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ピンチ切り抜けても、またピンチになるかもしれない。まぁ、そんときはそんときか。
しおりを挟む「崩壊せよ!」
アレスに手を向けそう唱えれば、魔法陣から爆音とともに灰色の雷が出現し、アレスを飲み込む。
「ゔぁ────!」
アレスは怯み、顔の前でクロスをし、後ろへ下がった。
夢魔の間が大きく揺れ、立っていられなくなった私は魔法陣の上に膝をついた。
見上げれば夢魔の間は大きく唸り、書の雨がバサバサと降り注いでいた。
幸い、私のところには直撃してこなかった。
魔法陣に目をやれば、まだバチバチと灰色の光を放ち続けている。
おそらく魔法(仮)がまだ発動しており、私を守ってくれているからなのだろう。
「お嬢様!」
「リーナ‥‥‥」
リーナが心配した顔で黒い翼を広げて飛んできた。
やはり悪魔は人間に比べて能力が高いな。
ここに人間がいたなら、間違いなく書の雨に打ちつけられて死人が出ただろうよ。
まぁ、私も人間だが‥‥‥。
魔法(仮)で、壁が崩れ粉塵を起こしたことによりる灰色の煙幕によってアレスの姿が見当たらない。
少しは稼げるか?
それよりも確認しておかなくてはならないことがある。
私は顔をアレスがいるであろう上空へ向けたまま横目でリーナを見て聞く。
「リーナ、おまえはどっちの味方だ?」
「え?」
リーナはきょとんとした顔をした。
視線を戻せば、煙幕の中に二つの琥珀の光と一つの影を見つけた。
これ以上、持たねぇな。
「決めろ! 味方なら私を背に乗せ、魔王のとこまで飛べ! 敵と判断するなら、今すぐ私を殺せ!」
「お、お嬢様、一体、何、を‥‥‥」
アレスは片手を前に出し振り払えば、竜巻が出現し、アレスを包む粉塵を吹き飛ばす。
「にーんーげーんちゃーん‥‥‥」
獲物を見つけたときの嬉しそうな肉食獣のようなアレスの視線と直に交わり、身体が強張るのを堪えて問う。
「時間がない! 3秒数える間に決めろ!3、2、1!」
「味方です!」
「よし! 乗るぞ!‥‥‥行け!」
「はい!」
私はリーナの背に飛び乗り、リーナは私を背負って夢魔の間を出る。
「逃がさない!」
追ってくるアレスに捕まるのが先か、魔王に辿りつくのが先か。
どちらにせよ、面倒なことには変わりない。
だって、アレスに捕まったら殺されるだろ?
魔王のとこに行ったとしても、聖刻文字関連でアレスと同じ考えだとすれば殺されるかもしれないだろ?
でもまぁ、なるようになるか。
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