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1章
異質な気配と古代魔法具
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シルフィさんとウェイルさんに同行する形で、異質な気配のする部屋へと向かう途中、周囲を見回してみますと。
今歩いている場所は石壁で囲われた大広間のようで、少し遠くに入口らしき扉が見えました。そして大広間を挟むように小部屋が左右に二部屋ずつあり、私は左側の一室に転移していたようです。異質な気配は正反対にある右側の小部屋から感じています。
まるでこの後、何かが出てくる直前のような、そんな不気味な空気が辺り一帯に漂っていて、少々怖いです。隣を歩いている二人は特に恐怖的な物は感じていないようですので、私が単に怖がりなだけなのでしょうけれど。
怖いながらも光が届く範囲の様子を伺っていた私は、「古代魔法具庫」の作りを大まかに理解できたと感じた時。
「ちょっと貴女、あまりくっつかないで下さいですの!」
「……あ、ご、御免なさい。とても怖いのでつい……」
ライトウィスプの効果範囲は決して狭い訳では無いのですれど、無意識にシルフィさんに寄り添ってしまいました。つい先程までは隣にイグニシアさんとミツキさんが居てくれましたので、今は居ないという寂しい気持ちが行動に現れてしまったのでしょうか。二人とも、きっと心配していますよね……。
「人ならざる者にしては、妙な弱点ですわね……。ま、まぁ少しくらいでしたら、近くにいてもいいですわ」
「有難うございます、シルフィさん。お言葉に甘えますね」
笑顔で感謝の気持ちを伝えました。隣に誰かが居てくれますと、安心出来てとても嬉しいのです。シルフィさんはコホンと咳払いをした後、プイっとそっぽを向いてしまいました。決して嫌がっている風では無いようですが、少々照れている様子です。これが本来のシルフィさんなのでしょう。
そんなシルフィさんは、膝上の赤い魔術師風のワンピースを着ていて、私と余り背丈は変わらない可愛らしい女の子です。ちょっぴり私よりも歳上に見えますが、それ程の差は無いように思います。
シルフィさんを中心に挟む形で歩いていたウェイルさんは、肩にマントを羽織り、青色を基調とした騎士さんの正装をしていて腰に二本帯剣しています。先ほど騎士団長さんをなされているとお聞きしましたけれど、それも納得してしまう服装なのです。
私の視線に感づいたのでしょうか。ウェイルさんが此方を向き、柔らかな笑顔で「どうかしたかい?」と聞いてきましたので、私は慌てて地面に顔を向けてしまいました。冷静を装って「何でもありません」と返答をしておきましたけれど、不自然ですよね……。
「二人とも、小部屋の入り口ですわよ」
シルフィさんの言葉に合わせて小部屋を確認しますと、私が転移してきた左側と作りは変わらない様子なのですが……中を覗くのは少々躊躇いがあります。
そんな私の気持ちを察してくれたかのように、ウェイルさんが数歩前に出て。
「僕がもう一度中を見てこよう。二人は僕が合図するまで待ってて」
「解りましたわ。それとウェイル、無警戒で居るのも程々になさいませ」
「うん、解っているよ」
ウェイルさんは腰の剣に手を添えますと、先程までの柔らかな印象から、静かな水面を思わせるような、研ぎ澄まされた印象へと変わり、ゆっくり小部屋へと近づいて行きます。私には武器を直接扱う技量はありませんけれど、それが「隙の無い状態」だと言う事は解ります。
小部屋の入口に立ったウェイルさんは中の様子を確認した所で、静かな水面に波紋が広がったかのような焦りを感じている様子です。小部屋の中で何を見たのでしょうか?
