の分だ」
「ありがとう。いただきます」
早速食べはじめた穂乃とは対照的に、白露は不思議そうに首を傾げている。
「何か気になることでもあるのか?」
《何故俺の分があるのか気になった》
「おまえも食べておかないと力が出ないだろ?」
《…そう、かもしれないな》
なんだか様子がおかしい。
だが、にこにこしながら食べている穂乃に勘ぐらせてはいけない気がして自分の分を食べすすめる。
「いなくなった生徒、戻ってくるはずだから大丈夫だ」
「本当?よかった…。そういえば、監査部で日誌を書いてるんだけど、お姉ちゃんはやったことある?」
「あまりないな。中等部は当番制だって聞いたことはあるけど、現物は見たことがない」
ふたりで話しつつ、ふと白露を見る。
その瞳は静かに揺れていて、どこか哀しげな様子だった。
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