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クロス×ストーリー(通常運転のイベントもの多め)
クリスマス-泣けないver.-
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大翔と久遠さんの後ろ姿を見送って、詩音はただ呆然としていた。
「...まさかこんなことになるなんてね」
「私、帰った方がいい?」
目の前の華奢な体を抱きしめ、そのまま一息に告げた。
「帰らないで。本当はこうやって直接会いたかった」
「...私も」
涙声が聞こえたかと思うと、そのまま背中に腕を回される。
「本当は、私も直接抱きしめてほしかった。手を繋ぐだけでもいいから、ご飯を食べるだけでもいいから...一緒にいたかった」
語られる真っ直ぐな想いに、かなり寂しい思いをさせたのだと反省した。
詩音は物分かりがとてもいい。
だから僕は、いつだってそこに甘えすぎていたのだと思う。
「詩音」
「は、はい」
「...行かないで」
「うん」
「ふたりでご飯、食べようか。まだ食べ終わってないし...」
「そうだね」
なんとなく緊張してしまうのを感じながら、ふたりで隣りあって食事を続ける。
「このローストビーフ、柔らかい...。どうやって作ったの?」
「フライパンでやっただけだよ。こっちのブッシュ・ド・ノエルは詩音が持ってきたものでしょ?」
「普通のケーキより、こっちの方がクリスマスっぽいのかなって...」
ぎこちない会話だが、そこから少しずついつもどおりになっていく。
しばらく話した後、そっと小箱を差し出す。
「直接渡せてよかった...。受け取ってくれる?」
「ありがとう。それから、えっと...私のも受け取ってほしい、です」
少し大きめの箱を渡され、一瞬戸惑う。
もしかすると、かなり気を遣わせてしまったのではないかと。
「開けてもいい?」
「勿論。私も開けちゃおうかな...」
そこには、どこにでも身につけて行けそうなネクタイとデザインも使い勝手もよさそうなハンカチが入っていた。
「まさか会えただけじゃなくてプレゼントまでもらえるなんて、すごく嬉しいな...ありがとう」
「私も、ありがとう」
詩音に贈ったのは新しいノートとウサギのマスコットがついたキーホルダーだ。
どちらも学校に持っていけるだろうからと、悩んだ挙げ句渡すことにした。
「...ねえ、優翔」
「どうしたの?」
「来年も再来年も、その次も...ずっとこうやって過ごしていけるかな?」
「次はもっと違う過ごし方をしたいな。...ふたりきりでパーティーをしよう。
ここじゃなくて、僕の家で会いたい」
詩音はそうだねと答えてくれた。
ずっと死の淵にいるような表情をしていた彼女と、未来の話をしている。
それだけで充分だ。
必ず現実のものにしてみせよう、そう思いながらそっと口づける。
外では雪がちらついているが、そんなことは僕たちには関係ない。
──ふたりで過ごす少し先の未来が楽しみになった。
「...まさかこんなことになるなんてね」
「私、帰った方がいい?」
目の前の華奢な体を抱きしめ、そのまま一息に告げた。
「帰らないで。本当はこうやって直接会いたかった」
「...私も」
涙声が聞こえたかと思うと、そのまま背中に腕を回される。
「本当は、私も直接抱きしめてほしかった。手を繋ぐだけでもいいから、ご飯を食べるだけでもいいから...一緒にいたかった」
語られる真っ直ぐな想いに、かなり寂しい思いをさせたのだと反省した。
詩音は物分かりがとてもいい。
だから僕は、いつだってそこに甘えすぎていたのだと思う。
「詩音」
「は、はい」
「...行かないで」
「うん」
「ふたりでご飯、食べようか。まだ食べ終わってないし...」
「そうだね」
なんとなく緊張してしまうのを感じながら、ふたりで隣りあって食事を続ける。
「このローストビーフ、柔らかい...。どうやって作ったの?」
「フライパンでやっただけだよ。こっちのブッシュ・ド・ノエルは詩音が持ってきたものでしょ?」
「普通のケーキより、こっちの方がクリスマスっぽいのかなって...」
ぎこちない会話だが、そこから少しずついつもどおりになっていく。
しばらく話した後、そっと小箱を差し出す。
「直接渡せてよかった...。受け取ってくれる?」
「ありがとう。それから、えっと...私のも受け取ってほしい、です」
少し大きめの箱を渡され、一瞬戸惑う。
もしかすると、かなり気を遣わせてしまったのではないかと。
「開けてもいい?」
「勿論。私も開けちゃおうかな...」
そこには、どこにでも身につけて行けそうなネクタイとデザインも使い勝手もよさそうなハンカチが入っていた。
「まさか会えただけじゃなくてプレゼントまでもらえるなんて、すごく嬉しいな...ありがとう」
「私も、ありがとう」
詩音に贈ったのは新しいノートとウサギのマスコットがついたキーホルダーだ。
どちらも学校に持っていけるだろうからと、悩んだ挙げ句渡すことにした。
「...ねえ、優翔」
「どうしたの?」
「来年も再来年も、その次も...ずっとこうやって過ごしていけるかな?」
「次はもっと違う過ごし方をしたいな。...ふたりきりでパーティーをしよう。
ここじゃなくて、僕の家で会いたい」
詩音はそうだねと答えてくれた。
ずっと死の淵にいるような表情をしていた彼女と、未来の話をしている。
それだけで充分だ。
必ず現実のものにしてみせよう、そう思いながらそっと口づける。
外では雪がちらついているが、そんなことは僕たちには関係ない。
──ふたりで過ごす少し先の未来が楽しみになった。
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