「……二人共、小部屋の中を見てくれ」
「どうしましたの?」
ウェイルさんの言葉に警戒しつつ、シルフィさんと一緒に小部屋へと近づき、中を確認した所……。
「な、なんですの……あれは」
「……水晶?」
小部屋の中心に、大きな丸い水晶が浮いていました。そして、その水晶の周りを様々な古代魔法具が円を描くように回っています。
「僕が珍しいと感じて鑑賞していたのがあの大きな水晶だったんだ。さっきまでは部屋の隅に転がっていた筈だけど……」
「まさか、作動していますの?」
古代魔法具が作動するという事は、異常な効果を周囲に及ぼす可能性がある事を意味しています。その効果は古代魔法具によって様々なようですけれど、殺傷力が高いと言う点では共通していると思われます。
「これは……ちょっと不味いかもしれないね」
「ど、どうしますの!? 「お姉様」達は本国にいますから、助力は得られませんわよ!」
「……」
私達はこの部屋で何が起きているのか理解出来ないまま、如何するべきか悩んでおりますと。
次第に周りを回っていた古代魔法具は吸い寄せられるように、水晶の中へと消えていきました。
「これは……」
「水晶が古代魔法具を吸収……したんですの?」
周囲の古代魔法具を吸い込んだ水晶が突如輝き始め、眩い光を放ちました。
「くっ……一体何が」
「……っ」
眩しさから手で目を覆いながら様子を見ていますと、水晶が光の中に消えて無くなりました。
ですがその代わり、光が徐々に収束していくと同時に、「黒いドレスの女の子」がその場に現れたのです。
見た目は子供で、黒とも紫とも言える、ダークパープルの長い髪をしています。
異質な気配はこの子の物だと言う事は直ぐに解りました。目を瞑って立っていた黒いドレスの女の子は、次第にゆっくりと目を開けて、視線を此方へと向けました。
「……人間」
そう一言、黒いドレスの女の子が喋った瞬間。
急激な死への恐怖が沸き起こり、ここに居たら死ぬ、という直感が働きました。
「皆さんここから離れて!!!」
私の叫びと共に小部屋から三人揃って出ると同時に……一直線に「光の帯」が伸びて、入り口付近の壁をたやすく貫通し、大きな横穴を開けました。その穴は人が通れる程の大きさです。
私は生まれて初めて「死ぬ恐怖」を感じました。黒いドレスの女の子は何の躊躇いも無く私達を殺そうとしたのです。その唐突さに、私は力を使う余裕すらありませんでした……。
小部屋から離れて大広間へと逃げた私達は、余りに不可解な出来事に戸惑いを隠せません。不可解の塊である私ですら、異常な事だと認識するくらいですもの……。
「魔力が一切感じられませんのに、この異常な力は何ですの……。そもそも、あの子は一体何なんですの!?」
シルフィさんの問いかけに誰も答える事は出来ません。……けれど。
「解らないけど、このまま「あの子」を放って置くべきじゃ無いって事だけは解るかな」
「私も同意見です。私達のお話を聞いてくれればいいのですけれど……」
殺されかけましたけれど、穏便に済むならそれに越した事はありません。
ですが、そんな私の思惑通りにはいかない様子です。やがて黒いドレスの女の子がゆっくりと小部屋から出てきますと、すぐさま「光の帯」が私達へと放たれ、辛うじてそれをかわします。
「あの子は私達のお話を聞くつもりは一切無いようですわよ……」
「悲しいですが、そのようですね……」
悠長に話しかけている間に、一瞬で死んでしまう可能性があります。
それにこのまま黒いドレスの女の子に攻撃を許していますと、「古代魔法具庫」が壊れる所か、このダンジョンその物が危険ですね。ミツキさんなら、この場合どうしていたのでしょうか……。
「あの謎の光は多分、防げない気がする。防いでいる間に語り掛ける事も出来そうに無いね……」
ウェイルさんの判断にシルフィさんも同意見の様子です。
私なら血術結界で防げるかもしれませんけれど……。
基本的に、魔法を扱う者同士の戦闘において相手が強いかどうかは「魔力総量」で判断できますので、測定不能であれば自分よりも強い相手となり、魔力総量がある程度解る相手であれば勝てる見込みがあるとミツキさんから聞いています。
