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1-4 検証と結果
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イニーツの町を出て町沿いにぐるりと進むと、人気がなく、最強生物(ブルースライム)も周囲には見当たらない開けた場所で足を止める。
「ここなら誰からも見られないな」
メニュー画面からアイテム画面を開き、コネコさんから購入した『オリジナルアーツの巻物』にカーソルを合わせる。
オリジナルアーツの巻物:記録した動きをMPを消費して再現する。記録時間は5秒。(威力微上昇、速度微上昇、キャンセル不可)
説明文はコネコさんから聞いた情報と大差なく、そのまま「使用しますか?」というメッセージに「はい」のメッセージウインドウを押す。
周囲が淡い水色の光に包まれ、視界には大きく「READY」の文字が浮かんでいる。俺はボクシング漫画で読んだ知識を元に肘を畳んだ両手を顎に持っていき、左足を前に、右足を後ろにずらした。いわゆるオーソドックスと呼ばれるフォームだ。
淡い水色から青い光に変化し光が少し強くなるとすぐに「READY」から「GO」へと文字が変化した。
「フッ、フッ、ハッ、てりゃ!」
仮想最強生物(ブルースライム)相手にジャブ、ジャブ、右ストレートを繰り出し、最後は体重を乗せた右の回し蹴りを出す。
記録時間は2秒とちょっとだが、ここで記録を終了する。ちなみに終了するときは視界内にある「記録終了」メッセージウインドウに触れるか、「終了」を声に出すか、「終了」を強く意識する。もちろん前者ほど確実であり、後者は認識されないことがよくあるそうだ。メッセージウインドウに触れるのは、触れようとする動作も記録されてしまうため却下した。残りは声に出すか、強く意識するかだが、初めての記録なので意識して終了させる方法を選んでみたら問題なく記録の終了は完了した。
視界内に「リプレイを見ますか?」というメッセージウインドウが出ていたので、俺は自分の初記録を観賞する。
新たなウインドウが開き、ウインドウ内にで俺がオーソドックススタイルで待機している。画面内の文字が「READY」から「GO」に変わると、ウインドウ内の俺が動き出す。
ジャブと右ストレートはリプレイを見ても素人目には特に変なところは見当たらない。ボクシング漫画を読んだ後、漫画に触発されて姿見を見ながら蛍光灯の紐に向かってシャドーを繰り返した成果だった。恥ずかしくなんかはない。男子たるもの誰もがとおる道だと俺は思っている。
最後の右の回し蹴りは不恰好で明らかに軸足がふらついていた。
リプレイ画面が終わるとスキル画面が自動で開く。アクティブスキルに「オリジナルアーツ1」が記載されていた。カーソルを合わせると名前の変更ができるみたいなので「試作1号」に変えてみた。
ちなみにアクティブスキルの使い方はスキル名を声にだすとモーションアシストにより自動で体が動き出す。この動きに逆らうとスキル発動は失敗と判断されスキルが中断されるだけでなく、技後硬直が通常スキルより長くとられてしまう。
つまりスキルを失敗せずに発動できるようになると脱初心者扱いされるらしい。ごく少数ではあるがスキル名を口に出さずにアクティブスキルを発動させる人たちもいるらしく、掲示板ではスキル名を口に出す方法を口頭制御、強く意識することでスキルを発動させる方法を思考制御と呼んでいるそうだ。もちろん思考制御が出来る人はほとんどいない……はずだったんだが。
「え~っ、と『試作1号』!」
スキル名を声に出すとモーションアシストが働き、体が勝手にオーソドックススタイルをとる。すぐにジャブが2発繰り出され、右ストレートへ繋がる。青いエフェクトが残像となり、ただのジャブとストレートが非常にかっこよく見えた。しかし、最後の回し蹴りを出そうとしたときに急にエフェクトが消えて、モーションアシストが無くなる。
