魔女の涙

産屋敷 九十九

文字の大きさ
上 下
11 / 21
設定資料

しおりを挟む
人助けのつもりで涙を流し続けた魔女だったが、貢がれる度に涙を流すことを期待され、流すことができなければ人々から失望され、罵倒され、魔女は人間不信となった。やがて魔女の涙は枯れて流すことが困難となった。

しかし、魔女は『悲しみの涙』を流すことは決してしなかった。

魔女は知っていた。

『悲しみの涙』は自身をそして人々に危害をもたらすことになるということを───。

それをわかっていて、青年に別れを告げられ悲しみの涙を流してしまったのは、普通の幸せを手にすることが出来なかった悲しさ、雨を降らせる能力のみを求められ魔女自身を心から望む者が誰一人としていなかったという空虚感、そしてその現実に絶望したからである。
しおりを挟む

処理中です...