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退屈な少女と仮面を外さない騎士の幕間
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「あー、退屈だ」
じめっとした空気、そこは薄暗い聖堂だった。
燃える松明の灯りは、紅く薄らと聖堂の玉座に座る人物を映し出していた。その者は退屈そうに、肘をついて頬を支えて気怠そうに座っていた。
彼女はまさに「つまらなそう」に目を半分開けながらうつらうつら眠気を催していた。
「王国の連中も動きはねえし、帝国もダンマリしちゃってさぁ?もー暇だよね。寝るわ」
それを境に玉座からずるっと滑り落ちて少女は床で寝始めた。黒と赤で装飾された恐ろしくも美しいドレスは床の汚れが付着してしまうだろう。
しかし、彼女はそんなことは一切気にしない。
「そんなとこで寝るな」
聖堂の中央から冷めた声が響いた。
先程まで少女しかいなかった部屋の中央に全身を鎧で包んだ騎士が立っていた。
騎士は銀色の鎧を全身隙間なく身につけていて、中身の様子は一切伺えないだろう。
少女は気怠そうに顔だけ上げると半分目を開けて様子を確認する。
「ああ、お仕事ご苦労さん。部屋に入るときはノックをしろ」
「善処しよう」
「お前が善処した試しは存在しないんだが?」
あからさまにイライラしている感じで少女は言う。騎士は冷淡な態度を貫き通した。
諦めたかのように少女は大きく「はぁー」とため息をついて、服についたほこりを払い。立ち上がった。こほんと一つ息を払い、綺麗に魔法陣を編む。
土属性の物質を構成する魔法陣だ。数枚の書類を作成し、それを騎士の元へと飛ばした。
「次の仕事だ。主に直接仰せつかったものだが、少し面倒な事になりそうだ」
「……」
少女の言葉を横目に騎士は素早く書類に目を通す。大方の仕事の内容を理解できたようだった。
少女は薄暗い聖堂の教壇の上に立った。
「我らが『教団』の存在を示す時が来た。帝国は裏でおそらく動いている、王国は周囲の国々をまとめて教団と帝国を潰しにかかるだろう。だから、私たちが先に潰す」
「このような内容で本当に潰せるとでも?」
「主に異を唱えようってか?」
騎士が軽く投げた言葉に少女は殺気立たせ、両者の間に緊張が走った。
今にも殺しにかかりそうな少女は放つ気迫を騎士は何事もないかのようにスルーしている。
しばらく緊張が走ったが次第に少女が諦めをついて説明の続きを話し始めた。
「本当はここで殺すところだが、お前が必要だから大目にみてやる」
「感謝の至りです、司教様」
「1ミリも思ってない癖に。この作戦は成功するかしないかじゃない、主の仰せだということが大事なんだよ。完璧に遂行する」
少女の目は血走ったように、もしくはどこか憂いるように、また狂信といった様子だった。
騎士はそれを何とも言わぬ表情で見ていた。
「司教様、この作戦までの間に時間が少しありますね」
「それがどうした」
「魔法都市ホワイストに美味しいパンケーキ屋があるんですよ。そこに行きましょう」
「あ?」
冷めた騎士の突然な遊びのお誘いに、教祖である少女は非常に冷酷な声で応えた。
騎士の仮面の中は見えず、何を考えているのかは分からない。よく見かける姿は返り血に塗れており、今も返り血が残っている。
加えて冷めたトーンで言うものだから、何を言い出すのか司教には一切理解出来なかった。
———だが、一つだけ分かることはあった。
「デートに誘う時は鎧に付いた返り血ぐらい拭いでからやれ。あと気を遣ってもらわなくて結構。後で一人で行く」
「相変わらず釣れない」
そうとだけ言うと騎士はその場から背を向けて出口のドアへと歩き出す。
その途中で一度振り返り、司教に尋ねた。
「やっと邪教、及び教団の理念が果たされるというのに、何がそんなに退屈そうなのか」
司教は答えない。
黒と赤のドレスが薄暗い炎の灯りに照らされて、無言を貫き通す司教の様はヴァンパイアに似ているだろうか。
何百年もの間、棺に封印された悲しいヴァンパイアのように——…
「去れ」
「……合い分かりました」
それ以上騎士は考えないようにし、部屋を後にした。
