約束のスピカ

黒蝶

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追憶のシグナル

第17項

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《これでもう離れないわ。あなたが嫌がっても、どこまでだってついていくから》
《それはこっちのセリフだ。俺を選んだこと、後悔するなよ》
ようやく体に戻れたみこと狂った噂から解放された守り人は、ふたりとも満面の笑みを浮かべている。
もし救えなかったらどうしようと考えていたけれど、ふたりが落ち着いているのを見て安堵した。
「俺たちの出番はここまでかな。…疲れてない?」
「え、」
それ以上声が出なかった。
噂をまるごと変えるといつもこうなる。
やむを得なかったとはいえ、これでしばらく授業には出られないだろう。
《あなた…もしかして声が出ないの?》
「さっき噂を書き換えたから、一時的にダメージがきてるんだ。昔からなんだよ」
《そうか…。それは悪いことをした》
守り人の言葉に首を横にふる。
誰かに強要されたわけではなく、決めたのは私だ。
誰のことも責めるつもりはない。
それに、ふたりの幸せを取り戻すきっかけになれたならそれが1番だ。
《…そうだわ。会えるかどうか分からないけれど、友情の証に持っていって。こんなものしか用意できないけれど…困ったときはこの場所にいらっしゃい。
来られなくても、心のどこかで覚えていてもらえると嬉しいわ》
「……」
そう言って手渡されたのは、真新しい眼鏡。
かけているものとは別のものだけれど、なくても困らないのだろうか。
「…桜良が、自分がもらったら困るんじゃないかって戸惑ってる」
《平気よ。眼鏡はひとつあればいいもの》
みこはにこりと微笑んで、私の手に眼鏡を握らせてくれた。
《もし、少しでも違う世界を見てみたいと思ったらかけてみて。あなたが視えているものが全てとは限らないから》
神々しい笑みを浮かべるみこに微笑みかえそうとしたけれど、そこまで体力が持たなかった。
その場に崩れるように倒れる私を陽向が支えてくれる。
「……ら!?ごめ、もう──」
そこまでで私の意識はぷっつり途切れた。


──藤棚に囲まれた場所に、花開く大樹がそびえたっている。
すぐ近くに人影を確認して近づいてみると、みこが微笑みかけてくれた。
《ありがとう。あなたのおかげで悔いなく過ごせそうだわ。大樹に保護した子どもたちも喜んでいるの》
それが夢であることくらい分かる。
それでも、ここまでお礼を言いに来てくれた気持ちが嬉しかった。
なんとなくもう会えない気がして手を伸ばす。
みこを取り囲む子どもたちと一緒に手をふるのを見て、守り人が少し離れた場所で恥ずかしそうにはにかんでいるのが目に入る。
彼も心から笑えるようになったなら、本当によかった。
ふたりの幸せを願いながら目を閉じる。
隠しごとをしている私とは違う。
正面から向き合ったふたりは、今の私にとってあまりにも眩しすぎた。
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