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5章
天空城の守護者
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第二矢が降り注ぐまでの猶予が殆ど無く……どうすればいいのでしょうなどと悩む時間すらも、今の私達にはありません。ありませんが……こんなに幼い少女に攻撃など、やっぱり出来ません。だって、エルノーラさんが何をしたと言うのですか。どうしてこの子ばかりが酷い目に合わねばならないのですか……。
「防衛術式第九層「Angeloi」」
考えが纏まらないままでいる内にエルノーラさんが先に仕掛けてきました。背にある美しい白い翼を大きく広げて羽ばたかせますと、エルノーラさんの周囲に小さな玉の様な光が無数に現れ、そこから小さい光の帯を放ってきました。
「くっ……!」
身体を逸らして避ける私。無数の光の帯は他の皆様にも放たれており、全員どうにか避けたのですが……。通り抜けて行く筈だった光の帯が直角に曲がり、再度狙いを定めて向かってきました。
「ちぃ、このレーザーは追尾するのか!」
「ん……厄介……!」
各々がどうにか紙一重で避けていますが、光の帯の数が増え、何本も追尾して襲ってきています。
「あぅ……!」
四方八方から光の帯に追尾で襲われ、どうしても避けられずに腕をかすってしまいました。焼ける様な痛みに表情を苦痛に歪ませる私。
「古代魔法具No.16「硬化結晶」!」
クリスティアさんが赤い宝石状の結界を展開し、全員が一度後退して結界内に入りました。追尾して来た光の帯が結界に当たると弾かれ、再び結界にぶつかってきます。
「クリスティアさん、助かりました……」
「ミズキ、怪我をしたの?」
「回復魔法で癒せますから平気です」
直ぐに生命の雨を展開し、腕を癒しました。雨の範囲内にいる皆様のかすり傷なども同時に癒します。
「ねぇ……このこーげき、とぎれないよ?」
「どうにか古代魔法具で防げているけれど、恐ろしい攻撃だわ……」
「ぬ、またレーザーが増えよったぞ!」
エルノーラさんが翼を羽ばたかせる度に数十本単位で光の帯が射出されています。その全てがクリスティアさんの張った結界にぶつかり、弾かれては再度結界に向かってくるという猛攻を繰り返しています。結界内からその様子を見ていますと、もはや豪雨の様です……。
「まずいわ……。これ以上結界に攻撃されたら、古代魔法具が壊れるかもしれない」
必死に結界を維持しているクリスティアさんの表情がとても辛そうです。万能とも言える古代魔法具を持ってしても、エルノーラさんの攻撃に耐えきれないのですか……。
「ミズキよ、防戦一方ではどうにもならぬぞ。ここは決断すべきではないか」
「……っ」
「何より、もう第二矢までの時間もないわね。ミズキ、辛いと思うけれど……エルノーラを止めるしかないわよ」
シャウラ母様とクリスティアさんが決断を迫っていますが、とても辛そうな表情です。私の気持ちを察して下さっているのでしょう。
「はい……解っています。解ってはいるのですが……」
「防衛術式第八層「Archangeroi」」
「……!?」
エルノーラさんが翼を羽ばたかせ、空中に飛び上がりました。そして、光の帯を維持したままで異常な程に長く大きい光の剣を空中で作り出します。僅か数秒で形を成した巨大な剣をエルノーラさんが右手に持ちますと、上段に構えて……一気に振り下ろしてきました。
「あれは防げないわ!!」
「古代魔法具No.2「魔族化粧」」
ただでさえ光の帯の猛攻で綻びそうな結界に巨大な光の剣が振り下ろされた瞬間、シャウラ母様が結界から飛び上がり、光の剣を受け止めます。直ぐに沢山の光の帯が結界外に出たシャウラ母様を狙いますが……。
「対魔消滅!」
シャウラ母様の無効化能力の発動により、光の帯が全て消し飛びます。受け止めた光の剣も溶ける様に消失していきました。
「ミズキよ、辛いならばお主はそこで見ておるがいい。我が代わりにこの娘を止めてやるからの」
「……っ」
