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ガルシア、てめぇ後でぶっ殺す!
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「処理はこちらでする。おまえらは持ち場につけ」
大勢の兵士の騒ぎを聞きつけ、魔王がやってきたようだ。
────空から。
見上げれば、天井は魔法の爆発(失敗)によって崩れ落ち、青い空と太陽が見える。
「で、ですが陛下……」
「余は今、少々機嫌が悪いんだが? 指示に従わないというのであれば、うっかり八つ当たりしておまえらを殺してしまうかもしれんが……どうする?」
「「「ヒィッ!」」」
魔王は三日月形にした真紅の濁った瞳、不気味なまでに剥き出しにした白い歯を部下に向けた。
太陽を背に、逆光になっているということもあり、それが余計に不気味さを引き立たせる。
その姿、言動に、ガルシアさえもビクリと肩を震わせた。
私か?
私はRPGとか漫画で見た魔王の光景を目の当たりにしたようで、皆とは違う意味でゾクゾクしていた。
多分、現実味がわいていないのだと思うが……。
いいなぁ空中浮遊。
習得できるならしてみたいものだ。
と、目をつぶり空を自由に飛び回る自分を想像し、うんうんと頷いた。
兵士はそそくさと客間を出て行き、客間に立つのは私とガルシアだけだった。
逆光になった魔王を見ているうちにだんだんと目が慣れてきて、真っ黒な魔王の姿がクリアに見えてくる。
今日の昼に見たカッターシャツの上に赤い紋章の入った黒いマントを羽織っただけの軽装とは違い、黒いハットに赤い紋章の入った黒いコートみたいなやつを着ていることに気づいた。
「なぁ陛下」
声をかけると同時に陛下が目の前に降りてきた。
スマートに。
「なんだい?」
魔王はいい笑顔で近づいてくる。
私は魔王の身体を指差した。
魔王は足を止めた。
「そのコートみたいなやつ。暑くないのか?」
外は炎天下というほどではないが、それなりに暑い。
魔王なのだから、服の重ね着を考え体温調節をし、体調管理をしっかりとしてもらわねばならない。
魔王はさらに笑顔を深め、深め過ぎて口の両端が引きつっている。
魔王はその表情のまま近づいてくる。
現在、魔王との距離───零。
ぐわし!
えぇ?
「いってぇーーーー!」
瞬間、魔王の右手によって真上から頭蓋骨を掴まれ、足が床から離れた。
「そのまえに、何か余に言うことはないのかな? 人の子よ。うん?」
この時、ようやく私も皆と同じ意味でゾクゾクし、恐怖と言う名の感情を共感したのだった。
マジでいてぇー!
魔王よ、そのいい笑顔で私を見ないでくれ……。
怒りをあらわにした表情よりも笑顔で怒りを表した表情の方が怖いと思ったのは、初めてだった。
ガ、ガルシアと助けを求めるようにわずかに動く首で横に動かし目をやれば、再びサッと目をそらされた。
私はガルシアの横を睨みつけながら、
うおぉぉおおおぉぉおぉい!
ガルシアてめぇ! あとで覚えとけよ!
ぜってーぶっ殺す!
そう決心した。
現実味なさすぎて場違い発言で地雷を踏んだことは、反省する。
だが、魔法の爆発は私だけが悪いわけじゃなーーーーい!
大勢の兵士の騒ぎを聞きつけ、魔王がやってきたようだ。
────空から。
見上げれば、天井は魔法の爆発(失敗)によって崩れ落ち、青い空と太陽が見える。
「で、ですが陛下……」
「余は今、少々機嫌が悪いんだが? 指示に従わないというのであれば、うっかり八つ当たりしておまえらを殺してしまうかもしれんが……どうする?」
「「「ヒィッ!」」」
魔王は三日月形にした真紅の濁った瞳、不気味なまでに剥き出しにした白い歯を部下に向けた。
太陽を背に、逆光になっているということもあり、それが余計に不気味さを引き立たせる。
その姿、言動に、ガルシアさえもビクリと肩を震わせた。
私か?
私はRPGとか漫画で見た魔王の光景を目の当たりにしたようで、皆とは違う意味でゾクゾクしていた。
多分、現実味がわいていないのだと思うが……。
いいなぁ空中浮遊。
習得できるならしてみたいものだ。
と、目をつぶり空を自由に飛び回る自分を想像し、うんうんと頷いた。
兵士はそそくさと客間を出て行き、客間に立つのは私とガルシアだけだった。
逆光になった魔王を見ているうちにだんだんと目が慣れてきて、真っ黒な魔王の姿がクリアに見えてくる。
今日の昼に見たカッターシャツの上に赤い紋章の入った黒いマントを羽織っただけの軽装とは違い、黒いハットに赤い紋章の入った黒いコートみたいなやつを着ていることに気づいた。
「なぁ陛下」
声をかけると同時に陛下が目の前に降りてきた。
スマートに。
「なんだい?」
魔王はいい笑顔で近づいてくる。
私は魔王の身体を指差した。
魔王は足を止めた。
「そのコートみたいなやつ。暑くないのか?」
外は炎天下というほどではないが、それなりに暑い。
魔王なのだから、服の重ね着を考え体温調節をし、体調管理をしっかりとしてもらわねばならない。
魔王はさらに笑顔を深め、深め過ぎて口の両端が引きつっている。
魔王はその表情のまま近づいてくる。
現在、魔王との距離───零。
ぐわし!
えぇ?
「いってぇーーーー!」
瞬間、魔王の右手によって真上から頭蓋骨を掴まれ、足が床から離れた。
「そのまえに、何か余に言うことはないのかな? 人の子よ。うん?」
この時、ようやく私も皆と同じ意味でゾクゾクし、恐怖と言う名の感情を共感したのだった。
マジでいてぇー!
魔王よ、そのいい笑顔で私を見ないでくれ……。
怒りをあらわにした表情よりも笑顔で怒りを表した表情の方が怖いと思ったのは、初めてだった。
ガ、ガルシアと助けを求めるようにわずかに動く首で横に動かし目をやれば、再びサッと目をそらされた。
私はガルシアの横を睨みつけながら、
うおぉぉおおおぉぉおぉい!
ガルシアてめぇ! あとで覚えとけよ!
ぜってーぶっ殺す!
そう決心した。
現実味なさすぎて場違い発言で地雷を踏んだことは、反省する。
だが、魔法の爆発は私だけが悪いわけじゃなーーーーい!
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