夜紅譚

黒蝶

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第25章『アイス・グラウンド』

第221話

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「瞬、そっちはどうだ?」
『特に誰もいないみたい。詩乃ちゃんたちは?』
「こっちも手がかりになりそうなものはない。白露、新校舎には何かあるか?」
『……』
「何かあったのか?」
『白露、マイク…声を色々な方向へ届けるには、このボタンを押さないと話せないよ。
今はグラウンドを歩いていたんだけど、氷は溶けきってて…あ』
穂乃がしゃがんだらしい音と、何かを拾うような音が入って首を傾げる。
『氷の粒が残ってたよ』
『俺もそっちへ向かう。なるべく触らないように』
『分かりました』
隣にいた陽向が意味が分からないといった様子で眉間にシワを寄せている。
「なんで一部だけ残ったんですかね?それとも、意図的に残した…?」
「分からない。ただ、手がかりにはなるかもしれない」
痕跡が残ってしまうほど力が弱いのか、あえて残すことに意味があったのか…あるいは、力が強すぎて制御しきれなくなっているのか。
どのみち、相手の状況を知る要素になるだろう。
『欠片を回収した。あとは俺が調べておく』
「了解。私たちは巡回を続ける」
旧校舎は何もおきないかもしれないと思っていたが、そういうわけでもないらしい。
《ギ、ガガ》
「先輩、あれって…」
「死霊だったもの、って表現が正確かな」
何人も合体しているのか、人間っぽい気配をいくつも感じる。
「陽向、一旦加減して攻撃できるか?」
「やってみます」
《ギャハハハ!》
笑い声をあげ続ける相手の頭上に矢を放つ。
「少しでいいから私の相手をしてくれないか?」
《フ、フフ、フ…》
破魔の矢に細長い手らしきものが触れたところで、眩い光が集合体を照らした。
《ウウ!》
「隙あり」
陽向の拳は集合体の腹部にあたる場所に入り、その体はばらばらと崩れていく。
「これって成仏ですかね…?」
「間に合った死霊たちはそういうことになるな」
「じゃあ、あの崩れてるのは…」
「そういうことになる」
一体何十年前から集め続けたらあんなことになるのか。
『何があった?』
「死霊の集合体と色々あった。解放できた相手もいるけど、何人かは霧散していった」
『…そうか。折原と岡副、少しだけ顔を出してもらえるか?』
「分かりました!保健室ですよね?」
『ああ』
先生の声のトーンが低くなる理由をなんとなく察した。
霧散した中に、写真で見た顔があったのだ。
「ここに写っている人間の中に該当者はいるか?」
「俺は成仏した方しかよく見ていなかったので…先輩?」
「…やっぱりか」
アルバムに写る何人かの写真を指さし、先生の問いに答えた。
「飛び散った中に、このメンバーがいた」
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