本来ならば、それは私がすべき事なのです。だって、私はエルノーラさんのお友達ですもの。ですが、余りにもエルノーラさんが不憫で、見ているだけで涙が溢れそうで……辛いのです。
「防衛術式の無効を確認。対象の能力を解析します」
母様が瞬時にエルノーラさんの前まで飛翔し、魔力を込めた魔道武器の扇子でお腹付近に打撃攻撃を繰り出しますが……エルノーラさんはまるで盾で防ぐかの様に片方の羽を前に出して防御しました。
「我の能力を解析したのち、防御結界に耐性を反映するつもりなのじゃろうが……そうはさせんぞ」
防御された事を特に問題視していないシャウラ母様は、続けて扇子を広げて舞い始めました。
「魔道扇技・炎舞」
麗華祭の技の部門で一度見せて頂いた炎の舞で防御姿勢のエルノーラさんを押し始めます。技の部門の時とは違い、今のシャウラ母様は手加減などしていませんし、古代魔法具の能力で大幅に強化されています。流石のエルノーラさんも攻撃には転じられない様ですね。
と、思ったのですが……。
「解析行動に不備。解析を中断し、引き続き対象の無力化を行います。対象の能力を最高警戒LVに指定、防衛術式を大幅に上昇させます。防衛術式第四層「Kyriotites」」
エルノーラさんの背中に二枚の翼が増えました。計四枚となったエルノーラさんの翼が虹色に輝き始めます。異変を感じ取ったらしいシャウラ母様が攻撃を中断し、一度エルノーラさんから距離を取りました。
「馬鹿な……。我は今対魔消滅を維持しておるのに。無力化出来ぬ能力とでも言うのか?」
魔族化粧中のシャウラ母様が無力化能力を一度展開すれば、制限時間内は効果が永続し続けるようです。
ですので、相手が何かの能力を扱おうとすれば、瞬時に無力化されて実質的に何も出来ない筈なのです。ミズファ母様の様な規格外の相手でない限りは。
つまり……エルノーラさんはその規格外に該当するという事でしょうか? 虹色に輝く翼は輝きを増し始め、お城が余波に当てられて揺れ出しています。
「何をしようとしておるのか知らんが、娘に攻撃をさせてはならぬと解る程度には不味いのぅ……」
シャウラ母様が凄まじい魔力を魔道武器に込め始めましたが、その表情は冴えません。
「わたしわかるよ。あの子に攻撃させたら、しゃうらしぬよ」
「ん……」
「シャウラ! もういいわ、結界内に戻って頂戴!」
クリスティアさんが声を張り上げても、シャウラ母様はその場から動きません。
「ぬかせ。貴様の結界ではいずれにせよ、防げるような物では無いじゃろう。我の全力を以って……」
そこで驚きの表情と共にシャウラ母様の言葉が途切れました。どうやらエルノーラさんを凝視している様ですが、私の位置からではエルノーラさんの表情を見る事が出来ません。
「シャウラ母様、どうなさったのですか!」
「……娘の口から血が流れ出しておる」
「……え!?」
「恐らく、強大な力に体が耐えられぬのかもしれぬ。そもそも……この娘は元老院から出ていい体ではなかった筈じゃな?」
「……あ」
そう、でした……。エルノーラさんはこの世界の空気に極端に体が馴染まない体質です……。この城に来るまで、毒を浴び続けていたようなものですよね。ユイシィスさんはある程度耐えられていたようですが……。
「防御……術式に不備。防御術式維持に問題……媒体に問題」
今にも強大な能力が発動しようとしていた所でしたが、突然力が抜けたかのようにエルノーラさんが空中から落下しました。
「エルノーラさん!!」
急いで駆け寄り、寸前の所でエルノーラさんを受け止めました。
「……エルノーラさん、エルノーラさん!」
口だけでなく、目からも血が流れていました。
「…………お、ねぇ……ちゃ……」
「……! 喋らないでください、今回復魔法を」
「逃げ……て。てんば……つは、とまら……ない」
「……今の貴女を置いて逃げるなんて出来ませんから!!」
「あ……と、にふ……ん。もう……だれも……とめら、れな……」
「私が止めて見せますから!」
最後の力で一生懸命喋っている……そんな様子のエルノーラさんに耐えられなくて。私は直ぐに生命の雨を展開しようとします。ここまで酷い状態では、私の癒し魔法では間に合わないかもしれません……。