残された聖堂には、誰もいない孤独な空間で一人佇む司教の姿があった。
じめっとした空気、そこは薄暗い聖堂だった。
燃える松明の灯りは、紅く薄らと聖堂の玉座に座る人物を映し出していた。その者は退屈そうに、肘をついて頬を支えて気怠そうに座っていた。
彼女はまさに「つまらなそう」に目を半分開けながらうつらうつら眠気を催していた。
「王国の連中も動きはねえし、帝国もダンマリしちゃってさぁ?もー暇だよね。寝るわ」
それを境に玉座からずるっと滑り落ちて少女は床で寝始めた。黒と赤で装飾された恐ろしくも美しいドレスは床の汚れが付着してしまうだろう。
しかし、彼女はそんなことは一切気にしない。
「そんなとこで寝るな」
聖堂の中央から冷めた声が響いた。
先程まで少女しかいなかった部屋の中央に全身を鎧で包んだ騎士が立っていた。
騎士は銀色の鎧を全身隙間なく身につけていて、中身の様子は一切伺えないだろう。
少女は気怠そうに顔だけ上げると半分目を開けて様子を確認する。
「ああ、お仕事ご苦労さん。部屋に入るときはノックをしろ」
「善処しよう」
「お前が善処した試しは存在しないんだが?」
あからさまにイライラしている感じで少女は言う。騎士は冷淡な態度を貫き通した。
諦めたかのように少女は大きく「はぁー」とため息をついて、服についたほこりを払い。立ち上がった。こほんと一つ息を払い、綺麗に魔法陣を編む。
土属性の物質を構成する魔法陣だ。数枚の書類を作成し、それを騎士の元へと飛ばした。
「次の仕事だ。主に直接仰せつかったものだが、少し面倒な事になりそうだ」
「……」
少女の言葉を横目に騎士は素早く書類に目を通す。大方の仕事の内容を理解できたようだった。
少女は薄暗い聖堂の教壇の上に立った。
「我らが『教団』の存在を示す時が来た。帝国は裏でおそらく動いている、王国は周囲の国々をまとめて教団と帝国を潰しにかかるだろう。だから、私たちが先に潰す」
「このような内容で本当に潰せるとでも?」
「主に異を唱えようってか?」
騎士が軽く投げた言葉に少女は殺気立たせ、両者の間に緊張が走った。
今にも殺しにかかりそうな少女は放つ気迫を騎士は何事もないかのようにスルーしている。
しばらく緊張が走ったが次第に少女が諦めをついて説明の続きを話し始めた。
「本当はここで殺すところだが、お前が必要だから大目にみてやる」
「感謝の至りです、司教様」
「1ミリも思ってない癖に。この作戦は成功するかしないかじゃない、主の仰せだということが大事なんだよ。完璧に遂行する」
少女の目は血走ったように、もしくはどこか憂いるように、また狂信といった様子だった。
騎士はそれを何とも言わぬ表情で見ていた。
「司教様、この作戦までの間に時間が少しありますね」
「それがどうした」
「魔法都市ホワイストに美味しいパンケーキ屋があるんですよ。そこに行きましょう」
「あ?」
冷めた騎士の突然な遊びのお誘いに、教祖である少女は非常に冷酷な声で応えた。
騎士の仮面の中は見えず、何を考えているのかは分からない。よく見かける姿は返り血に塗れており、今も返り血が残っている。
加えて冷めたトーンで言うものだから、何を言い出すのか司教には一切理解出来なかった。
———だが、一つだけ分かることはあった。
「デートに誘う時は鎧に付いた返り血ぐらい拭いでからやれ。あと気を遣ってもらわなくて結構。後で一人で行く」
「相変わらず釣れない」
そうとだけ言うと騎士はその場から背を向けて出口のドアへと歩き出す。
その途中で一度振り返り、司教に尋ねた。
「やっと邪教、及び教団の理念が果たされるというのに、何がそんなに退屈そうなのか」
司教は答えない。
黒と赤のドレスが薄暗い炎の灯りに照らされて、無言を貫き通す司教の様はヴァンパイアに似ているだろうか。
何百年もの間、棺に封印された悲しいヴァンパイアのように——…
「去れ」
「……合い分かりました」
それ以上騎士は考えないようにし、部屋を後にした。
残された聖堂には、誰もいない孤独な空間で一人佇む司教の姿があった。
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