付き人に恋した没落子爵令嬢は髪を売る

空田かや

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4 喜ばないアエル

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てっきり喜んでくれると思ったリリアージュはサッシュベルトを見て凍り付いたアエルの顔を見て、失敗したのだと悟った。

機嫌が直るかもと思い、リリアージュはビーズのアクセサリーをおずおずと差し出した。

「……これも…お揃いで買って…」

より、顔が曇ったアエルを見て、リリアージュはやっと気がついた。

アエルは大人の男だった。
もう少年の頃の様に、自分の人形遊びに付き合ってくれる年齢でもない。
大人の男の手に、ビーズのアクセサリーは不似合だった。

アエルはブレスレットを受け取ると言った。

「──私は、あなたに何を返せばいいのか…」

リリアージュのアエルに対する一番の望みは、結婚相手になってもらう事だった。

だが、今朝、セリーヌがアエルに振られた記憶が生々しく頭に残っていたし、プロポーズをするのは怖かった。
そもそも、髪と引き換えに結婚まで引っ張れるわけがないと知っていた。

勇気を出してリリアージュは言った。

「──私の初めての男になってくれたら、嬉しい」


リリアージュも中等部にあがった頃、女友達と初めての男は、好きな男がいいという話で盛り上がった事もあったから、なんとなく男女の行為の事も知っていた。

結婚まで処女でいる事にも憧れたが、政略結婚の多い貴族間では好きな人と結ばれるのは難関の道だった。

だからこそ好きな人に抱かれての、処女喪失の話は盛り上がったと言える。

リリアージュは男性といえばアエルしか知らなかったし、アエル以外の選択肢もなく、当然処女はアエルにもらってもらうものだと思っていた。

いつもだったらすぐに断られそうだが、普段冷静な彼が取り乱している今なら、リリアージュの提案を受け入れてくれそうだった。

アエルは笑った。

「…初めての男という事は、次の男も控えている…という事か?」
「控えていない。ずっとアエルだけ……」

そう言うと、リリアージュはアエルに近寄り抱きしめた。

最近、身長がするすると伸び始めたリリアージュの口は、長身なはずのアエルの首元に背伸びをすれば届いた。

そこにリリアージュはそっと口付けをした。
アエルは口付けをされ、少しひるんだ。

「──リリアージュ。一応聞くが、男女の営みを理解しているか?例えば…」

そう言うとリリアージュの赤い唇を自分にむけさせ、アエルはキスをした。

二人がキスをしたのは初めてだった。

そしてアエルは、リリアージュの口の中に舌を入れて激しくキスをする。
体を一瞬びくっとさせたリリアージュに、アエルは唇を離しながら言った。

「つまり…こういう事。あなたはきっと嫌だと思う。まだお子様だから」

お子様と言われ、カチンときたリリアージュは、自分のベッドにアエルを引っ張って行って、押し倒して言った。

「嫌じゃない。続きも…して欲しい」
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