「生命の……」
「七重聖羽治癒術」
突然、エルノーラさんに暖かな白い羽が舞い落ち始めました。その温かな羽がエルノーラさんに触れた途端、血が止まります。これは……間違いありません。
「ミズファ母様!」
「遅れてごめんなさい、ミズキ。なんとか間に合いましたか」
直ぐ近くにミズファ母様が転移魔法で帰って来ていました。メイニーさんも一緒です。
「はい、ミズファ母様、有難うございます。メイニーさんもご無事だったのですね」
「私も死ぬところだったの。むしろ死んでたの。むねをぐさりであの世いきだったの」
「メイニーちゃんは死んで間もなかったので僕の蘇生魔法が間に合いました」
「蘇生魔法……以前からミズファ母様が扱えると聞いておりましたけれど、本当だったのですね……」
「んぅ、地味に信じてなかったんですか!? まぁ、それはともかく。ミズキ、第二矢を止めに行きますよ!」
力を使い果たし、私の腕の中で気絶しているエルノーラさんをクリスティアさんに預けて、ミズファ母様にむけて頷きます。
「僕とミズキが死ぬ気で頑張れば防げる筈です。一度地上戻りますよ!」
「はい!」
「まて、お主ら」
ミズファ母様の転移魔法で地上に戻ろうとした瞬間にシャウラ母様から呼び止められました。
「シャウラ、何ですか!」
「我も連れて行け」
「シャウラ母様?」
「何故かはわからぬが……我も一緒でなければ第二矢は止められぬような気がする。もはや確信ともいえるな。こんな気持ちは初めての事でうまく説明できぬのだが……」
「あ、なんかそう言われると確かにそう思いますね。危機を共有したからですかね、僕の直感も働きだしました」
「何故か、私も親子じゃないと駄目な気がしてきました。プリシラ母様も含めて」
この四人がいれば何が起きても平気だと思える程の強い確信。この不思議な気持ちが何なのかわかりませんけれど、妙な高揚感があります。
「わたしもいきたいけど、おるすばんしておくね。なんかわたしもミズキたちじゃないとだめなきがするー」
「ん……悔しいけど私も同じ気持ち。何故そう思うのかは解らないけど」
「私は以前も感じた事があるわね、異様な程の確信を。そのお陰でミズキと再会できた。だから……私も待つ事にするわ」
皆さんも気持ちは同じようです。皆さんにクラウスさん達とエルノーラさんをお任せして、私達親子は急ぎ地上へと戻るのでした。
「防衛術式第九層「Angeloi」」
考えが纏まらないままでいる内にエルノーラさんが先に仕掛けてきました。背にある美しい白い翼を大きく広げて羽ばたかせますと、エルノーラさんの周囲に小さな玉の様な光が無数に現れ、そこから小さい光の帯を放ってきました。
「くっ……!」
身体を逸らして避ける私。無数の光の帯は他の皆様にも放たれており、全員どうにか避けたのですが……。通り抜けて行く筈だった光の帯が直角に曲がり、再度狙いを定めて向かってきました。
「ちぃ、このレーザーは追尾するのか!」
「ん……厄介……!」
各々がどうにか紙一重で避けていますが、光の帯の数が増え、何本も追尾して襲ってきています。
「あぅ……!」
四方八方から光の帯に追尾で襲われ、どうしても避けられずに腕をかすってしまいました。焼ける様な痛みに表情を苦痛に歪ませる私。
「古代魔法具No.16「硬化結晶」!」
クリスティアさんが赤い宝石状の結界を展開し、全員が一度後退して結界内に入りました。追尾して来た光の帯が結界に当たると弾かれ、再び結界にぶつかってきます。
「クリスティアさん、助かりました……」
「ミズキ、怪我をしたの?」
「回復魔法で癒せますから平気です」
直ぐに生命の雨を展開し、腕を癒しました。雨の範囲内にいる皆様のかすり傷なども同時に癒します。
「ねぇ……このこーげき、とぎれないよ?」
「どうにか古代魔法具で防げているけれど、恐ろしい攻撃だわ……」
「ぬ、またレーザーが増えよったぞ!」
エルノーラさんが翼を羽ばたかせる度に数十本単位で光の帯が射出されています。その全てがクリスティアさんの張った結界にぶつかり、弾かれては再度結界に向かってくるという猛攻を繰り返しています。結界内からその様子を見ていますと、もはや豪雨の様です……。
