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泣かないver.
不安な明日
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独りになると、どうしても明日のことを考えて不安になる。
登校前日はいつもこんな感じだ。
「久遠、大丈夫?」
「お母さん...私は大丈夫だよ。ご飯、ちゃんとできたかなって思っただけ」
「美味しいよ」
働いてくれている母に心配をかけるわけにはいかない。
私に対する不安も、仕事で時間がないことも...全部全部分かっている。
「それじゃあ、お母さん行ってくるね。...戸締まりはしっかりするように」
「うん。いってらっしゃい」
無我夢中で食器を洗って頭を空っぽにする。
どうしても不安になってしまうときは、いつもそうしてきた。
本を読んだりなんでもいいから綴ってみたり。
そうすることで、人に迷惑をかけずに嫌なことを忘れられるのだ。
その間だけでもなんとか忘れていたかった。
そうじゃないと、心が押し潰されてしまうようで...けれど、本の世界に潜りこむのも気が休まらないことがある。
(主人公に感情移入しすぎたかな...)
涙が溢れて止まらない。
こうなってしまうと、しばらくは気分が落ちこむ。
「...お風呂入ろう」
誰に言うでもなくぽつりと呟く。
寧ろ誰かいたら、こんなふうに心穏やかに過ごすことはきっとできなかっただろう。
(久しぶりに学校とは無関係の教科でも勉強しようかな)
私はどちらかと言えば理数系で、数学が大好きだった。
教科書の問題を解いていると楽しくて時間を忘れてしまいそうになる。
本当に楽しいし、誰からも干渉されないのがとても幸せだ。
最近になってやっと心地よい人と過ごす時間というものが増えたけれど、それまでは人と会うだけで苦痛だった。
相手に合わせて、不快な思いをさせないように気をつけて...。
そんなに気にしなくてもいいと言ってくれたのが大翔だ。
今のところは詩音や優翔さんにもそんなに気を遣っていない...はず。
そのとき、スマートフォンが揺れはじめた。
「もしもし」
『あれ、久遠さん?ごめん、間違えちゃったみたい...』
「もしかして、詩音にかけようと?」
『そうなんだけど、テレビ電話のやり方が分からなくて。さっきから違う人にかけ続けてる』
「それなら、まずはかけたい相手の画面を開いて...」
できるだけ分かりやすく説明したつもりだけれど、大丈夫だっただろうか。
色んなことを不安に思いながらも、なんとか少しずつ説明していく。
『ありがとう。すごく分かりやすかったよ』
「それならよかった...それじゃあ、おやすみなさい」
優翔さんのありがとうはなんだか優しい響きで、相手を傷つけなかったのだとほっとした。
(ちょっとだけ疲れちゃったな...)
飲み物でも飲もうなんて考えていると、再びスマートフォンが揺れる。
画面に表示された名前は大翔だった。
登校前日はいつもこんな感じだ。
「久遠、大丈夫?」
「お母さん...私は大丈夫だよ。ご飯、ちゃんとできたかなって思っただけ」
「美味しいよ」
働いてくれている母に心配をかけるわけにはいかない。
私に対する不安も、仕事で時間がないことも...全部全部分かっている。
「それじゃあ、お母さん行ってくるね。...戸締まりはしっかりするように」
「うん。いってらっしゃい」
無我夢中で食器を洗って頭を空っぽにする。
どうしても不安になってしまうときは、いつもそうしてきた。
本を読んだりなんでもいいから綴ってみたり。
そうすることで、人に迷惑をかけずに嫌なことを忘れられるのだ。
その間だけでもなんとか忘れていたかった。
そうじゃないと、心が押し潰されてしまうようで...けれど、本の世界に潜りこむのも気が休まらないことがある。
(主人公に感情移入しすぎたかな...)
涙が溢れて止まらない。
こうなってしまうと、しばらくは気分が落ちこむ。
「...お風呂入ろう」
誰に言うでもなくぽつりと呟く。
寧ろ誰かいたら、こんなふうに心穏やかに過ごすことはきっとできなかっただろう。
(久しぶりに学校とは無関係の教科でも勉強しようかな)
私はどちらかと言えば理数系で、数学が大好きだった。
教科書の問題を解いていると楽しくて時間を忘れてしまいそうになる。
本当に楽しいし、誰からも干渉されないのがとても幸せだ。
最近になってやっと心地よい人と過ごす時間というものが増えたけれど、それまでは人と会うだけで苦痛だった。
相手に合わせて、不快な思いをさせないように気をつけて...。
そんなに気にしなくてもいいと言ってくれたのが大翔だ。
今のところは詩音や優翔さんにもそんなに気を遣っていない...はず。
そのとき、スマートフォンが揺れはじめた。
「もしもし」
『あれ、久遠さん?ごめん、間違えちゃったみたい...』
「もしかして、詩音にかけようと?」
『そうなんだけど、テレビ電話のやり方が分からなくて。さっきから違う人にかけ続けてる』
「それなら、まずはかけたい相手の画面を開いて...」
できるだけ分かりやすく説明したつもりだけれど、大丈夫だっただろうか。
色んなことを不安に思いながらも、なんとか少しずつ説明していく。
『ありがとう。すごく分かりやすかったよ』
「それならよかった...それじゃあ、おやすみなさい」
優翔さんのありがとうはなんだか優しい響きで、相手を傷つけなかったのだとほっとした。
(ちょっとだけ疲れちゃったな...)
飲み物でも飲もうなんて考えていると、再びスマートフォンが揺れる。
画面に表示された名前は大翔だった。
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