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5章
舞台と妓の部門
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学院中央広場へと移動しますと、広場全域が沢山の人で混雑しております。普段は学生達が憩いの場として使用しているオープンカフェも一般層の方々によって席が全て埋まっており、運営側の学生達が忙しそうにオーダーを受け、料理を運んでいます。
特に人が密集しているのは広場の南側に特設された舞台ですね。既に美の部門参加者による趣向演目が行われている舞台周辺には、沢山の一般層の方が集まり、歓声の声を上げつつ楽しんでおります。舞台は長方形の木枠で作られており、その舞台の前に観客が詰め寄っている形ですね。
私達も歓声に引き寄せられるように近づきますと。舞台上では支配層のお嬢様同士でペアを組み、ダンスを踊っておりました。上流階級のパーティーで見られる優雅なダンスの様ですけれど、どうやら終わり際の様でした。
「ふむ、今舞台上で踊っておる者共は何番目じゃ?」
「ええと、七番目ですね。そろそろ八番目の方と交代する時間でしょうか」
私達が露店巡りをしている間に、美の部門参加者による演目は七番まで進んでおりました。演目は一組十分間という制限時間が設けられており、限られた時間で精いっぱい自らの魅力を観客に伝えなければなりません。
舞台参加の際には美の部門参加者同士が組む事も可能で、大抵は誰かと組んで演目を行っているようです。その方が演目が映えますし、誰かとご一緒すると大変心強いですものね。とは言え、票の取り合いが絡む以上、最終的には全ての参加者がライバルとなりますので、舞台上に限り協力者同士という事になります。
「へぇ、七番目の組は中々良いダンスね。動きに迷いが無いわ。舞台はそれ程広くは無いのに、狭さを感じさせない立ち回りを心がけている。流石は支配層のお嬢様って所かしら」
余り人を褒めたりしないクリスティアさんが、七番のダンスに好感を持ったようです。舞台で踊っているペアのお嬢様は優雅さと気品を兼ね揃えており、時折舞台の端まで移動するので少々落下などを心配してしまいますけれど、舞台の範囲を熟知した動きで、軽やにステップを踏んでいます。
こういったダンスは身分の高い社交の場でしか見られませんので、一般層の方々では中々お目にかかれません。その意味でも、七番目のペアに魅了された方は大分多いようです。
「あのペアは中等部のクラスAに在籍しているようです。去年も参加していた様ですが、それぞれ八位と九位という結果に終わっていたようですね」
「これで八位と九位なんですか!? ヤヨイ、ここまで熟達したダンスは初めて見たんですけど……」
エイルさんの情報網は正確ですから、去年の結果に間違いは無いのでしょう。正直私も驚きです。美の部門は予想以上に敷居が高いみたいで、ちょっと緊張してきてしまいました……。
「むしろこれ位で丁度よい。勝負事は張り合いがなくては面白みがないからのぅ」
「珍しく同意見ね。私もそう思うわ」
元々二人で一人だったシャウラさんとクリスティアさんが意気投合しています。まぁ、それだけ参加者がこの部門にかける意気込みは凄いという事でしょう。
「ヤヨイ達の演目は何番目でしたっけ?」
「三十二番ですね。舞台に上がる前に、全員実技部門一戦目が行われる筈です」
実技のお話を出した所で、範囲拡声器から技の部門参加者の番号が呼び出されました。五十二番と百三番が対戦するようです。
「む、百三番は我じゃな」
「あら、シャウラさんの番でしたか」
技の部門は複数の訓練用地を同時に使用しているのも理由にあるのでしょうか、迅速に試合が進んでいるようです。私達が露店を巡っている合間にも頻繁に番号の呼び出しがありましたもの。
「噂をすればなんとやら、ですね。私達はどうしますか? シャウラの試合を見るのも一興だと思うのですが」
「私としてはシャウラの今の実力を知っておきたいわね。最近まで全く戦えない状態だったのでしょう?」