「まずいわ……。これ以上結界に攻撃されたら、古代魔法具が壊れるかもしれない」
必死に結界を維持しているクリスティアさんの表情がとても辛そうです。万能とも言える古代魔法具を持ってしても、エルノーラさんの攻撃に耐えきれないのですか……。
「ミズキよ、防戦一方ではどうにもならぬぞ。ここは決断すべきではないか」
「……っ」
「何より、もう第二矢までの時間もないわね。ミズキ、辛いと思うけれど……エルノーラを止めるしかないわよ」
シャウラ母様とクリスティアさんが決断を迫っていますが、とても辛そうな表情です。私の気持ちを察して下さっているのでしょう。
「はい……解っています。解ってはいるのですが……」
「防衛術式第八層「Archangeroi」」
「……!?」
エルノーラさんが翼を羽ばたかせ、空中に飛び上がりました。そして、光の帯を維持したままで異常な程に長く大きい光の剣を空中で作り出します。僅か数秒で形を成した巨大な剣をエルノーラさんが右手に持ちますと、上段に構えて……一気に振り下ろしてきました。
「あれは防げないわ!!」
「古代魔法具No.2「魔族化粧」」
ただでさえ光の帯の猛攻で綻びそうな結界に巨大な光の剣が振り下ろされた瞬間、シャウラ母様が結界から飛び上がり、光の剣を受け止めます。直ぐに沢山の光の帯が結界外に出たシャウラ母様を狙いますが……。
「対魔消滅!」
シャウラ母様の無効化能力の発動により、光の帯が全て消し飛びます。受け止めた光の剣も溶ける様に消失していきました。
「ミズキよ、辛いならばお主はそこで見ておるがいい。我が代わりにこの娘を止めてやるからの」
「……っ」
本来ならば、それは私がすべき事なのです。だって、私はエルノーラさんのお友達ですもの。ですが、余りにもエルノーラさんが不憫で、見ているだけで涙が溢れそうで……辛いのです。
「防衛術式の無効を確認。対象の能力を解析します」
母様が瞬時にエルノーラさんの前まで飛翔し、魔力を込めた魔道武器の扇子でお腹付近に打撃攻撃を繰り出しますが……エルノーラさんはまるで盾で防ぐかの様に片方の羽を前に出して防御しました。
「我の能力を解析したのち、防御結界に耐性を反映するつもりなのじゃろうが……そうはさせんぞ」
防御された事を特に問題視していないシャウラ母様は、続けて扇子を広げて舞い始めました。
「魔道扇技・炎舞」
麗華祭の技の部門で一度見せて頂いた炎の舞で防御姿勢のエルノーラさんを押し始めます。技の部門の時とは違い、今のシャウラ母様は手加減などしていませんし、古代魔法具の能力で大幅に強化されています。流石のエルノーラさんも攻撃には転じられない様ですね。
と、思ったのですが……。
「解析行動に不備。解析を中断し、引き続き対象の無力化を行います。対象の能力を最高警戒LVに指定、防衛術式を大幅に上昇させます。防衛術式第四層「Kyriotites」」
エルノーラさんの背中に二枚の翼が増えました。計四枚となったエルノーラさんの翼が虹色に輝き始めます。異変を感じ取ったらしいシャウラ母様が攻撃を中断し、一度エルノーラさんから距離を取りました。
「馬鹿な……。我は今対魔消滅を維持しておるのに。無力化出来ぬ能力とでも言うのか?」
魔族化粧中のシャウラ母様が無力化能力を一度展開すれば、制限時間内は効果が永続し続けるようです。
ですので、相手が何かの能力を扱おうとすれば、瞬時に無力化されて実質的に何も出来ない筈なのです。ミズファ母様の様な規格外の相手でない限りは。
つまり……エルノーラさんはその規格外に該当するという事でしょうか? 虹色に輝く翼は輝きを増し始め、お城が余波に当てられて揺れ出しています。
「何をしようとしておるのか知らんが、娘に攻撃をさせてはならぬと解る程度には不味いのぅ……」
シャウラ母様が凄まじい魔力を魔道武器に込め始めましたが、その表情は冴えません。
「わたしわかるよ。あの子に攻撃させたら、しゃうらしぬよ」
「ん……」
「シャウラ! もういいわ、結界内に戻って頂戴!」
クリスティアさんが声を張り上げても、シャウラ母様はその場から動きません。
