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選択の章
最後の審判
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「そうだよ。僕はかつて君にトピーと呼ばれていた者だ。
...あのときから、君の優しさは変わらないね」
「どうして...」
あの頃はまだ未熟者で、人らしい姿をしてはならないと言われていた。
だからああして、猫の姿になって人間と関わることにしたのだ。
「僕はあのとき、車に轢かれた。黴菌だらけだとか散々言われたり、可哀想と言って通りすぎたり...。
でも、君だけは僕を助けてくれた。いつかお礼をしようって思っていた」
「...」
「でも、もうそろそろ実践してもらうって連れ戻されたんだ。
それからは猫の姿になったことはない。
...もしかすると、僕はあのときから君のことが好きだったのかもしれない」
認めよう。
これが僕にとっての、『たったひとつの愛』だと。
*
次々と明かされる真相に、私はただ立ち尽くすことしかできない。
生きているときも、選択した後も...私には、ずっとずっと柊が側にいた。
ずっとずっと、独りではなかったのだ。
「柊、私...」
隠し続けようと決めていた、気づかないふりをしていた想いを伝えよう。
「私も、柊が好き。ずっとずっと、好きだった...。
だけど、もし伝えて嫌われたらどうしようって思うと言えなくて...結局今日までかかっちゃった」
「雪芽...」
そう、私はただ怖かった。
また独りになりたくなくて、柊の隣にいたくて。
いつも護られてばかりではいられない。
...今度は私の番だ。
「答えは決まりましたか?」
「お願いします、私を消してください。柊を傷つけることは絶対にさせない」
「...そうですか。では、」
「雪芽!」
最期に名前を呼んでもらえてよかった。
もう充分、幸せをもらったから...それを返さなくちゃいけない。
──やっぱり、死ぬのは怖いな。
そう思ったとき、いつも身につけているブレスレットが光りだした。
**
「副長、何を...」
今にも消えそうなほど透き通っている雪芽の体を思いきり抱きしめる。
僕だって消えるのは嫌だ。
だが、どちらかがそうならなければならないのだというのなら。
「これから僕は、第三の選択をすることにするよ。
彼女は必死に生きたのに、みんな無関心だったじゃないか!だから...」
どうか、死を選択するほど苦しんだ彼女を消さないで。
...お守り代わりにとあげたブレスレットを持っていてくれてよかった。
一か八か...失敗しても僕が消えるだけだ。
「副長、あなたは何故そのようなことを...」
「君ももっと人間を知れば、分かるようになるんじゃないかな」
「...ひ、らぎ?」
恐怖を悟られないように、僕はただ笑ってみせた。
「雪芽...僕を助けてくれてありがとう。これは、僕からのプレゼントだよ」
そっと口づけると、目から雫が流れていることに気づく。
これが、嬉しくて涙が出るという感覚...。
僕の生命とたったひとつの愛の力を注ぎこむように、何度か冷たくなっている唇に唇を重ねた。
──最期になるかもしれないこのときに、沢山のことを知れてよかった。
...あのときから、君の優しさは変わらないね」
「どうして...」
あの頃はまだ未熟者で、人らしい姿をしてはならないと言われていた。
だからああして、猫の姿になって人間と関わることにしたのだ。
「僕はあのとき、車に轢かれた。黴菌だらけだとか散々言われたり、可哀想と言って通りすぎたり...。
でも、君だけは僕を助けてくれた。いつかお礼をしようって思っていた」
「...」
「でも、もうそろそろ実践してもらうって連れ戻されたんだ。
それからは猫の姿になったことはない。
...もしかすると、僕はあのときから君のことが好きだったのかもしれない」
認めよう。
これが僕にとっての、『たったひとつの愛』だと。
*
次々と明かされる真相に、私はただ立ち尽くすことしかできない。
生きているときも、選択した後も...私には、ずっとずっと柊が側にいた。
ずっとずっと、独りではなかったのだ。
「柊、私...」
隠し続けようと決めていた、気づかないふりをしていた想いを伝えよう。
「私も、柊が好き。ずっとずっと、好きだった...。
だけど、もし伝えて嫌われたらどうしようって思うと言えなくて...結局今日までかかっちゃった」
「雪芽...」
そう、私はただ怖かった。
また独りになりたくなくて、柊の隣にいたくて。
いつも護られてばかりではいられない。
...今度は私の番だ。
「答えは決まりましたか?」
「お願いします、私を消してください。柊を傷つけることは絶対にさせない」
「...そうですか。では、」
「雪芽!」
最期に名前を呼んでもらえてよかった。
もう充分、幸せをもらったから...それを返さなくちゃいけない。
──やっぱり、死ぬのは怖いな。
そう思ったとき、いつも身につけているブレスレットが光りだした。
**
「副長、何を...」
今にも消えそうなほど透き通っている雪芽の体を思いきり抱きしめる。
僕だって消えるのは嫌だ。
だが、どちらかがそうならなければならないのだというのなら。
「これから僕は、第三の選択をすることにするよ。
彼女は必死に生きたのに、みんな無関心だったじゃないか!だから...」
どうか、死を選択するほど苦しんだ彼女を消さないで。
...お守り代わりにとあげたブレスレットを持っていてくれてよかった。
一か八か...失敗しても僕が消えるだけだ。
「副長、あなたは何故そのようなことを...」
「君ももっと人間を知れば、分かるようになるんじゃないかな」
「...ひ、らぎ?」
恐怖を悟られないように、僕はただ笑ってみせた。
「雪芽...僕を助けてくれてありがとう。これは、僕からのプレゼントだよ」
そっと口づけると、目から雫が流れていることに気づく。
これが、嬉しくて涙が出るという感覚...。
僕の生命とたったひとつの愛の力を注ぎこむように、何度か冷たくなっている唇に唇を重ねた。
──最期になるかもしれないこのときに、沢山のことを知れてよかった。
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