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第3章 奴隷と暮らすまで
第9話
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「こちらは、いかがでしょう?」
そう言いいながら、私の目線に合わせるようにエルフが資料を私の前に差し出してきた。かがんだ拍子に、横に伸びた長いシャルトルーズイエローの髪が前に揺れ、エルフが邪魔そうに髪を耳にかける。その所作があまりにも綺麗で魅入ってしまったが、いつまでもこのままだと不自然に思われてしまうので、目に焼き付けるのはやめ、資料を受け取る。そして、目が疲れたフリをして一度目頭をぎゅっと指で押さえた。
(天使みてぇだな……)
受け取った資料に一通り目を通し、ある一箇所に釘付けになり、思わず目を丸くする。
「……静かな場所の方がいいんじゃなかったのか?」
王都までの距離は徒歩で十分と記載されていた。人の多いところを避けたいのなら、もう少し離れた方がいいはずだ。
「王都の大通りから一本入ったところであれば、かなり静かなので大丈夫です」
この路地裏も大通りから一本入ったところだ。そう言われてみれば、表よりは静かだ。成る程、と思いながら再度資料に目を移し、写真を動かして見てみる。
「敷地内に小川があるな……。川のあるところがいいのか?」
「いえ、距離的にあまり王都から離れていないところの方が便利なのではと、思ったので」
(エルフって自然が好きな種族だと思ってたけど、そうでもないのか……)
「そう、だな。だが、近くに川があるのは少々不安だ。大雨で洪水になって水位が上がったら危ないしな」
エルフの話から選べる屋敷の範囲も広がったので、王都までの距離が徒歩十五分以内でかつ大通りから一本入ったところのあたりを重視し、皆んなに資料を分別してもらった。
残ったのは資料三枚だ。
麻袋からノートとつけペン、ボトルインクを取り出して、比較するために書いていく。
《ノート》※昨日書いた一ページ目
────────────────────────────────
狐人→治療器具、医学書、薬品、清潔な部屋
龍人→大きなベッド、新聞
狼人→鍛錬する場所(庭や部屋)
鬼人→頑丈で壊れない部屋
エルフ→静かな場所にある家
────────────────────────────────
《ノート》※二ページ目
各物件をA、B、Cとする。
────────────────────────────────
王都までの距離 C>B>A
綺麗さ B>A>C
庭 B>A ※Cは庭なし
部屋数 C>B>A
その他 A→プールあり
B→地下室あり
C→馬小屋あり
────────────────────────────────
(B、だな)
書いたノートを彼らに見せ、ペン先で資料を突きながら説明する。
「比較すると、この家が条件に合いそうだな。なぁ鬼人、この地下室は? 普段は普通の部屋を使って、力のコントロールがしにくい時だけここを使ったらどうだ? どうせならここも自分の部屋にしてしまいえばいい」
(その方が万が一壊してしまっても、罪悪感は少なくて済む)
「……いいのか?」
ボルドーの瞳が見開かれる。その表情は、まるで小さな子供が驚いた時のようで、可愛らしいなと、私のきゅっと結ばれた口が思わず緩む。
「部屋は余ってるんだ。好きに使えば良いさ。まぁ、買うかどうかは欠陥住宅かどうか調べてからだがな」
そう言いいながら、私の目線に合わせるようにエルフが資料を私の前に差し出してきた。かがんだ拍子に、横に伸びた長いシャルトルーズイエローの髪が前に揺れ、エルフが邪魔そうに髪を耳にかける。その所作があまりにも綺麗で魅入ってしまったが、いつまでもこのままだと不自然に思われてしまうので、目に焼き付けるのはやめ、資料を受け取る。そして、目が疲れたフリをして一度目頭をぎゅっと指で押さえた。
(天使みてぇだな……)
受け取った資料に一通り目を通し、ある一箇所に釘付けになり、思わず目を丸くする。
「……静かな場所の方がいいんじゃなかったのか?」
王都までの距離は徒歩で十分と記載されていた。人の多いところを避けたいのなら、もう少し離れた方がいいはずだ。
「王都の大通りから一本入ったところであれば、かなり静かなので大丈夫です」
この路地裏も大通りから一本入ったところだ。そう言われてみれば、表よりは静かだ。成る程、と思いながら再度資料に目を移し、写真を動かして見てみる。
「敷地内に小川があるな……。川のあるところがいいのか?」
「いえ、距離的にあまり王都から離れていないところの方が便利なのではと、思ったので」
(エルフって自然が好きな種族だと思ってたけど、そうでもないのか……)
「そう、だな。だが、近くに川があるのは少々不安だ。大雨で洪水になって水位が上がったら危ないしな」
エルフの話から選べる屋敷の範囲も広がったので、王都までの距離が徒歩十五分以内でかつ大通りから一本入ったところのあたりを重視し、皆んなに資料を分別してもらった。
残ったのは資料三枚だ。
麻袋からノートとつけペン、ボトルインクを取り出して、比較するために書いていく。
《ノート》※昨日書いた一ページ目
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狐人→治療器具、医学書、薬品、清潔な部屋
龍人→大きなベッド、新聞
狼人→鍛錬する場所(庭や部屋)
鬼人→頑丈で壊れない部屋
エルフ→静かな場所にある家
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《ノート》※二ページ目
各物件をA、B、Cとする。
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王都までの距離 C>B>A
綺麗さ B>A>C
庭 B>A ※Cは庭なし
部屋数 C>B>A
その他 A→プールあり
B→地下室あり
C→馬小屋あり
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(B、だな)
書いたノートを彼らに見せ、ペン先で資料を突きながら説明する。
「比較すると、この家が条件に合いそうだな。なぁ鬼人、この地下室は? 普段は普通の部屋を使って、力のコントロールがしにくい時だけここを使ったらどうだ? どうせならここも自分の部屋にしてしまいえばいい」
(その方が万が一壊してしまっても、罪悪感は少なくて済む)
「……いいのか?」
ボルドーの瞳が見開かれる。その表情は、まるで小さな子供が驚いた時のようで、可愛らしいなと、私のきゅっと結ばれた口が思わず緩む。
「部屋は余ってるんだ。好きに使えば良いさ。まぁ、買うかどうかは欠陥住宅かどうか調べてからだがな」
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