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黒蝶

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芽生えた想いの章

隠し事

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「...春海、本当なの?」
「どうして話しちゃったの?」

西澤夏希の動揺と佐野春海の哀しみを感じる。
...僕は言葉を間違えたのだろうか。

「君は彼の苦しみを知ったから、ついていこうって思ったんでしょ?
だったら、君のことを何も知らないなんて残酷なんじゃないかな」
「それはそうかもしれないけど...」
「春海、どういうことなのかちゃんと説明して」

西澤夏希の真剣な瞳が僕を射抜く。
そしてそのまま彼に頭をさげられた。

「少しだけ、二人で話をさせてもらえないだろうか」
「...分かった。それじゃあ僕は少し離れたところで待ってる。
終わったら呼んで」

二人に背を向け、雪芽の側まで小走りで駆け寄る。
彼女の表情は少しだけ曇っていた。

「柊、大丈夫...?」





「僕は大丈夫だよ。それより、体調が悪いの...?」
「ううん。そうじゃなくて、柊が傷ついているように見えたから、その...」

言葉に詰まった私を見て、柊はただ頭を撫でてくれた。
それから、天使のような笑顔で私を抱きしめる。

「大丈夫だった、はずなんだけど...今だけこうさせて」
「柊...」

誰だって、大丈夫じゃないことがある。
それはきっと、天使だろうと悪魔だろうと...目の前の死神だろうと同じなのだ。





「...私、ずっと嫌がらせを受けてたの」
「全然知らなくてごめん。だから毒なんて手に入りそうにないものを持ってたんだね...」
「気にしないで。私はただ、夏希の側にいたかっただけなの」

しょんぼりしている夏希を元気づけたくて、とにかく明るく振る舞う。
嘘っぽく見えるかもしれないけど、それでもいい。
私はただ彼の側にいられたらそれでいい...たとえどんなに嫌われたとしても、近くにいられればそれだけでいいのだ。

「...あの死神?って、すごくいい人だね。俺は赦されない選択をしたはずなのに...どうしてなんだろう」
「私も、赦されないことをしていたはずなのに...ごめんなさい」
「君は何も悪いことなんてしてないでしょ?俺につきあわせて...」

夏希はいつも笑って許してくれる。
けれど、最後くらいはちゃんと話してみようと心に決めた。

「違うの。さっきあなたが言ったとおり、私はいつでも死ねるように毒を持ってた。
...立場を利用して」
「春海...」

夏希は何も悪くない。
それだけはちゃんと伝えたいと思う。

「それじゃあ、これからちゃんと話すから聞いてくれる?」
「...うん」

私はひと呼吸おいて、そのまま話しはじめた。

「私、ある子の助けになりたかったの。
それで、相談に乗ってたら...」

──思い出したくないけど、そのまま隠してなんておけない。
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