「へっ?うわ?!」
中途半端に上がった足のせいで重心がずれており、軸足だけでは支えきれずに転倒した。
「……びっくりした~。これがスキル失敗か~」
俺はリプレイ動画を思い出す。おそらくだが回し蹴りの際に軸足がふらついていたことまで動作に記録され、そのふらつきについていけなかったことがスキルの失敗につながったのだろう。
試しにもう一回やってみたが、やっぱり回し蹴りの箇所でスキルを失敗してします。
「体に染み付いた動き以外を記録するとスキル失敗の元になる、か~。よっし、もう一回記録をしてみよう」
先ほどの失敗を教訓に、今度の記録は右ストレートの時点で記録を終了させた。記録時間はおよそ1秒。スキル名を「試作2号」とし、リプレイ画面を見て再チャレンジ。
「シッーーー」
今度のスキルは失敗せずに最後まで発動した。ようやく成功した、と思い自分のMPポイントのバーを見ると3割ほど無くなっており、数字も21/30となっている。
試しに試作2号をもう一度使用すると18/30になり、今度は試作1号を使用してMPを確認すると15/30になっていた。
「オリジナルアーツのMP消費量は記録時間に関係しないのか」
試作1号の2秒ちょっと(最後までいかずスキルは失敗しているが)と試作1号の1秒、どちらを使用してもMPを3消費している。
「しかもこれ、固定じゃなくて消費量は最大MPの1割なんだろうな……」
コネコさんに聞いた話では、オリジナルアーツはバカスカMPを消費するといっていた。低レベル帯ではMPの消費が3というのは通常のスキルとほとんど変わらないが、レベルが上がるにつれてその差はどんどん開いていく。これだけだけでも不人気スキルである理由は十分にあるだろう。
「よし、今度は実践だ」
次はオリジナルアーツの威力を確かめに最強生物(ブルースライム)ではなくいったんイニーツの町に戻り、中央広場にある冒険者ギルドの建物に入る。
中に入ると女性のNPCキャラが受付をしており、冒険者っぽい服をきたNPCたちが壁に張られたクエスト用紙を確認したり、3人組らしいパーティが打ち合わせをしている。
俺は周囲を一瞥したあと、受付の女性NPCに声をかけた。
「練習場を借りたいんですけれど、大丈夫ですか?」
「はい、問題ありません。希望される武器はありますか?」
「いえ、結構です」
練習場の使用の許可を得ると入り口とは反対側の扉から外に出ると、周囲を柵に囲まれた30メートル四方の広場があり、あちこちに案山子が突っ立っている。
この案山子はチュートリアルのクエストでも使用されており、攻撃動作の確認やスキル、魔法の的として絶対に壊れない頼もしい存在なのだ。
近くにある案山子に近寄り、最初はオリジナルアーツではなく、ただのジャブとストレートをしてみる。
結果はジャブ、ストレートともにダメージ表示は0。
この結果は本気でショックを受けた。最低でもダメージ1は出ると期待していたのだか、結果は無常にもダメージ0。ブルースライムだけではなく、案山子にもダメージを与えれないとは……。
気持ちを切り替えて次はオリジナルアーツを試してみる。『試作2号」と口に出すと案山子に向かってジャブを2回とストレートを放つ。ダメージ表示ジャブ0、ジャブ0、右ストレート1だった。
「や、やった!ついにダメージがでたぞーーー!」
嬉しさのあまり気持ちが声に出てしまい、少し離れたところで弓の練習をしていたエルフの男性プレイヤーがぎょっとこちらを見ていた。
俺はエルフの人に会釈で謝罪して、もう一度『試作2号』を試してみる。
今度の結果もさっきと一緒で、ジャブはダメージ0、ストレートがダメージ1となった。
「これがオリジナルアーツの威力微上昇か……」
さっきは初めてのダメージに舞い上がったりしたが、よく考えてみたら魔法職の杖で殴っても1以上のダメージはでるんじゃないだろうか?
