泣けない、泣かない。

黒蝶

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泣けないver.

怖いもの

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そして放課後、部活動の生徒たちも帰った後。
「よし、それじゃあ行こうか。...この時間なら、本当に誰もいないはずだから」
本当はもっと早く学校を出るはずだったのだけれど、なかなか人が途切れる時間帯を見つけられなくて...結局遅くなってしまった。
「よし、乗って」
「...はい」
もう暗くなっているから、そう言って優翔は車に乗せてくれた。
いつもいつも、本当に助けられてばかりで...。
そんな私に何ができるだろう。
「ごめん、ちょっとだけ伏せてくれる?」
「こう...?」
車を横切ったのは、見覚えのある人たち。
その人たちはきゃっきゃっと騒ぎながら、窓を開けた優翔に話しかけている。
...だんだん吐き気がしてきた。気分が悪い。
どうして人にあんなことをしておいて、普通に振る舞えるのだろう。
「──おん、詩音?」
「あ...ごめんなさい」
「大丈夫?」
「うん。大、丈夫...」
だんだん息が苦しくなってきて、肺が押し潰されるような感覚に陥る。
駄目だ、苦しい。
「...ちょっと休もうか」
優翔は何かを察知してくれたのか、全くひとけがないところに車を停めてくれた。
「ちょっとだけ待っててね」
「...うん」
返事をするのも苦しくて、そのままぐったりとしてしまう。
下を向いていると、水を持った優翔が隣に座る。
「嫌なことを思い出しちゃった、よね...」
あやすように頭を撫でてくれる手は温かくて、そのまま眠ってしまいそうだ。
優翔の手をゆっくり掴むと、指を絡ませてくれる。
「ごめん、怖かったよね...」
「優翔はちゃんと先生をしただけだよ」
教師というものは一定の生徒には媚を売るものだと私は思っている。
けれど、そうじゃない先生が目の前にいるのだ。
...全員がそうだとは言い切れない。
「ごめんね。何も悪いことはしてないのに、こそこそ会うことしかできなくて...」
「側にいられる、それだけでいいの...。
周りから隠れなくちゃいけなくても、優翔がいてくれればそれでいい」
「...詩音のこと、大切だっていう気持ちは変わらないから」
周りには言えない、長い長いキス。
私が1番嫌なのは、こうして優翔と会うことができなくなることだ。
「だいぶ落ち着いたみたいでよかった。
...そろそろ行かないとね」
寂しいけれど、仕方ない。
家の近くでおろしてくれて、優翔はそのまま行ってしまった。
本当は家にも戻る場所なんてない。
けれど...これもきっと、仕方ないのだ。
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