約束のスピカ

黒蝶

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追憶のシグナル

第4項

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「よくよく考えてみると、なんでも願いを叶えてくれるのに代償が伴わないはずないよね…」
オムライスを食べながら、陽向が苦笑いする。
私が疑問に思ったのはそこだった。
願いを叶えた人の話が一切ないので、もしかすると帰ってきた人が誰もいないのではないかと思ったのだ。
調べた結果、吊るされた男…この場合は性別関係ないカードが書かれていたのではないかと思っている。
「男女問わず、願いが叶うなら興味本位で行っちゃいそうだもんな…」
「それだけ結界が広いのかもしれない」
便宜上結界と呼んでいるその場所は、噂によって存在する怪異たちの住処だ。
噂ごとに別の場所にあって、雰囲気も全く違う。
外で戦うより自分の陣地で戦った方が力を発揮できるため、大半の怪異は自分から外に出ない。
「今回のは、呼び出し手順があるんだよね?」
「旧校舎じゃないと呼び出せないみたい」
「そっか。生きてる人間がほとんど出入りしてないだろうから、被害が少なくて助かるかも。
…間違っても願っちゃわないようにしないとね」
その言葉に頷きながら、いつの時代も似たような噂が流れることに乾いた笑いしか出なかった。
「…自分の言葉には、責任を持たないと」
「桜良?」
「なんでもない。支度してくる」
自分の部屋に戻ったものの、また昔のことを思い出して苦しくなる。
だけど、今回の噂はあの噂とは無関係だ。
それなのに、どうしてこんなに胸騒ぎがするんだろう。
ブレザーに袖を通して、そのまま部屋を出た。
「到着!相変わらず静かだね」
マンションに戻ることもあれば、こうして抜け道を使って学園内で過ごすこともある。
「今回もさくっと片づけよう」
「…死なないで」
「頑張るよ。俺も痛いの嫌だし…」
この頃の陽向は死ねなくなったばかりで、まだ苦痛の方が大きかったはずだ。
「じゃあ、そろそろ呼び出すよ」
その言葉に首を縦にふった。
5円玉にテグスを通し、振り子のように一定速度で動かしながら目を閉じる。
「どうか俺たちの願いを聞き届けてください」
本来であれば途中で目を開けると失敗すると言われているが、敢えて同時に目を開けた。
廊下だったはずのそこには自然が広がっていて、立派な大樹が根をはっている。
「あれが、吊るされた人々…」
《なんだ、人間か》
その声にはっとして、思わず身構えてしまう。
「なんでこんなことするんだ?人間が憎いのか?」
「いきなり訊いたら失礼…」
《俺はただ、人間たちの願いを聞き届けてやっただけだ。その代わりにあの子たちと遊んでもらっている》
案内人のような姿の人が現れて、大樹の方を指さす。
よく見ると、中には沢山の子どもたちがいるようだった。
…どうしてこんなに1ヶ所に死んだ子どもたちがまとまっているんだろう。
《お嬢さんの疑問に答えよう。…あの子たちは大樹に魅入られ、中から出られなくなってしまったのだ。
どんなに強い祓い屋たちも手の施しようがなく、もう何百年とそのままになっている》
心を読まれたのか、顔に出てしまっていたのか。
どのみち只者ではないと察知して、ポケットに入れていたお守りを握りしめた。
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