それに比べて俺の場合はMPを1割消費するスキルを使用してようやくダメージ1。後衛職の物理攻撃より弱いスキルとか思うと泣きたくなる。
「亡者の拳でもダメージを出せることはわかったけど……、さて、とうやってレベルをあげたものか」
通常のRPGであればゴブリンや動物MOBを叩いてレベルを上げるのだが、イニーツの町の周辺にはブルースライムしかいない。また、ブルースライムには物理攻撃に対しての抵抗があるので案山子相手に1しか出せない「試作2号」では全MPを消費しても倒すことはできないだろう。
また、ゲネシスではクエストのクリアに対して経験値報酬はなく、アイテムや情報、クエスト関連者の高感度上昇が主なクエスト報酬となっている。このシステムのせいで『いって来い』クエストや『お使い』クエストをしても俺のレベルは1のままなのである。
「でも、今のままじゃ手詰まりだし。手当たり次第にやってみますか」
ということで、俺はクエストを求めてまたしても中央広場に戻るのである。
「疲れた~。もう歩きたくね~」
中央広場にある芝生の上で大の字になって愚痴をこぼす。
あれから約2時間。戦闘系と生産系以外のクエストを二桁ほどこなし、イニーツの町を東奔西走しまくった。
最後のほうにはかくれんぼをしている少年を捜しに屋根の上まで登って探し当てた。通常のRPGでは上空からの第三者視点がほとんどのため、VRMMORPGの一人称視点では目に見えない所は全て死角となり、また、屋根の上という全く意識していない場所のため、探し当てるのに非常に苦労した。
また、クエストをクリアしても報酬は500ゼニと生産用アイテムの素材と調理アイテムの水、それ以外は全て高感度の上昇が報酬だった。
「結構時間が経ったな。いったん抜けて飯にするか」
リアルの時間ではもうすぐ13時。少し遅めの昼食のため、メニュー画面からログアウトを選択すると、1秒ほどでイニーツの町からゲネシスのタイトル画面に戻り、そのままゲーム終了を選択した。
「さてさて、掲示板のほうは盛り上がっていますかね~」
遅めの昼食を済ませ、ゲネシスの公式HPにある掲示板を確認する。本格的なサービス開始は実は1週間ほど前であり、掲示板の情報は先駆者による値千金の情報なのである。もちろん、ネタ情報やわざち嘘の情報を流す人たちもいるので真偽は自分で確認する必要があるのだが。
ゲネシス公式掲示板ー雑談その4-
1:スレ立てました<^^>
2:乙です。
3:ありがとう~
4:最近イニーツの混雑も大分マシになってきたね
5:ま~一週間も経つとね~
6:次のウムラトの町にいってる人も多いみたいっす。
7:はやいな……
8:俺もまだレベルが足りない
9:私はもう少ししたらウムラトに移る予定!
10:オメ
11:9→くそ~、おめでとうだ、コンチクショーーー
12:10,11→あざ~す!
13:ちなみにウムラトの適正レベルっていくつなの?ちなみに俺は8
14:大体10~12ぐらいじゃない?
15:たしかに。でも魔法職なら10以下でもいけるかも。
16:ブルスラの物理殺しキツイっす。
17:同感!
18:同感!!
19:運営は何を考えてあんなモンスターをばら撒いた?!
20:最初の町周辺にいる強さじゃない(笑)。あれの上位種がでると思うと発狂
21:やめろ!フラグをたてるな!
22:なるほど。20の死因はスライム上位種による溶解死、と。
23:南無……
24:メディーーーック!20の死亡フラグをブチ折ってーーー!
25:そういえばさっきブルスラに素手で挑戦している人を見かけた。
26:素手?
27:素手ってスキルない……よね?
28:うん。スキル『遠目』のレベル上げしてたら、いい尻のヒューマン(男)を見かけたから監視してたんだけど……
29:ヤバイ、早すぎたんだ!腐っているぞ!
30:『遠目』スキルで視姦プレイ!ナイスコンボ!
31:メディーーーック!素手の人(の尻)を癒してあげてーーー!
32:待て!28が男か女で変わってくるぞ!
33:確かに!
34:なるほど!
35:あ、ちなみに女です。腐っています(笑)
36:腐ってたーーー!
37:男と女であれば問題ない……か?
