落ちた先に見えるもの

目覚めると

──。
目が覚めると僕はベットの上にいた。僕は生きていたのか？そんなに痛みを感じない。僕は屋上から落ちたんだよな？

──ガラガラ
誰かが病室のドアを開けた。

「目が覚めたのか！？びっくりしたぞ､いきなり階段から落ちるなんて！」
階段？この男は何を言っているんだ？
「僕が落ちたのは屋上からじゃないのか？しかも君は誰なんだ？」
「はぁ？何言ってんだよ！俺はお前の親友の七瀬海斗ななせかいとだよ。お前は階段から落ちて頭打って気を失ったんだよ。しかも僕っていつも自分のことは俺って言ってただろ？」
分かららない､本当に何言ってんだ？
「·····七瀬海斗？·····俺？」
「これは本当に打ちどころが悪かったみたいだな·····。まぁいい､お前の母ちゃん呼んでくるよ。」

──ガラガラ
病室のドアが勢いよく開けられたかと思ったら40代ぐらいの女性が抱きついてきた。
「良かった·····本当に良かった。記憶が曖昧あいまいになっているんでしょ？一緒に少しずつ思い出しましょ。」
「うん·····。」
俺は勢いに押されてその女性に返事をした。なぜだか分からないが本当の母親のような､いや本当の母よりも温かさを感じた。
「それにしても顔がなんともなくてよかった。かすり傷だけみたい。」
そう言ってその女性が僕に鏡を渡してきた。僕はその鏡を受け取り自分の顔を確認した。鏡を見るのはいつぶりだろうか·····。自分の顔が好きでわなかった僕は鏡を全然見てこなかった。
「·····え？」
「どうしたの？」
「いや。」
とっさにそう答えたがそこには自分とは正反対のイケメンの姿が映っていた。今点と点が繋がった。僕はなぜかは分からないがこの男と入れ替わったんだ。だから友達も母親の顔も違う。
僕は入れ替わってしまった恐怖よりも喜びが勝った。もしかしたらこの男の姿で人生をやり直せるかもしれない､欲しかったものが全て手に入るかもしれない。


嘘をつかない友人
愛情
優しい家族
そしてかっこいい顔

全て手に入る喜び。僕は····俺はこの男として過ごそう。