エイルさんがシャウラさんの試合観戦案を出しますと、クリスティアさんがその案に乗り気です。私もシャウラさんの調子が気になりますし、ヤヨイさんも見てみたいとの事で、満場一致で実技訓練用地へと移動する事になりました。
舞台を見るのも楽しいですけれど、戦いを観戦するのも楽しいのです。余り争いは好まない私ですけれど、人ならざる者として生まれた性質のせいか、血が疼いてしまうのです。こればかりは仕方ありません……。
-------
妓の部門を観戦している一般層の方々の近くで、男の先生方が騎士の如く見回りをしつつ、付近の監視をしています。学院外から様々な方がいらしている訳ですから、何らかの問題が起きても即時対応出来るようにという事でしょうね。
「では、ちょいと行って来るとするかの」
「シャウラ、忘れ物はありませんか。おやつは銅貨四十枚までですよ」
「貴様は我を何処に行かせるつもりじゃ!」
「初等部の遠地実習にシャウラが混じっていても、余り違和感は無いのではないかしら」
「我をその辺のロリと一緒にするでないわ!」
「ロリって何ですか? ヤヨイ、初めて聞く言葉です」
実技訓練用地まで移動した後、いつもの様にシャウラさんを弄って遊ぶ私達。周囲を見渡しますと、一般層の方々はここにも沢山いらっしゃいました。学生同士の戦いも普段は見る事は出来ませんものね。観戦者が多いのも頷けます。
「ともあれ、相手は学生です。力の加減を誤らないで下さい」
「解っておる」
審判役の先生が番号を改めて呼び出しました。シャウラさんは第四実技訓練用地で試合を行う様です。他の訓練用地でも試合が行われており、クラスAとクラスSの学生が順当に勝っています。
面倒そうにゆっくりと訓練用地の中央までシャウラさんが移動しますと、対戦相手も現れました。シャウラさんの相手は見覚えのある方です。合同実技訓練の際も前衛として頑張っていた、数少ない男子学生の子ですね。
「シャウラさんの相手は私達のクラスの方ですね」
「クラスSの方ですか。初等部と中等部の違いこそありますが、実力に歳の差など関係ありません。相手の奮闘に期待します」
エイルさんが仰るように、妓の部門も参加者は歳の差に不服を唱える方は一切おりません。自分の実力を知る為には強い相手と戦うのが一番ですもの。
「これより、五十二番及び百三番の試合を開始する。互いに日々の鍛錬で鍛えた力を出し合い、良い試合とするように」
審判役の先生の言葉と共に、私達と同じクラスの男子学生が魔道武器の剣を構えます。シャウラさんも懐から魔道武器を取り出しました。実の所、シャウラさんの魔道武器を見るのは初めてです。手に持っているのは扇子の様ですが……。
「では始め!」
一気に勝負を決めるつもりなのでしょう、魔力が殆ど感じられないシャウラさんに詰め寄り、下から上へと斬り上げます。その斬撃をシャウラさんは避けずに扇子で受け止めました。男子学生は扇子で防がれた事に多少焦ったようですが、引き続き油断せず斬り続けます。
「あの、エイルさん。シャウラさんが使用している扇子は魔道武器ですよね?」
「ええ、そうです。まだクラスCに在籍していた時の事ですが。魔道武器適正を行う際、シャウラは一番魔力総量の高い武器を用意する様に先生へと言いました。魔力の無い物が何を言っているのか、と先生に怒られ、クラスから笑いものにされました」
私が適性試験を受けた時と傾向は似ていますね。ただ、私が居たクラスCの皆さんはとても良い人ばかりでしたので、相手を笑う様な子は一人もいませんでしたけれど。
「シャウラは面倒だと憤りながらも、練習用の魔道武器から少しずつ適正段階を上げていき、最終的にこの学院に存在する最上位の魔道武器すらも適正するに至りました」
「それが……あの扇子ですか」
「ええ、誰にも使われずに保管されていた特殊な武器の一つだそうです。シャウラからは魔力が感じられないのに、武器には膨大な魔力反応があるので、先生は相当に混乱されていたようですが」
「ふふ、その場面が安易に想像できますね」
試合はシャウラさんの防戦一方、に見えるかもしれません。素早い斬撃でシャウラさんに斬り込む男子学生は支配層の方ですので、代々受け継いだ才能は相当な物です。観戦されているクラスA以下の女子学生からも応援の声が上がる位に、クラスSの男子学生は大変人気なのです。