38:いいから、続きはよ
39:脱線しました。ゴメ。素手でブルスラを殴ったり蹴ったりしてたけど、結局ダメージ入らなくて帰っちゃった。殴った拍子にブルスラに埋まる体が粘液プレイで最高にご馳走様でした(^^)
40:もう何から突っ込んでいいやら
41:物理殺しに素手はムリぽ
42:アプデで素手スキル希望
43:いつになることやら
以下のコメントは管理者の承認待ちです。
「ここなら誰からも見られないな」
メニュー画面からアイテム画面を開き、コネコさんから購入した『オリジナルアーツの巻物』にカーソルを合わせる。
オリジナルアーツの巻物:記録した動きをMPを消費して再現する。記録時間は5秒。(威力微上昇、速度微上昇、キャンセル不可)
説明文はコネコさんから聞いた情報と大差なく、そのまま「使用しますか?」というメッセージに「はい」のメッセージウインドウを押す。
周囲が淡い水色の光に包まれ、視界には大きく「READY」の文字が浮かんでいる。俺はボクシング漫画で読んだ知識を元に肘を畳んだ両手を顎に持っていき、左足を前に、右足を後ろにずらした。いわゆるオーソドックスと呼ばれるフォームだ。
淡い水色から青い光に変化し光が少し強くなるとすぐに「READY」から「GO」へと文字が変化した。
「フッ、フッ、ハッ、てりゃ!」
仮想最強生物(ブルースライム)相手にジャブ、ジャブ、右ストレートを繰り出し、最後は体重を乗せた右の回し蹴りを出す。
記録時間は2秒とちょっとだが、ここで記録を終了する。ちなみに終了するときは視界内にある「記録終了」メッセージウインドウに触れるか、「終了」を声に出すか、「終了」を強く意識する。もちろん前者ほど確実であり、後者は認識されないことがよくあるそうだ。メッセージウインドウに触れるのは、触れようとする動作も記録されてしまうため却下した。残りは声に出すか、強く意識するかだが、初めての記録なので意識して終了させる方法を選んでみたら問題なく記録の終了は完了した。
視界内に「リプレイを見ますか?」というメッセージウインドウが出ていたので、俺は自分の初記録を観賞する。
新たなウインドウが開き、ウインドウ内にで俺がオーソドックススタイルで待機している。画面内の文字が「READY」から「GO」に変わると、ウインドウ内の俺が動き出す。
ジャブと右ストレートはリプレイを見ても素人目には特に変なところは見当たらない。ボクシング漫画を読んだ後、漫画に触発されて姿見を見ながら蛍光灯の紐に向かってシャドーを繰り返した成果だった。恥ずかしくなんかはない。男子たるもの誰もがとおる道だと俺は思っている。
最後の右の回し蹴りは不恰好で明らかに軸足がふらついていた。
リプレイ画面が終わるとスキル画面が自動で開く。アクティブスキルに「オリジナルアーツ1」が記載されていた。カーソルを合わせると名前の変更ができるみたいなので「試作1号」に変えてみた。
ちなみにアクティブスキルの使い方はスキル名を声にだすとモーションアシストにより自動で体が動き出す。この動きに逆らうとスキル発動は失敗と判断されスキルが中断されるだけでなく、技後硬直が通常スキルより長くとられてしまう。
つまりスキルを失敗せずに発動できるようになると脱初心者扱いされるらしい。ごく少数ではあるがスキル名を口に出さずにアクティブスキルを発動させる人たちもいるらしく、掲示板ではスキル名を口に出す方法を口頭制御、強く意識することでスキルを発動させる方法を思考制御と呼んでいるそうだ。もちろん思考制御が出来る人はほとんどいない……はずだったんだが。
「え~っ、と『試作1号』!」
スキル名を声に出すとモーションアシストが働き、体が勝手にオーソドックススタイルをとる。すぐにジャブが2発繰り出され、右ストレートへ繋がる。青いエフェクトが残像となり、ただのジャブとストレートが非常にかっこよく見えた。しかし、最後の回し蹴りを出そうとしたときに急にエフェクトが消えて、モーションアシストが無くなる。