ですが……。
目の前の黒いドレスの女の子からは「魔力が一切感じられない」ので、強さが全然解らないのです。その上で強力無比な「光の帯」を無動作で放ってきますので、防げるかどうかがまったくの未知数です。
そして三度目の「光の帯」を僅かの差で回避した時。
「もう拘束等という生半可な事は言ってられないですわよね。ウェイル……やりますわよ」
「正直、女の子を手にかけるのは気が進まないけど……仕方無いか」
二人は黒いドレスの女の子と戦う事を決めたようです。
「ミズキ、ここは僕達に任せて逃げてくれ。君にはここで戦う理由は無いからね」
ウェイルさんが気遣いの言葉を私にかけてくれます。だからこそ、私も決心できます。この状況で二人を残して逃げるだなんて事、私には出来ませんもの。
「お気遣い有難うございます。ですが、私にもちゃんと戦う理由はありますよ。「役目」をお手伝いする為に、このダンジョンに来たのですから」
「え!? ミズキ、何故君が「役目」の事を……」
「もう不可解が過ぎて、貴女という存在をまったく理解できませんわね……」
驚くウェイルさんとは逆に、考える事を止めた様子のシルフィさん。
「今はこの黒いドレスの女の子をどうにかする方が先です」
「うん、そうだね。心強い仲間が出来て、とても嬉しく思うよ」
「ウェイル、順応するのが早すぎますわ……。まぁ確かに、今は貴女の力が必要ですわね。やりますわよ、ミズキ」
「はい!」
ようやく、シルフィさんが私の名前を呼んで下さいました。それがとっても、嬉しくて。
もっと二人と仲良くなりたいと思った私は。
四度目の「光の帯」が放たれる気配を感じて血術結界を展開し、赤い壁に意識を集中します。
直ぐに「光の帯」は壁にぶつかり、物凄い力が私を壁ごと貫こうとしています。
「ミズキ!」
ウェイルさんとシルフィさんが不安そうに私の名前を叫んでいます。
大丈夫ですよ、今の私に怖いものなんて無いのですから。
「ぐ……ぅ……」
両手を壁の前に差し出し、全力で「光の帯」を受けとめ続けますと。
やがて光が消え、どうにか防ぎ切る事が出来ました。ですが、今ので血の残量が残り3割程度まで減ったようです。次は防げないかもしれません……。
無言で立っている黒いドレスの女の子は、「光の帯」を防ぎ切った私をじっと見つめているようです。
「人間じゃない。お前は、何だ」
不可解な存在である黒いドレスの女の子は、不可解な存在である私に対して、感情の無い声で語り掛けました。
今歩いている場所は石壁で囲われた大広間のようで、少し遠くに入口らしき扉が見えました。そして大広間を挟むように小部屋が左右に二部屋ずつあり、私は左側の一室に転移していたようです。異質な気配は正反対にある右側の小部屋から感じています。
まるでこの後、何かが出てくる直前のような、そんな不気味な空気が辺り一帯に漂っていて、少々怖いです。隣を歩いている二人は特に恐怖的な物は感じていないようですので、私が単に怖がりなだけなのでしょうけれど。
怖いながらも光が届く範囲の様子を伺っていた私は、「古代魔法具庫」の作りを大まかに理解できたと感じた時。
「ちょっと貴女、あまりくっつかないで下さいですの!」
「……あ、ご、御免なさい。とても怖いのでつい……」
ライトウィスプの効果範囲は決して狭い訳では無いのですれど、無意識にシルフィさんに寄り添ってしまいました。つい先程までは隣にイグニシアさんとミツキさんが居てくれましたので、今は居ないという寂しい気持ちが行動に現れてしまったのでしょうか。二人とも、きっと心配していますよね……。
「人ならざる者にしては、妙な弱点ですわね……。ま、まぁ少しくらいでしたら、近くにいてもいいですわ」
「有難うございます、シルフィさん。お言葉に甘えますね」
笑顔で感謝の気持ちを伝えました。隣に誰かが居てくれますと、安心出来てとても嬉しいのです。シルフィさんはコホンと咳払いをした後、プイっとそっぽを向いてしまいました。決して嫌がっている風では無いようですが、少々照れている様子です。これが本来のシルフィさんなのでしょう。