ですけれど、やはり相手が悪かったとしか言いようがありません。扇子で剣の斬撃を受け流すシャウラさんの表情は……つまらなそうでした。
「ふむ……この程度の物か。やはり人間の身では出せる実力もたかが知れておるな」
防戦一方だったシャウラさんが真っ直ぐ斬り下ろした剣を扇子で受け止めますと。そのまま横なぎに扇子を払い、男子学生を弾き飛ばしました。
「あぁ、一人だけ規格外の娘がおったな。人の身でありながら、国家指定級にも届く魔力と実力を持つ者が」
それは勿論ヤヨイさんの事です。シャウラさんが何を言っているのかは解らないでしょうけれど、褒められたらしいと感じたヤヨイさんが、もじもじしつつ照れています。可愛いのでなでておきました。
男子学生が立ち上がり、再び間合いを詰めようとした所で立ち止まります。シャウラさんが扇子を広げて魔力を武器に込めたからですね。
「まぁ、貴様の動きも人間にしては良い方なのであろうし、同等の人間が相手であれば勝っていたやも知れぬが……相手が悪かった様じゃな。此度の敗北は必ず貴様の糧となろう」
男子学生が武器に魔力込め、防御姿勢に出ますが、シャウラさんが武器に込めた魔力は人の身では防ぐ事は出来ません。
自らの力量を知る為、最後まで降参せずに戦う男子学生はとても格好良いのですけれど、勝てない相手に無謀な戦いを仕掛けるのは誤った判断です。まぁこれは試合ですので、力量差があっても引けない面はありますけれど。
「心して我が編み出した力を受けるがよい。そして知れ、我の名を。「魔道扇妓・炎舞」」
一瞬、炎に包まれた様に見えたシャウラさんが瞬時に男子学生の前に現れました。舞うように扇子を振るいますと、魔力による炎が男子学生を襲います。
シャウラさんが二つ、三つと舞う度に扇子から膨大な魔力の炎が溢れ出し、防いでいた男子学生の武器に大きな亀裂が入った所で審判役の先生が試合を止め、シャウラさんの勝利を宣言しました。
知らぬ間に、シャウラさんは魔道武器による戦いを身に着けていたようですね。私も負けてはいられません。と意気込むのは良いのですけれど、私の魔道武器はまだ完成しておりません。シャウラさんの戦いを見ていたら、直ぐにでも欲しくなってしまいました。そろそろ完成するとご連絡は頂いていますので、とても楽しみです。
特に人が密集しているのは広場の南側に特設された舞台ですね。既に美の部門参加者による趣向演目が行われている舞台周辺には、沢山の一般層の方が集まり、歓声の声を上げつつ楽しんでおります。舞台は長方形の木枠で作られており、その舞台の前に観客が詰め寄っている形ですね。
私達も歓声に引き寄せられるように近づきますと。舞台上では支配層のお嬢様同士でペアを組み、ダンスを踊っておりました。上流階級のパーティーで見られる優雅なダンスの様ですけれど、どうやら終わり際の様でした。
「ふむ、今舞台上で踊っておる者共は何番目じゃ?」
「ええと、七番目ですね。そろそろ八番目の方と交代する時間でしょうか」
私達が露店巡りをしている間に、美の部門参加者による演目は七番まで進んでおりました。演目は一組十分間という制限時間が設けられており、限られた時間で精いっぱい自らの魅力を観客に伝えなければなりません。
舞台参加の際には美の部門参加者同士が組む事も可能で、大抵は誰かと組んで演目を行っているようです。その方が演目が映えますし、誰かとご一緒すると大変心強いですものね。とは言え、票の取り合いが絡む以上、最終的には全ての参加者がライバルとなりますので、舞台上に限り協力者同士という事になります。
「へぇ、七番目の組は中々良いダンスね。動きに迷いが無いわ。舞台はそれ程広くは無いのに、狭さを感じさせない立ち回りを心がけている。流石は支配層のお嬢様って所かしら」
余り人を褒めたりしないクリスティアさんが、七番のダンスに好感を持ったようです。舞台で踊っているペアのお嬢様は優雅さと気品を兼ね揃えており、時折舞台の端まで移動するので少々落下などを心配してしまいますけれど、舞台の範囲を熟知した動きで、軽やにステップを踏んでいます。
こういったダンスは身分の高い社交の場でしか見られませんので、一般層の方々では中々お目にかかれません。その意味でも、七番目のペアに魅了された方は大分多いようです。
