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芽生えた想いの章
隠し事
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「...春海、本当なの?」
「どうして話しちゃったの?」
西澤夏希の動揺と佐野春海の哀しみを感じる。
...僕は言葉を間違えたのだろうか。
「君は彼の苦しみを知ったから、ついていこうって思ったんでしょ?
だったら、君のことを何も知らないなんて残酷なんじゃないかな」
「それはそうかもしれないけど...」
「春海、どういうことなのかちゃんと説明して」
西澤夏希の真剣な瞳が僕を射抜く。
そしてそのまま彼に頭をさげられた。
「少しだけ、二人で話をさせてもらえないだろうか」
「...分かった。それじゃあ僕は少し離れたところで待ってる。
終わったら呼んで」
二人に背を向け、雪芽の側まで小走りで駆け寄る。
彼女の表情は少しだけ曇っていた。
「柊、大丈夫...?」
*
「僕は大丈夫だよ。それより、体調が悪いの...?」
「ううん。そうじゃなくて、柊が傷ついているように見えたから、その...」
言葉に詰まった私を見て、柊はただ頭を撫でてくれた。
それから、天使のような笑顔で私を抱きしめる。
「大丈夫だった、はずなんだけど...今だけこうさせて」
「柊...」
誰だって、大丈夫じゃないことがある。
それはきっと、天使だろうと悪魔だろうと...目の前の死神だろうと同じなのだ。
★
「...私、ずっと嫌がらせを受けてたの」
「全然知らなくてごめん。だから毒なんて手に入りそうにないものを持ってたんだね...」
「気にしないで。私はただ、夏希の側にいたかっただけなの」
しょんぼりしている夏希を元気づけたくて、とにかく明るく振る舞う。
嘘っぽく見えるかもしれないけど、それでもいい。
私はただ彼の側にいられたらそれでいい...たとえどんなに嫌われたとしても、近くにいられればそれだけでいいのだ。
「...あの死神?って、すごくいい人だね。俺は赦されない選択をしたはずなのに...どうしてなんだろう」
「私も、赦されないことをしていたはずなのに...ごめんなさい」
「君は何も悪いことなんてしてないでしょ?俺につきあわせて...」
夏希はいつも笑って許してくれる。
けれど、最後くらいはちゃんと話してみようと心に決めた。
「違うの。さっきあなたが言ったとおり、私はいつでも死ねるように毒を持ってた。
...立場を利用して」
「春海...」
夏希は何も悪くない。
それだけはちゃんと伝えたいと思う。
「それじゃあ、これからちゃんと話すから聞いてくれる?」
「...うん」
私はひと呼吸おいて、そのまま話しはじめた。
「私、ある子の助けになりたかったの。
それで、相談に乗ってたら...」
──思い出したくないけど、そのまま隠してなんておけない。
「どうして話しちゃったの?」
西澤夏希の動揺と佐野春海の哀しみを感じる。
...僕は言葉を間違えたのだろうか。
「君は彼の苦しみを知ったから、ついていこうって思ったんでしょ?
だったら、君のことを何も知らないなんて残酷なんじゃないかな」
「それはそうかもしれないけど...」
「春海、どういうことなのかちゃんと説明して」
西澤夏希の真剣な瞳が僕を射抜く。
そしてそのまま彼に頭をさげられた。
「少しだけ、二人で話をさせてもらえないだろうか」
「...分かった。それじゃあ僕は少し離れたところで待ってる。
終わったら呼んで」
二人に背を向け、雪芽の側まで小走りで駆け寄る。
彼女の表情は少しだけ曇っていた。
「柊、大丈夫...?」
*
「僕は大丈夫だよ。それより、体調が悪いの...?」
「ううん。そうじゃなくて、柊が傷ついているように見えたから、その...」
言葉に詰まった私を見て、柊はただ頭を撫でてくれた。
それから、天使のような笑顔で私を抱きしめる。
「大丈夫だった、はずなんだけど...今だけこうさせて」
「柊...」
誰だって、大丈夫じゃないことがある。
それはきっと、天使だろうと悪魔だろうと...目の前の死神だろうと同じなのだ。
★
「...私、ずっと嫌がらせを受けてたの」
「全然知らなくてごめん。だから毒なんて手に入りそうにないものを持ってたんだね...」
「気にしないで。私はただ、夏希の側にいたかっただけなの」
しょんぼりしている夏希を元気づけたくて、とにかく明るく振る舞う。
嘘っぽく見えるかもしれないけど、それでもいい。
私はただ彼の側にいられたらそれでいい...たとえどんなに嫌われたとしても、近くにいられればそれだけでいいのだ。
「...あの死神?って、すごくいい人だね。俺は赦されない選択をしたはずなのに...どうしてなんだろう」
「私も、赦されないことをしていたはずなのに...ごめんなさい」
「君は何も悪いことなんてしてないでしょ?俺につきあわせて...」
夏希はいつも笑って許してくれる。
けれど、最後くらいはちゃんと話してみようと心に決めた。
「違うの。さっきあなたが言ったとおり、私はいつでも死ねるように毒を持ってた。
...立場を利用して」
「春海...」
夏希は何も悪くない。
それだけはちゃんと伝えたいと思う。
「それじゃあ、これからちゃんと話すから聞いてくれる?」
「...うん」
私はひと呼吸おいて、そのまま話しはじめた。
「私、ある子の助けになりたかったの。
それで、相談に乗ってたら...」
──思い出したくないけど、そのまま隠してなんておけない。
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