そんなシルフィさんは、膝上の赤い魔術師風のワンピースを着ていて、私と余り背丈は変わらない可愛らしい女の子です。ちょっぴり私よりも歳上に見えますが、それ程の差は無いように思います。
シルフィさんを中心に挟む形で歩いていたウェイルさんは、肩にマントを羽織り、青色を基調とした騎士さんの正装をしていて腰に二本帯剣しています。先ほど騎士団長さんをなされているとお聞きしましたけれど、それも納得してしまう服装なのです。
私の視線に感づいたのでしょうか。ウェイルさんが此方を向き、柔らかな笑顔で「どうかしたかい?」と聞いてきましたので、私は慌てて地面に顔を向けてしまいました。冷静を装って「何でもありません」と返答をしておきましたけれど、不自然ですよね……。
「二人とも、小部屋の入り口ですわよ」
シルフィさんの言葉に合わせて小部屋を確認しますと、私が転移してきた左側と作りは変わらない様子なのですが……中を覗くのは少々躊躇いがあります。
そんな私の気持ちを察してくれたかのように、ウェイルさんが数歩前に出て。
「僕がもう一度中を見てこよう。二人は僕が合図するまで待ってて」
「解りましたわ。それとウェイル、無警戒で居るのも程々になさいませ」
「うん、解っているよ」
ウェイルさんは腰の剣に手を添えますと、先程までの柔らかな印象から、静かな水面を思わせるような、研ぎ澄まされた印象へと変わり、ゆっくり小部屋へと近づいて行きます。私には武器を直接扱う技量はありませんけれど、それが「隙の無い状態」だと言う事は解ります。
小部屋の入口に立ったウェイルさんは中の様子を確認した所で、静かな水面に波紋が広がったかのような焦りを感じている様子です。小部屋の中で何を見たのでしょうか?
「……二人共、小部屋の中を見てくれ」
「どうしましたの?」
ウェイルさんの言葉に警戒しつつ、シルフィさんと一緒に小部屋へと近づき、中を確認した所……。
「な、なんですの……あれは」
「……水晶?」
小部屋の中心に、大きな丸い水晶が浮いていました。そして、その水晶の周りを様々な古代魔法具が円を描くように回っています。
「僕が珍しいと感じて鑑賞していたのがあの大きな水晶だったんだ。さっきまでは部屋の隅に転がっていた筈だけど……」
「まさか、作動していますの?」
古代魔法具が作動するという事は、異常な効果を周囲に及ぼす可能性がある事を意味しています。その効果は古代魔法具によって様々なようですけれど、殺傷力が高いと言う点では共通していると思われます。
「これは……ちょっと不味いかもしれないね」
「ど、どうしますの!? 「お姉様」達は本国にいますから、助力は得られませんわよ!」
「……」
私達はこの部屋で何が起きているのか理解出来ないまま、如何するべきか悩んでおりますと。
次第に周りを回っていた古代魔法具は吸い寄せられるように、水晶の中へと消えていきました。
「これは……」
「水晶が古代魔法具を吸収……したんですの?」
周囲の古代魔法具を吸い込んだ水晶が突如輝き始め、眩い光を放ちました。
「くっ……一体何が」
「……っ」
眩しさから手で目を覆いながら様子を見ていますと、水晶が光の中に消えて無くなりました。
ですがその代わり、光が徐々に収束していくと同時に、「黒いドレスの女の子」がその場に現れたのです。
見た目は子供で、黒とも紫とも言える、ダークパープルの長い髪をしています。
異質な気配はこの子の物だと言う事は直ぐに解りました。目を瞑って立っていた黒いドレスの女の子は、次第にゆっくりと目を開けて、視線を此方へと向けました。
「……人間」
そう一言、黒いドレスの女の子が喋った瞬間。
急激な死への恐怖が沸き起こり、ここに居たら死ぬ、という直感が働きました。
「皆さんここから離れて!!!」
私の叫びと共に小部屋から三人揃って出ると同時に……一直線に「光の帯」が伸びて、入り口付近の壁をたやすく貫通し、大きな横穴を開けました。その穴は人が通れる程の大きさです。
私は生まれて初めて「死ぬ恐怖」を感じました。黒いドレスの女の子は何の躊躇いも無く私達を殺そうとしたのです。その唐突さに、私は力を使う余裕すらありませんでした……。