「あのペアは中等部のクラスAに在籍しているようです。去年も参加していた様ですが、それぞれ八位と九位という結果に終わっていたようですね」
「これで八位と九位なんですか!? ヤヨイ、ここまで熟達したダンスは初めて見たんですけど……」
エイルさんの情報網は正確ですから、去年の結果に間違いは無いのでしょう。正直私も驚きです。美の部門は予想以上に敷居が高いみたいで、ちょっと緊張してきてしまいました……。
「むしろこれ位で丁度よい。勝負事は張り合いがなくては面白みがないからのぅ」
「珍しく同意見ね。私もそう思うわ」
元々二人で一人だったシャウラさんとクリスティアさんが意気投合しています。まぁ、それだけ参加者がこの部門にかける意気込みは凄いという事でしょう。
「ヤヨイ達の演目は何番目でしたっけ?」
「三十二番ですね。舞台に上がる前に、全員実技部門一戦目が行われる筈です」
実技のお話を出した所で、範囲拡声器から技の部門参加者の番号が呼び出されました。五十二番と百三番が対戦するようです。
「む、百三番は我じゃな」
「あら、シャウラさんの番でしたか」
技の部門は複数の訓練用地を同時に使用しているのも理由にあるのでしょうか、迅速に試合が進んでいるようです。私達が露店を巡っている合間にも頻繁に番号の呼び出しがありましたもの。
「噂をすればなんとやら、ですね。私達はどうしますか? シャウラの試合を見るのも一興だと思うのですが」
「私としてはシャウラの今の実力を知っておきたいわね。最近まで全く戦えない状態だったのでしょう?」
エイルさんがシャウラさんの試合観戦案を出しますと、クリスティアさんがその案に乗り気です。私もシャウラさんの調子が気になりますし、ヤヨイさんも見てみたいとの事で、満場一致で実技訓練用地へと移動する事になりました。
舞台を見るのも楽しいですけれど、戦いを観戦するのも楽しいのです。余り争いは好まない私ですけれど、人ならざる者として生まれた性質のせいか、血が疼いてしまうのです。こればかりは仕方ありません……。
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妓の部門を観戦している一般層の方々の近くで、男の先生方が騎士の如く見回りをしつつ、付近の監視をしています。学院外から様々な方がいらしている訳ですから、何らかの問題が起きても即時対応出来るようにという事でしょうね。
「では、ちょいと行って来るとするかの」
「シャウラ、忘れ物はありませんか。おやつは銅貨四十枚までですよ」
「貴様は我を何処に行かせるつもりじゃ!」
「初等部の遠地実習にシャウラが混じっていても、余り違和感は無いのではないかしら」
「我をその辺のロリと一緒にするでないわ!」
「ロリって何ですか? ヤヨイ、初めて聞く言葉です」
実技訓練用地まで移動した後、いつもの様にシャウラさんを弄って遊ぶ私達。周囲を見渡しますと、一般層の方々はここにも沢山いらっしゃいました。学生同士の戦いも普段は見る事は出来ませんものね。観戦者が多いのも頷けます。
「ともあれ、相手は学生です。力の加減を誤らないで下さい」
「解っておる」
審判役の先生が番号を改めて呼び出しました。シャウラさんは第四実技訓練用地で試合を行う様です。他の訓練用地でも試合が行われており、クラスAとクラスSの学生が順当に勝っています。
面倒そうにゆっくりと訓練用地の中央までシャウラさんが移動しますと、対戦相手も現れました。シャウラさんの相手は見覚えのある方です。合同実技訓練の際も前衛として頑張っていた、数少ない男子学生の子ですね。
「シャウラさんの相手は私達のクラスの方ですね」
「クラスSの方ですか。初等部と中等部の違いこそありますが、実力に歳の差など関係ありません。相手の奮闘に期待します」
エイルさんが仰るように、妓の部門も参加者は歳の差に不服を唱える方は一切おりません。自分の実力を知る為には強い相手と戦うのが一番ですもの。
「これより、五十二番及び百三番の試合を開始する。互いに日々の鍛錬で鍛えた力を出し合い、良い試合とするように」