「へっ?うわ?!」
中途半端に上がった足のせいで重心がずれており、軸足だけでは支えきれずに転倒した。
「……びっくりした~。これがスキル失敗か~」
俺はリプレイ動画を思い出す。おそらくだが回し蹴りの際に軸足がふらついていたことまで動作に記録され、そのふらつきについていけなかったことがスキルの失敗につながったのだろう。
試しにもう一回やってみたが、やっぱり回し蹴りの箇所でスキルを失敗してします。
「体に染み付いた動き以外を記録するとスキル失敗の元になる、か~。よっし、もう一回記録をしてみよう」
先ほどの失敗を教訓に、今度の記録は右ストレートの時点で記録を終了させた。記録時間はおよそ1秒。スキル名を「試作2号」とし、リプレイ画面を見て再チャレンジ。
「シッーーー」
今度のスキルは失敗せずに最後まで発動した。ようやく成功した、と思い自分のMPポイントのバーを見ると3割ほど無くなっており、数字も21/30となっている。
試しに試作2号をもう一度使用すると18/30になり、今度は試作1号を使用してMPを確認すると15/30になっていた。
「オリジナルアーツのMP消費量は記録時間に関係しないのか」
試作1号の2秒ちょっと(最後までいかずスキルは失敗しているが)と試作1号の1秒、どちらを使用してもMPを3消費している。
「しかもこれ、固定じゃなくて消費量は最大MPの1割なんだろうな……」
コネコさんに聞いた話では、オリジナルアーツはバカスカMPを消費するといっていた。低レベル帯ではMPの消費が3というのは通常のスキルとほとんど変わらないが、レベルが上がるにつれてその差はどんどん開いていく。これだけだけでも不人気スキルである理由は十分にあるだろう。
「よし、今度は実践だ」
次はオリジナルアーツの威力を確かめに最強生物(ブルースライム)ではなくいったんイニーツの町に戻り、中央広場にある冒険者ギルドの建物に入る。
中に入ると女性のNPCキャラが受付をしており、冒険者っぽい服をきたNPCたちが壁に張られたクエスト用紙を確認したり、3人組らしいパーティが打ち合わせをしている。
俺は周囲を一瞥したあと、受付の女性NPCに声をかけた。
「練習場を借りたいんですけれど、大丈夫ですか?」
「はい、問題ありません。希望される武器はありますか?」
「いえ、結構です」
練習場の使用の許可を得ると入り口とは反対側の扉から外に出ると、周囲を柵に囲まれた30メートル四方の広場があり、あちこちに案山子が突っ立っている。
この案山子はチュートリアルのクエストでも使用されており、攻撃動作の確認やスキル、魔法の的として絶対に壊れない頼もしい存在なのだ。
近くにある案山子に近寄り、最初はオリジナルアーツではなく、ただのジャブとストレートをしてみる。
結果はジャブ、ストレートともにダメージ表示は0。
この結果は本気でショックを受けた。最低でもダメージ1は出ると期待していたのだか、結果は無常にもダメージ0。ブルースライムだけではなく、案山子にもダメージを与えれないとは……。
気持ちを切り替えて次はオリジナルアーツを試してみる。『試作2号」と口に出すと案山子に向かってジャブを2回とストレートを放つ。ダメージ表示ジャブ0、ジャブ0、右ストレート1だった。
「や、やった!ついにダメージがでたぞーーー!」
嬉しさのあまり気持ちが声に出てしまい、少し離れたところで弓の練習をしていたエルフの男性プレイヤーがぎょっとこちらを見ていた。
俺はエルフの人に会釈で謝罪して、もう一度『試作2号』を試してみる。
今度の結果もさっきと一緒で、ジャブはダメージ0、ストレートがダメージ1となった。
「これがオリジナルアーツの威力微上昇か……」
さっきは初めてのダメージに舞い上がったりしたが、よく考えてみたら魔法職の杖で殴っても1以上のダメージはでるんじゃないだろうか?
