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泣けないver.
大切な君へ
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「詩音は温かいね」
「そうかな...?」
「僕にとってはそうだよ」
少し恥ずかしいような会話だって、詩音とならできる。
この胸にある想いをできるだけ沢山伝えたくて、なんとか言葉を繋ごうと話してみた。
「詩音が好きで大切だから、これから先もこんなふうに一緒に過ごす時間があると嬉しいな」
「...私も、その時間を望んでいい?」
「ふたりで望めばきっと大丈夫だよ」
何が大丈夫なのか自分でもよく分からないけど、とにかく少しでも安心して過ごしてほしかった。
この日の夜も一緒に寝ることになり、ふたりで布団に入る。
「そのぬいぐるみ、そんなに気に入ってくれるとは思わなかった」
「もふもふで触り心地がよくて可愛いから持っていたいなって...変かな?」
「ううん、寧ろそうやって気に入ってもらえたなら嬉しいな」
ラピスラズリのブレスレットも丁寧に箱に仕舞われていて、喜んでもらえたのだとようやく実感がわいてきた。
だが、詩音の表情は曇ったままだ。
「どうかしたの?」
「...明日は、帰らないといけないんだなって思って」
流石に何日も泊めるわけにはいかず、1度帰すことにしたのだ。
本当ならこのまま一緒に住めればいいと思うけど、それでは詩音の意思に反する。
『家族で過ごした大切な家を護りたい』...そう思える場所があるのは、とても幸せなことだ。
僕は大翔とふたりでひたすら耐えてきた。
ようやく大学に入り、アルバイトを少しずつできるようになって...週末に大翔を呼ぶようにしてあの場所には近づかないようにしていたのは記憶に新しい。
全然顔を合わせてもいないが、あの人たちは元気にやっているのだろうか。
...そもそも、誰かあの場所に住んでいるのかさえ疑問だ。
「ねえ、優翔」
「どうしたの?」
「また夜、電話を掛けたりしてもいい?」
「勿論だよ。都合が悪い時間だったときはこっちから折り返すね」
「...ありがとう」
詩音を独りにしてしまえば、彼女はきっと雪のように消えてしまう。
今は連絡を取り合うくらいしか手段がないのだ...残念ながら。
「眠れない?」
「...うん。やっぱり不安で」
「それじゃあまた夜ふかししようか」
「いいの?」
「僕はまだ眠くないから大丈夫だよ。詩音は?」
「夜ふかししたい。...誰かと一緒に過ごせるなんて、滅多にないから」
結局ふたりでベッドを抜け出し、そのまま深夜のティータイムがはじまる。
僕にとっては楽しい時間だが、詩音にとってはどうなのだろう。
色々なお菓子を並べながら、ふたりで紅茶の味を楽しむ。
「...やっぱりいつもより美味しい気がする」
「僕もそんな気がするよ」
つい先程までふたりで見つめあっていたはずなのに、いつの間にか自然に唇が重なっていた。
少し恥ずかしく思いながら、冷えた彼女に口づける。
このまま熱と一緒に想いも伝わってくれないだろうか...そんなことを祈りながら。
空では鏡のような月が輝いていて、それがとにかく綺麗だった。
「そうかな...?」
「僕にとってはそうだよ」
少し恥ずかしいような会話だって、詩音とならできる。
この胸にある想いをできるだけ沢山伝えたくて、なんとか言葉を繋ごうと話してみた。
「詩音が好きで大切だから、これから先もこんなふうに一緒に過ごす時間があると嬉しいな」
「...私も、その時間を望んでいい?」
「ふたりで望めばきっと大丈夫だよ」
何が大丈夫なのか自分でもよく分からないけど、とにかく少しでも安心して過ごしてほしかった。
この日の夜も一緒に寝ることになり、ふたりで布団に入る。
「そのぬいぐるみ、そんなに気に入ってくれるとは思わなかった」
「もふもふで触り心地がよくて可愛いから持っていたいなって...変かな?」
「ううん、寧ろそうやって気に入ってもらえたなら嬉しいな」
ラピスラズリのブレスレットも丁寧に箱に仕舞われていて、喜んでもらえたのだとようやく実感がわいてきた。
だが、詩音の表情は曇ったままだ。
「どうかしたの?」
「...明日は、帰らないといけないんだなって思って」
流石に何日も泊めるわけにはいかず、1度帰すことにしたのだ。
本当ならこのまま一緒に住めればいいと思うけど、それでは詩音の意思に反する。
『家族で過ごした大切な家を護りたい』...そう思える場所があるのは、とても幸せなことだ。
僕は大翔とふたりでひたすら耐えてきた。
ようやく大学に入り、アルバイトを少しずつできるようになって...週末に大翔を呼ぶようにしてあの場所には近づかないようにしていたのは記憶に新しい。
全然顔を合わせてもいないが、あの人たちは元気にやっているのだろうか。
...そもそも、誰かあの場所に住んでいるのかさえ疑問だ。
「ねえ、優翔」
「どうしたの?」
「また夜、電話を掛けたりしてもいい?」
「勿論だよ。都合が悪い時間だったときはこっちから折り返すね」
「...ありがとう」
詩音を独りにしてしまえば、彼女はきっと雪のように消えてしまう。
今は連絡を取り合うくらいしか手段がないのだ...残念ながら。
「眠れない?」
「...うん。やっぱり不安で」
「それじゃあまた夜ふかししようか」
「いいの?」
「僕はまだ眠くないから大丈夫だよ。詩音は?」
「夜ふかししたい。...誰かと一緒に過ごせるなんて、滅多にないから」
結局ふたりでベッドを抜け出し、そのまま深夜のティータイムがはじまる。
僕にとっては楽しい時間だが、詩音にとってはどうなのだろう。
色々なお菓子を並べながら、ふたりで紅茶の味を楽しむ。
「...やっぱりいつもより美味しい気がする」
「僕もそんな気がするよ」
つい先程までふたりで見つめあっていたはずなのに、いつの間にか自然に唇が重なっていた。
少し恥ずかしく思いながら、冷えた彼女に口づける。
このまま熱と一緒に想いも伝わってくれないだろうか...そんなことを祈りながら。
空では鏡のような月が輝いていて、それがとにかく綺麗だった。
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