審判役の先生の言葉と共に、私達と同じクラスの男子学生が魔道武器の剣を構えます。シャウラさんも懐から魔道武器を取り出しました。実の所、シャウラさんの魔道武器を見るのは初めてです。手に持っているのは扇子の様ですが……。
「では始め!」
一気に勝負を決めるつもりなのでしょう、魔力が殆ど感じられないシャウラさんに詰め寄り、下から上へと斬り上げます。その斬撃をシャウラさんは避けずに扇子で受け止めました。男子学生は扇子で防がれた事に多少焦ったようですが、引き続き油断せず斬り続けます。
「あの、エイルさん。シャウラさんが使用している扇子は魔道武器ですよね?」
「ええ、そうです。まだクラスCに在籍していた時の事ですが。魔道武器適正を行う際、シャウラは一番魔力総量の高い武器を用意する様に先生へと言いました。魔力の無い物が何を言っているのか、と先生に怒られ、クラスから笑いものにされました」
私が適性試験を受けた時と傾向は似ていますね。ただ、私が居たクラスCの皆さんはとても良い人ばかりでしたので、相手を笑う様な子は一人もいませんでしたけれど。
「シャウラは面倒だと憤りながらも、練習用の魔道武器から少しずつ適正段階を上げていき、最終的にこの学院に存在する最上位の魔道武器すらも適正するに至りました」
「それが……あの扇子ですか」
「ええ、誰にも使われずに保管されていた特殊な武器の一つだそうです。シャウラからは魔力が感じられないのに、武器には膨大な魔力反応があるので、先生は相当に混乱されていたようですが」
「ふふ、その場面が安易に想像できますね」
試合はシャウラさんの防戦一方、に見えるかもしれません。素早い斬撃でシャウラさんに斬り込む男子学生は支配層の方ですので、代々受け継いだ才能は相当な物です。観戦されているクラスA以下の女子学生からも応援の声が上がる位に、クラスSの男子学生は大変人気なのです。
ですけれど、やはり相手が悪かったとしか言いようがありません。扇子で剣の斬撃を受け流すシャウラさんの表情は……つまらなそうでした。
「ふむ……この程度の物か。やはり人間の身では出せる実力もたかが知れておるな」
防戦一方だったシャウラさんが真っ直ぐ斬り下ろした剣を扇子で受け止めますと。そのまま横なぎに扇子を払い、男子学生を弾き飛ばしました。
「あぁ、一人だけ規格外の娘がおったな。人の身でありながら、国家指定級にも届く魔力と実力を持つ者が」
それは勿論ヤヨイさんの事です。シャウラさんが何を言っているのかは解らないでしょうけれど、褒められたらしいと感じたヤヨイさんが、もじもじしつつ照れています。可愛いのでなでておきました。
男子学生が立ち上がり、再び間合いを詰めようとした所で立ち止まります。シャウラさんが扇子を広げて魔力を武器に込めたからですね。
「まぁ、貴様の動きも人間にしては良い方なのであろうし、同等の人間が相手であれば勝っていたやも知れぬが……相手が悪かった様じゃな。此度の敗北は必ず貴様の糧となろう」
男子学生が武器に魔力込め、防御姿勢に出ますが、シャウラさんが武器に込めた魔力は人の身では防ぐ事は出来ません。
自らの力量を知る為、最後まで降参せずに戦う男子学生はとても格好良いのですけれど、勝てない相手に無謀な戦いを仕掛けるのは誤った判断です。まぁこれは試合ですので、力量差があっても引けない面はありますけれど。
「心して我が編み出した力を受けるがよい。そして知れ、我の名を。「魔道扇妓・炎舞」」
一瞬、炎に包まれた様に見えたシャウラさんが瞬時に男子学生の前に現れました。舞うように扇子を振るいますと、魔力による炎が男子学生を襲います。
シャウラさんが二つ、三つと舞う度に扇子から膨大な魔力の炎が溢れ出し、防いでいた男子学生の武器に大きな亀裂が入った所で審判役の先生が試合を止め、シャウラさんの勝利を宣言しました。
知らぬ間に、シャウラさんは魔道武器による戦いを身に着けていたようですね。私も負けてはいられません。と意気込むのは良いのですけれど、私の魔道武器はまだ完成しておりません。シャウラさんの戦いを見ていたら、直ぐにでも欲しくなってしまいました。そろそろ完成するとご連絡は頂いていますので、とても楽しみです。
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