それに比べて俺の場合はMPを1割消費するスキルを使用してようやくダメージ1。後衛職の物理攻撃より弱いスキルとか思うと泣きたくなる。
「亡者の拳でもダメージを出せることはわかったけど……、さて、とうやってレベルをあげたものか」
通常のRPGであればゴブリンや動物MOBを叩いてレベルを上げるのだが、イニーツの町の周辺にはブルースライムしかいない。また、ブルースライムには物理攻撃に対しての抵抗があるので案山子相手に1しか出せない「試作2号」では全MPを消費しても倒すことはできないだろう。
また、ゲネシスではクエストのクリアに対して経験値報酬はなく、アイテムや情報、クエスト関連者の高感度上昇が主なクエスト報酬となっている。このシステムのせいで『いって来い』クエストや『お使い』クエストをしても俺のレベルは1のままなのである。
「でも、今のままじゃ手詰まりだし。手当たり次第にやってみますか」
ということで、俺はクエストを求めてまたしても中央広場に戻るのである。
「疲れた~。もう歩きたくね~」
中央広場にある芝生の上で大の字になって愚痴をこぼす。
あれから約2時間。戦闘系と生産系以外のクエストを二桁ほどこなし、イニーツの町を東奔西走しまくった。
最後のほうにはかくれんぼをしている少年を捜しに屋根の上まで登って探し当てた。通常のRPGでは上空からの第三者視点がほとんどのため、VRMMORPGの一人称視点では目に見えない所は全て死角となり、また、屋根の上という全く意識していない場所のため、探し当てるのに非常に苦労した。
また、クエストをクリアしても報酬は500ゼニと生産用アイテムの素材と調理アイテムの水、それ以外は全て高感度の上昇が報酬だった。
「結構時間が経ったな。いったん抜けて飯にするか」
リアルの時間ではもうすぐ13時。少し遅めの昼食のため、メニュー画面からログアウトを選択すると、1秒ほどでイニーツの町からゲネシスのタイトル画面に戻り、そのままゲーム終了を選択した。
「さてさて、掲示板のほうは盛り上がっていますかね~」
遅めの昼食を済ませ、ゲネシスの公式HPにある掲示板を確認する。本格的なサービス開始は実は1週間ほど前であり、掲示板の情報は先駆者による値千金の情報なのである。もちろん、ネタ情報やわざち嘘の情報を流す人たちもいるので真偽は自分で確認する必要があるのだが。
ゲネシス公式掲示板ー雑談その4-
1:スレ立てました<^^>
2:乙です。
3:ありがとう~
4:最近イニーツの混雑も大分マシになってきたね
5:ま~一週間も経つとね~
6:次のウムラトの町にいってる人も多いみたいっす。
7:はやいな……
8:俺もまだレベルが足りない
9:私はもう少ししたらウムラトに移る予定!
10:オメ
11:9→くそ~、おめでとうだ、コンチクショーーー
12:10,11→あざ~す!
13:ちなみにウムラトの適正レベルっていくつなの?ちなみに俺は8
14:大体10~12ぐらいじゃない?
15:たしかに。でも魔法職なら10以下でもいけるかも。
16:ブルスラの物理殺しキツイっす。
17:同感!
18:同感!!
19:運営は何を考えてあんなモンスターをばら撒いた?!
20:最初の町周辺にいる強さじゃない(笑)。あれの上位種がでると思うと発狂
21:やめろ!フラグをたてるな!
22:なるほど。20の死因はスライム上位種による溶解死、と。
23:南無……
24:メディーーーック!20の死亡フラグをブチ折ってーーー!
25:そういえばさっきブルスラに素手で挑戦している人を見かけた。
26:素手?
27:素手ってスキルない……よね?
28:うん。スキル『遠目』のレベル上げしてたら、いい尻のヒューマン(男)を見かけたから監視してたんだけど……
29:ヤバイ、早すぎたんだ!腐っているぞ!
30:『遠目』スキルで視姦プレイ!ナイスコンボ!
31:メディーーーック!素手の人(の尻)を癒してあげてーーー!
32:待て!28が男か女で変わってくるぞ!
33:確かに!
34:なるほど!
35:あ、ちなみに女です。腐っています(笑)
36:腐ってたーーー!
37:男と女であれば問題ない……か?
38:いいから、続きはよ
39:脱線しました。ゴメ。素手でブルスラを殴ったり蹴ったりしてたけど、結局ダメージ入らなくて帰っちゃった。殴った拍子にブルスラに埋まる体が粘液プレイで最高にご馳走様でした(^^)
40:もう何から突っ込んでいいやら
41:物理殺しに素手はムリぽ
42:アプデで素手スキル希望
43:いつになることやら
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