【ライト版】元死にたがりは、異世界で奴隷達と自由気ままに生きていきます。

第4章 奴隷と暮らす

第30話

　精霊の声を聞くための尖った耳、シャルトルーズイエローの髪に、老いを知らない外見……そして、エメラルドグリーンの瞳……それが、一般的なエルフの特徴。

　ビリヤードグリーン、ボルドグリーン、エバーグリーン、ダークグリーン………五千年に一度くらいの頻度で、稀にそういった濃い瞳を持って生まれてくるエルフがいる。

「呪いの子だ……この子は外に出してはならん！」

　私は、エバーグリーンの瞳を持って生まれてしまった。両親ともにエメラルドグリーンであるにもかかわらず。それが、突然変異によるものなのか、はたまた悪魔の所業によるものなのかは……わからない。

　濃い瞳を持って生まれてくること自体は、種族全体で一般的に珍しいことではなく、それは、魔力が豊富な証とされている。

　しかし、エルフにとっては非常に稀なことで、色の濃い瞳を持って生まれてくるエルフは、忌み嫌われる。その理由は、一番はじめに現れたダークグリーンの瞳を持つエルフが原因だった。

　そのエルフの本来の名は忘れ去られてしまったけれど、漆黒の瞳を持つエルフの姿をしサタン・エルフた悪魔という名は、今も語り継がれている。

　そのエルフもまた、私と同じようにエメラルドグリーンの瞳を持つ両親から生まれた。当初、周囲のエルフたちの反応といえば、「とても珍しい瞳の子が生まれた」というくらいで、特に何も思わなかったそうだ。そして、差別もまだ……なかった。

　変化が訪れたのは、エルフが成人を迎える一年ほど前のことだった。

　そのエルフは、魔力が豊富でとても勤勉だったそうだ。勤勉過ぎるが故に、とんでもないものに手を出してしまったのだ。

　それは、"悪魔召喚"だ。悪魔召喚に必要なのは、召喚者の魔力。

　その召喚で、エルフは、自分の魔力がどれほど豊富で、他のエルフよりどれほど優れているのか、また、己の限界はどこまでなのかを知りたかったのだ。

　召喚に注ぐ魔力が多ければ多いほど、高位の悪魔を召喚することができる。

　召喚を行ったのは、とある深夜の湖の側。エルフは、召喚関連の魔法を扱うのは初めてであり、失敗した際に自分以外を巻き込まないよう皆が寝静まった頃、こっそり家を出てきていた。

　本に記された通りに魔法陣を描き、呪文を唱えながら、魔法陣に魔力を注ぐ。

　すると、それに応えるかのように、魔法陣がブラックダイヤモンドの光を放ち始め、月を覆い隠した雲を貫き、一本の柱を建てた。

　そんなものが突如出現したならば、森中のエルフが目覚めて警戒し、駆けつけるのは当然のこと。もちろん、駆けつけた中には悪魔召喚を行ったエルフの父親もいた。