小部屋から離れて大広間へと逃げた私達は、余りに不可解な出来事に戸惑いを隠せません。不可解の塊である私ですら、異常な事だと認識するくらいですもの……。
「魔力が一切感じられませんのに、この異常な力は何ですの……。そもそも、あの子は一体何なんですの!?」
シルフィさんの問いかけに誰も答える事は出来ません。……けれど。
「解らないけど、このまま「あの子」を放って置くべきじゃ無いって事だけは解るかな」
「私も同意見です。私達のお話を聞いてくれればいいのですけれど……」
殺されかけましたけれど、穏便に済むならそれに越した事はありません。
ですが、そんな私の思惑通りにはいかない様子です。やがて黒いドレスの女の子がゆっくりと小部屋から出てきますと、すぐさま「光の帯」が私達へと放たれ、辛うじてそれをかわします。
「あの子は私達のお話を聞くつもりは一切無いようですわよ……」
「悲しいですが、そのようですね……」
悠長に話しかけている間に、一瞬で死んでしまう可能性があります。
それにこのまま黒いドレスの女の子に攻撃を許していますと、「古代魔法具庫」が壊れる所か、このダンジョンその物が危険ですね。ミツキさんなら、この場合どうしていたのでしょうか……。
「あの謎の光は多分、防げない気がする。防いでいる間に語り掛ける事も出来そうに無いね……」
ウェイルさんの判断にシルフィさんも同意見の様子です。
私なら血術結界で防げるかもしれませんけれど……。
基本的に、魔法を扱う者同士の戦闘において相手が強いかどうかは「魔力総量」で判断できますので、測定不能であれば自分よりも強い相手となり、魔力総量がある程度解る相手であれば勝てる見込みがあるとミツキさんから聞いています。
ですが……。
目の前の黒いドレスの女の子からは「魔力が一切感じられない」ので、強さが全然解らないのです。その上で強力無比な「光の帯」を無動作で放ってきますので、防げるかどうかがまったくの未知数です。
そして三度目の「光の帯」を僅かの差で回避した時。
「もう拘束等という生半可な事は言ってられないですわよね。ウェイル……やりますわよ」
「正直、女の子を手にかけるのは気が進まないけど……仕方無いか」
二人は黒いドレスの女の子と戦う事を決めたようです。
「ミズキ、ここは僕達に任せて逃げてくれ。君にはここで戦う理由は無いからね」
ウェイルさんが気遣いの言葉を私にかけてくれます。だからこそ、私も決心できます。この状況で二人を残して逃げるだなんて事、私には出来ませんもの。
「お気遣い有難うございます。ですが、私にもちゃんと戦う理由はありますよ。「役目」をお手伝いする為に、このダンジョンに来たのですから」
「え!? ミズキ、何故君が「役目」の事を……」
「もう不可解が過ぎて、貴女という存在をまったく理解できませんわね……」
驚くウェイルさんとは逆に、考える事を止めた様子のシルフィさん。
「今はこの黒いドレスの女の子をどうにかする方が先です」
「うん、そうだね。心強い仲間が出来て、とても嬉しく思うよ」
「ウェイル、順応するのが早すぎますわ……。まぁ確かに、今は貴女の力が必要ですわね。やりますわよ、ミズキ」
「はい!」
ようやく、シルフィさんが私の名前を呼んで下さいました。それがとっても、嬉しくて。
もっと二人と仲良くなりたいと思った私は。
四度目の「光の帯」が放たれる気配を感じて血術結界を展開し、赤い壁に意識を集中します。
直ぐに「光の帯」は壁にぶつかり、物凄い力が私を壁ごと貫こうとしています。
「ミズキ!」
ウェイルさんとシルフィさんが不安そうに私の名前を叫んでいます。
大丈夫ですよ、今の私に怖いものなんて無いのですから。
「ぐ……ぅ……」
両手を壁の前に差し出し、全力で「光の帯」を受けとめ続けますと。
やがて光が消え、どうにか防ぎ切る事が出来ました。ですが、今ので血の残量が残り3割程度まで減ったようです。次は防げないかもしれません……。
無言で立っている黒いドレスの女の子は、「光の帯」を防ぎ切った私をじっと見つめているようです。
「人間じゃない。お前は、何だ」
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