「ぬかせ。貴様の結界ではいずれにせよ、防げるような物では無いじゃろう。我の全力を以って……」
そこで驚きの表情と共にシャウラ母様の言葉が途切れました。どうやらエルノーラさんを凝視している様ですが、私の位置からではエルノーラさんの表情を見る事が出来ません。
「シャウラ母様、どうなさったのですか!」
「……娘の口から血が流れ出しておる」
「……え!?」
「恐らく、強大な力に体が耐えられぬのかもしれぬ。そもそも……この娘は元老院から出ていい体ではなかった筈じゃな?」
「……あ」
そう、でした……。エルノーラさんはこの世界の空気に極端に体が馴染まない体質です……。この城に来るまで、毒を浴び続けていたようなものですよね。ユイシィスさんはある程度耐えられていたようですが……。
「防御……術式に不備。防御術式維持に問題……媒体に問題」
今にも強大な能力が発動しようとしていた所でしたが、突然力が抜けたかのようにエルノーラさんが空中から落下しました。
「エルノーラさん!!」
急いで駆け寄り、寸前の所でエルノーラさんを受け止めました。
「……エルノーラさん、エルノーラさん!」
口だけでなく、目からも血が流れていました。
「…………お、ねぇ……ちゃ……」
「……! 喋らないでください、今回復魔法を」
「逃げ……て。てんば……つは、とまら……ない」
「……今の貴女を置いて逃げるなんて出来ませんから!!」
「あ……と、にふ……ん。もう……だれも……とめら、れな……」
「私が止めて見せますから!」
最後の力で一生懸命喋っている……そんな様子のエルノーラさんに耐えられなくて。私は直ぐに生命の雨を展開しようとします。ここまで酷い状態では、私の癒し魔法では間に合わないかもしれません……。
「生命の……」
「七重聖羽治癒術」
突然、エルノーラさんに暖かな白い羽が舞い落ち始めました。その温かな羽がエルノーラさんに触れた途端、血が止まります。これは……間違いありません。
「ミズファ母様!」
「遅れてごめんなさい、ミズキ。なんとか間に合いましたか」
直ぐ近くにミズファ母様が転移魔法で帰って来ていました。メイニーさんも一緒です。
「はい、ミズファ母様、有難うございます。メイニーさんもご無事だったのですね」
「私も死ぬところだったの。むしろ死んでたの。むねをぐさりであの世いきだったの」
「メイニーちゃんは死んで間もなかったので僕の蘇生魔法が間に合いました」
「蘇生魔法……以前からミズファ母様が扱えると聞いておりましたけれど、本当だったのですね……」
「んぅ、地味に信じてなかったんですか!? まぁ、それはともかく。ミズキ、第二矢を止めに行きますよ!」
力を使い果たし、私の腕の中で気絶しているエルノーラさんをクリスティアさんに預けて、ミズファ母様にむけて頷きます。
「僕とミズキが死ぬ気で頑張れば防げる筈です。一度地上戻りますよ!」
「はい!」
「まて、お主ら」
ミズファ母様の転移魔法で地上に戻ろうとした瞬間にシャウラ母様から呼び止められました。
「シャウラ、何ですか!」
「我も連れて行け」
「シャウラ母様?」
「何故かはわからぬが……我も一緒でなければ第二矢は止められぬような気がする。もはや確信ともいえるな。こんな気持ちは初めての事でうまく説明できぬのだが……」
「あ、なんかそう言われると確かにそう思いますね。危機を共有したからですかね、僕の直感も働きだしました」
「何故か、私も親子じゃないと駄目な気がしてきました。プリシラ母様も含めて」
この四人がいれば何が起きても平気だと思える程の強い確信。この不思議な気持ちが何なのかわかりませんけれど、妙な高揚感があります。
「わたしもいきたいけど、おるすばんしておくね。なんかわたしもミズキたちじゃないとだめなきがするー」
「ん……悔しいけど私も同じ気持ち。何故そう思うのかは解らないけど」
「私は以前も感じた事があるわね、異様な程の確信を。そのお陰でミズキと再会できた。だから……私も待つ事にするわ」
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