異世界行っても怠惰を貫く。

産屋敷 九十九

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お仕置きどうしよっかなぁ〜? まぁ、生きてるかわかんないけど……。

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魔王のガン飛ばしと殺気にビビってガルシアは失神した。

一応、魔王の側近? なんだろコイツ。

たかがガン飛ばしと殺気で倒れるとは、側近のくせにメンタル弱すぎだろ………。

途端、この城を警備する兵士達に不安を覚えた。

側近がこれなら、その他の兵士はもっとやばいんじゃないか?

「全くコイツは………」

口からべろりと舌がはみ出し、白目をむいて横たわり、ピクリとも動かないガルシアを見下ろして呆れたように魔王はため息をついた。

「………少々、見るに耐えませんね」

リーナがブラウンのレースアップロングブーツを履いた足で、ガルシアの舌をゲシゲシと口の中へ押し込む。

そして、ガルシアの唾液がついたブーツを『あぁ、汚い汚い』と言いながらティッシュで拭いた。

「おい、そいつ魔王の側近! 」

「あぁ、はい。それが何か?」

思わず突っ込んで思わぬ返答に驚き、バッ!と魔王の顔を見れば、

「ん? どうした?」

「あ、いやぁ、別に……」

それが普通、みたいな反応をされた。

魔王にどうこうされるならまだわかるが、メイドにこんな扱いを受けてるなんてな……コイツの側近としての立場とは一体………。

少し哀れに思って突っ込んでそれに触れることはできなかった。

だからといって、私を助けなかったことを許すつもりはさらさらない、絶対に。

「文字も読めんくせに見栄を張って読めるフリをするからいかんのだ」

「は? 文字読めないの? コイツ……」

と横たわるガルシアを見下ろして聞けば、リーナはガルシアを仰向けにして、顔面に白い布を被せ、手を合わせている。

えぇ⁉︎ 死んでないよね⁉︎

目を丸くし、口をパクパクさせて驚く私をよそに、魔王が答える。

「全く読めないが? コイツは頭を使うよりも身体を使うほうが得意ということもあって、まったく文字を覚えようとせんのだ………」

「へ、へぇ………そうなのか。スラスラ言ってたからてっきり読めるものだと思ってたよ」

リーナの行動を突っ込みたいのを堪えて魔王に顔を向け答えた。

「ところでガルシアは一体、どのような呪文をお嬢様に唱えさせたのですか?」

声の聞こえたリーナの方へ顔を向ければ、リーナはガルシアを白い棺の中へ入れて蓋を閉めていた。

いつのまにそんなの出したんだよ⁉︎

「………え、あ、うん。じゅ、呪文な……た、確か『無魔法の生みの親、偉大なる魔術師アルテラよ。その力を示し、我に力を与え給え。全属性を……………全てを呑み込み死を上回るほどの畏れを与えよ!亜空間!』って言ってた」

「なんだ、その長ったらしい呪文は……」

「本来の古の魔法の呪文域を遥かに超えています」

『炎を宿せ』

リーナが詠唱すると、右手に炎がぶわりと出現する。

「次、このようなことがあれば定期的にお灸を据えなければなりませんね」

「余が話も聞かずに覇気で追い詰めてしまったのが原因でもある。だが、こいつはたまに卑怯なことをする。戦場においてもその卑怯な戦い方がよく見られる。余の側近としては、ひねくれた性格を少し真っ直ぐに矯正したいものだな」

「ではこれを機に毎日、お灸を据えてはいかがでしょう?」

右手に宿したリーナの炎が棺に近づく。

これは………やばいぞ⁉︎

「それもいいな」

「では、今日から毎日、余の拳でも叩き込んでやろうかな?」

リーナが炎を消し、それがいいというように、うんうんと無言で頷いた。

いやいやいやいやいや、それ本当にやったら死ぬって!

いや、もう死んでるかもしれないけど!

そもそも、私はガルシアが失神したと思い込んでいるというだけで本当はどちらなのかわかっていない。

だが、会話の内容的にはどうやら生きているらしい。

「ちょっと待て」

「どうした?」

「どうしました?」

「魔王の君が毎日なぐったら、ガルシアが死ぬ。だから、その代わりに………」




「私がお灸を据えてやる」



魔王のお仕置きよりも私のがマシだと思ってくれ。

魔王とリーナがニヤリと面白そうに笑った。

「それはいい考えです! 被害者であるお嬢様、自ら罰するのですね! どんな酷い罰をお与えになるのですか?」

「なるほどな。好きにするといい。おまえがどんな罰を与えるのか楽しみだな」

「……こ、これからじっくり考えみるよ」

きらきらと子供のような笑顔を向けてくる二人が恐ひ。

私は、引きつりそうな顔を必死でこらえた。



ガルシア、感謝しろよ?
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